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第43話:益州の嘆き、太陽の決意と民衆救済への使命感

第43話:益州の嘆き、太陽の決意と民衆救済への使命感

渡来人たちの中でも、特に太陽の心を強く、そして深く動かしたのは、益州から戦火と圧政を逃れて、命からがら南海の地にたどり着いたという一人の高潔な老いた儒学者とその数人の弟子たちだった。その儒学者は、名を黄権こうけんと言い、かつて益州牧・劉焉りゅうえんに仕え、その後劉璋の代になっても益州の行く末を案じていた人物だった。彼は、太陽の前に進み出ると、涙ながらに益州牧・劉璋の暗愚さと、彼を取り巻く張任ちょうじんら一部の忠臣を除く側近たちの腐敗、そして罪なき民衆が法外な重税と際限のない労役に喘ぎ、まさに塗炭の苦しみを味わっているという、聞くに忍びない惨状を、悲痛な面持ちで、そして時には怒りを込めて訴えた。

「太陽王様、益州は本来『天府の国』と呼ばれるほど肥沃で、万物を育む豊かな土地にございます。しかし、その豊かさは民には全く届かず、悪政と搾取によって人心はすっかり離れ、領内各地で不満が鬱積し、大規模な内乱の危機すら囁かれる、まさに滅亡寸前の有様にございます。民は明日の食料にも事欠き、子供たちは栄養失調で痩せ衰え、道端には餓死者が転がっているという、地獄のような有様です。劉璋様は、耳の痛い諫言には耳を貸さず、甘言を弄する者ばかりを重用し、益州の未来は風前の灯火にございます。どうか、王様のその太陽のような仁徳と、そのお力をもって、益州の百万の民の苦しみをお救いくだされませ! 我々はこのために、王の噂を頼りに、この遠い南海まで参ったのでございます!」

儒学者の魂からの叫びにも似た、切実な訴えは、太陽の心に深く、そして重く突き刺さった。彼は、これまで南海の平和と繁栄に力を注いできたが、遠い中原の地とはいえ、これほどまでに苦しむ民衆の存在を知ってしまった以上、それを見過ごすことは、彼の良心が、そして彼の魂が許さなかった。そして、もし益州を現在の圧政から解放し、そこに自分の理想とする、民が真に主役となる統治を敷くことができれば、それは中原への大きな、そして確実な足掛かりとなり、愛する凛(雪華)との再会への道も、具体的に開けるかもしれないという、明確な希望が彼の胸に力強く芽生え始めていた。

しかし、益州は広大で、四方を険しい、万夫不当の山々に囲まれた天然の要害であり、その攻略は決して容易ではない。現在の「太陽の連合」の軍事力だけでは、遠征は困難を極め、多くの尊い犠牲を伴うだろう。太陽は、岩牙や連合の各部族の長老たち、そして中原からの渡来人の代表者たちを集め、益州への介入の是非と、その具体的な方法について、数日間にわたり慎重に、そして真剣に議論を重ねた。

岩牙は、主君である太陽の身を深く案じ、また連合の兵力と資源の限界を指摘し、無謀とも思える遠征には当初、強く反対の立場を示した。「王よ、益州はあまりに遠く、そしてその守りは固いと聞きます。我らの兵力で、果たして…」

しかし、太陽の民を救いたいという揺るぎない、そして高潔な意志と、凛への変わらぬ深い想いを改めて知り、最終的には彼の決断を全面的に支持し、自らが先鋒となって道を切り開くことを、涙ながらに約束した。「王の決意、この岩牙、しかと受け止めました。我が命に代えても、王の道を切り開いてみせます。そして、必ずや凛様との再会を…」と、岩牙は力強く応えた。

太陽は、益州への進出を決意する。それは、単なる領土拡大の野心からではなく、苦しむ民を救済し、そして何よりも愛する人と再会し、二人で夢見た「誰もが笑って暮らせる優しい世界」を実現するための、彼の魂からの叫びにも似た、重く、そして崇高な決断だった。その決意は、彼の瞳に、決戦を前にした獅子のような強い光を宿らせた。

そして、この困難な目標を達成するためには、あの隆中の賢人、諸葛亮孔明の知恵と力が不可欠であると、太陽は改めて痛感していた。以前の訪問でその非凡な才に触れ、いつか必ず自らの理想の実現に力を貸してほしいと願っていた人物。今こそ、彼を正式に軍師として迎え、この大事業を共に成し遂げる時だと、太陽は固く決意した。彼は、諸葛亮の語った「天下三分の計」の原型のような話を思い出し、益州の重要性を再認識していた。

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