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第45話:再び隆中へ、太陽の揺るがぬ願い

第45話:再び隆中へ、太陽の揺るがぬ願い

太陽は、岩牙に「必ず孔明殿を迎え、皆と共に新たな時代を、そして益州の民に光をもたらす」と固く約束し、数名の、武勇に優れ、かつ絶対的な信頼を置ける供(その中には、中原の地理に詳しい渡来人の案内役も含まれていた)だけを連れ、諸葛亮孔明が隠棲する荊州の隆中を目指して、南海の島から再び遥かなる、そして未知に満ちた旅に出発した。以前の旅路でその険しさと危険は経験済みだったが、彼の決意は揺るがなかった。

まず、海路で大陸沿岸部へ渡る必要があったが、当時の航海技術は未熟であり、巨大な嵐や、神出鬼没で残忍な海賊の脅威が常に付きまとった。太陽は、自身が建造を指揮し、改良を重ねた、南海の堅木と中原の先進技術を融合させた比較的大型の帆船(それは、複数のマストと、風を効率的に受けるための工夫が凝らされた帆を備え、船底には安定性を増すためのバラストも積まれていた)に乗り込み、経験豊富な船乗りたちの卓越した技術と、自らの幸運を信じながら、幾度も荒波と暴風雨を乗り越えていく。航海の途中、巨大な嵐に見舞われ、船は木の葉のように翻弄され、マストが折れるなどの危機もあったが、太陽の冷静な指示と乗組員たちの奮闘で辛くも乗り切った。彼は、前世で学んだ気象学の初歩的な知識や、星の位置から方角を知る天文航法の知識も、わずかながらに役立てようと試みた。

大陸に上陸してからも、道は決して平坦ではなかった。中原の長引く戦乱の影響で、地方の治安は極度に悪化し、山道には凶悪な山賊が、街道筋には落ち武者や食い詰めたならず者たちが跋扈し、旅人を襲う事件が後を絶たなかった。また、太陽たちの異国風の出で立ちや、彼らが携える僅かな交易品(旅の資金とするためのもの。南海産の珍しい香辛料や貝細工など)は、各地で人々の奇異の目を集め、時には無用なトラブルや、悪意ある役人の不当な要求に巻きまれそうになることもあった。太陽は、可能な限り争いを避け、対話で解決しようと努めたが、時には供の者たちの武勇に頼らざるを得ない場面もあった。

しかし、太陽は決して弱音を吐かず、むしろ疲弊し、時には絶望しかける供の者たちを、その持ち前の明るさと温かい言葉で励ましながら、ひたすら目的地を目指して旅を続けた。彼は、旅の途中で出会う、戦火で家を焼かれ、家族を失い、飢えと絶望の中でかろうじて息をしている貧しい農民や、行き場を失った幼い難民たちの姿を目の当たりにし、中原の民の想像を絶する苦しみと悲しみを、その肌で痛いほどに感じ、涙した。彼は、持っていた食料や薬を惜しみなく分け与え、彼らの話に耳を傾けた。その経験は、彼の「民を救いたい」という想いをより一層強く、そして切実なものにし、諸葛亮という稀代の賢人を何としても迎え入れ、この乱世に終止符を打たねばならないという決意を、改めて彼の心に深く、そして熱く刻み付けた。

「凛も、こんな世界で戦っているのだろうか…」その想いが、彼の足を前に進ませた。

数ヶ月に及ぶ、筆舌に尽くしがたいほどの苦難と、時には命の危険にすら晒される旅の末、太陽一行は、心身ともに疲労困憊しながらも、ついに再び荊州の襄陽近郊、隆中の地にたどり着いた。鬱蒼とした森を抜け、小高い丘の上に立つ、あの質素ながらも清らかな空気に包まれた一軒の庵が再び目に入った時、太陽の胸は以前にも増して強い期待と、今度こそという切実な願いで激しく高鳴った。この庵の中に、伝説の「臥龍」はいる。そして、彼は自分の真摯な申し出を、今度こそ受け入れてくれるだろうか。

太陽は、深呼吸を一つし、旅の汚れを軽く払い、供の者たちを麓に残し、今度は一人で、静かに、しかし確かな足取りで庵の門へと再び歩み寄った。その一歩が、彼の、そしてこの世界の運命を、さらに大きく、そして劇的に変えることになるという、強い、そして厳粛な予感を胸に秘めて。彼の背中には、南海の仲間たちの、そして苦しむ益州の民の、そして何よりも愛する凛への想いが、重く、しかし温かくのしかかっていた。

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