第25話:太陽王、誕生の刻、南海に輝く新たな希望
第25話:太陽王、誕生の刻、南海に輝く新たな希望
大地から全ての潤いを奪い去り、生きとし生けるものを絶望の淵に突き落とした灼熱の干ばつ。そして、その傷跡も癒えぬうちに襲いかかり、目に見えぬ恐怖で人々の命を静かに、しかし確実に蝕んでいった暗黒の疫病。この、部族の存亡そのものを、まるで崖っぷちまで揺るがすほどの、二つの、あまりにも大きな、そして言葉では言い尽くせぬほど絶望的な試練を、太陽は、その、常人には思いもよらない異邦の知恵――それは、前世で得た科学的知識と、この世界の自然に対する深い観察眼の融合であった――と、どんな困難にも決して屈することのない、鋼のような不屈の勇気、そして何よりも、苦しむ民を我が事のように思い、その痛みに寄り添う深い、深い慈愛の心で、奇跡的に、そして劇的に乗り越え、部族を、まさに壊滅の淵から救い出した。
その存在は、もはやこの南海の小さな部族にとって、なくてはならない、漆黒の闇夜を皓々(こうこう)と照らし、進むべき確かな道を示す太陽のような、絶対的で、そして希望そのものと言える、神聖でさえある存在となっていた。彼の名前は、もはや単なる個人の呼び名ではなく、民の心の中で、救済と未来の輝かしい象徴として、熱く、そして力強く輝いていた。人々は、彼の姿を見るだけで、不思議と心が安らぎ、明日への活力が湧いてくるのを感じていた。彼が通りかかると、人々は自然と道を開け、感謝の言葉と共に深々と頭を下げた。
対照的に、これまで長年にわたり部族の頂点に君臨し、絶対的な権力と、時には傲慢とも言えるほどの権威を誇ってきた現族長と, 彼を盲目的に取り巻き、旧態依然とした、もはや何の役にも立たない古い慣習に頑なに固執し続けてきた保守的な長老たちは、これらの、部族始まって以来の未曾有の危機に対し、具体的な、そして有効な手立てを、悲しいほどに何一つ打つことができず、ただ右往左往し、空しい神への祈りを繰り返すばかりで、その権威と、民からの求心力は、まるで砂の城が嵐に打ち砕かれるように、完全に、そして決定的に失墜していた。彼らの言葉は、もはや誰の心にも響かなかった。民衆の彼らを見る目は、憐れみと、そして失望の色を隠せないものとなっていた。
民衆の間からは、もはや以前のような遠慮や忖度をすることなく、公然と、そして誰憚ることなく、太陽を新たな、そして真の指導者として部族の族長に推す声が、まるで地底から湧き上がるマグマのように、日増しに、そして抑えきれないほどの熱意をもって上がり始めていた。
「太陽様こそ、我らが長にふさわしい! 彼だけが、我らを導ける!」
「古いやり方ではもうだめだ! 太陽様の新しい知恵こそが、我らの希望だ!」
そんな声が、集落のあちこちで囁かれ、やがて大きなうねりとなっていった。特に、太陽の、その損得を顧みない献身的な行動力と、どこまでも高潔で、そして全ての命を慈しむ、まるで理想郷から来たかのようなその姿に、心の底から心酔する岩牙をはじめとする、未来を担う若い世代の戦士たちは、何度も、何度も太陽のもとを訪れ、彼に、この混迷し、先の見えない部族の未来を託すべく、族長への就任を、強く、そして時には、その大きな瞳に熱い涙を浮かべながら、燃えるような熱烈さをもって迫った。
「タイヤン様、どうか、我らの、そしてこの愛すべき島の未来のために、我らの長となってください! あなた様しか、我らを、この沈みかけた部族を救い、新たな時代へと導いてくださる方はおりません! 我々も、あなた様と共にあらば、どんな困難も乗り越えられます!」
彼らの、切実な、そして一点の曇りもない瞳には、太陽への、絶対的で、そして揺るぎない信頼の光が宿っていた。
太陽は、元来、そのような権力や、人の上に立つ地位というものに、一片の野心があったわけではなかった。彼の心は、常に純粋で、そして私欲とは無縁だった。彼はただ、目の前で苦しみ、助けを求めている人々を、自分の持つ、今はまだわずかな知識と力で、一人でも多く助けたい、そして、いつか必ず、あの遠い、遠い故郷で自分を待っているであろう、愛する凛と再会し、二人で、あの日の、星空の下で交わした約束であった、誰もが心からの笑顔で、何の不安もなく安心して暮らせる、真に平和な、そして優しい世界を作りたいと、ただひたすらに、そして心の底から願っていただけだった。
しかし、このまま、旧弊に囚われ、もはや何の有効な手も打てない指導者たちに、この愛すべき部族の運命を委ねていては、いずれ必ず、内部からの不和や対立、あるいは、常に虎視眈々(こしたんたん)と機会を窺っている外部からの、より強大な力を持つ好戦的な部族からの容赦ない侵略によって、この部族は徐々に衰退し、そしていずれは、まるで小魚が大魚に飲み込まれるように、無残にも歴史の闇に飲み込まれてしまうかもしれないという、強い、そして無視することのできない危機感。そして何よりも、この南海の、美しい島で出会い、共に数々の苦難を乗り越え、もはや血の繋がった家族同然となった、かけがえのない、愛すべき大切な人々を、自分のこの手で守りたい、彼らと共に、この美しい島で、平和で、そして実り豊かな、希望に満ちた未来を築き上げたいという、彼の心の奥底から、まるでマグマのように熱く、そして激しく湧き上がってくる、抑えきれないほどの強い、強い想いが、ついに彼を、その重すぎる、しかし避けては通れない運命の舞台へと突き動かした。
彼は、凛との再会という、決して諦めることのできない個人的な願いを果たすためにも、まずこの地で、確固たる、そして揺るぎない基盤を築き、守るべき人々を守れる力を手に入れなければならないのだと、静かに、しかし深く悟ったのだ。そして、マノのような悲劇を二度と繰り返さないためにも。
部族の、全ての民が集う、まさに運命を決定づける集会が、その夜、南の空に大きく、そして優しく輝く満月が、まるで神々の祝福のように清らかな、そしてどこか運命的な、神秘的な銀色の光を、惜しみなく地上に降り注ぐ、聖なる大樹の下の、掃き清められた広場で、厳粛な、そしてどこか張り詰めた、しかし確かな期待に満ちた雰囲気の中で開かれた。広場には、これまでにないほど多くの人々が集まり、静かにその時を待っていた。
集まった民衆の、もはや誰にも抑えることのできない、そして一点の曇りもない総意として、太陽が、この部族の新たな、そして真の族長に選出されることが、年長者たちによる、もはや形式的とさえ言える短い議論の後、一人の反対もなく、満場一致で、そして大地を揺るがすほどの熱狂的な、割れんばかりの歓声と、鳴り止むことのない祝福の拍手と共に、高らかに決定された。その声は、これまでの、長く続いた絶望と不安を、一瞬にして吹き飛ばすかのような、力強く、そして希望に満ちた響きを持っていた。
老いた現族長もまた、自らの力の限界と、新しい時代の、もはや押しとどめることのできない大きなうねりの到来を、静かに、そして深く悟り、民衆の前に、その震える足で、しかし最後の威厳を保ちながらゆっくりと進み出て、太陽に、この部族の未来を、そして民の幸せを託し、族長の座を譲ることを、潔く、そしてどこか安堵したような、穏やかな表情で宣言した。
「タイヤンよ…いや、太陽よ。もはや、この老いぼれに、この部族を導く力はない。お主のその若き力と、比類なき知恵、そして何よりも、民を思うその温かい心で、どうかこの部族を、そしてこの島を、輝かしい未来へと導いてくれ。頼んだぞ…」
その目には、もはや悔しさや未練の色はなく、むしろ、重荷を下ろしたかのような、安らかな光が宿っているように見えた。
太陽は、民衆の、まるで彼を救世主として、あるいは神の使いとして崇めるかのような熱い祝福と、部族の輝かしい未来への、抑えきれないほどの、そしてあまりにも大きな期待が込められた、まるで嵐のような歓呼の中で、族長の、そしてこの部族の太陽たる者の証である、太陽鳥(それは、この島で最も美しく、そして神聖視されている、伝説の鳥だった)の、朝日を浴びて虹色に輝く、最も美しい一枚の羽を幾重にも重ねて作られた、神聖で、そして代々受け継がれてきた荘厳な頭飾りを、老族長から、その震える手で、厳粛に、そして深い感謝の念を込めて受け取り、新たな指導者「太陽王」として、この南海の地に、月光を一身に浴びながら、高らかに即位した。その瞬間、満月が、まるで彼を祝福し、その前途を照らし出すかのように、一層強く、そして美しく、神々しいまでの輝きを増したように、集まった全ての人々の目には見えた。
彼はまず、常に自分の傍らに立ち、その絶対的な力と、揺るぎない忠誠心で、どんな時も自分を支え続けてくれた無二の親友である岩牙を、集まった全ての民の前で高らかに、その比類なき武勇と、何よりもその汚れなき、そして飾り気のない誠実さを称え、部族最強の戦士「南海の季布」(それは、遠く大陸の中原から、ごく稀に伝わってくる物語の中で、一度交わした約束は命を懸けても守り抜き、決して裏切ることのない、信義に厚い伝説の侠客として語られる人物の名を借りたもので、太陽が、岩牙の、その嘘偽りのない誠実さと、揺るぎない忠義を、心の底から讃えて与えた、特別な、そして名誉ある称号だった)と命名し、部族の軍事と、島全体の守護の一切を、その大きな、そして信頼できる両手に、全幅の信頼と共に託した。
岩牙は、その大きな瞳に、熱い、熱い涙を止めどなく浮かべながら、深く、深く、大地に額がつくほどに頭を垂れ、「この岩牙、命に代えても、太陽王をお守りし、この島を守り抜きます」と、力強く、そして震える声で誓った。
そして、太陽王は、集まった全ての民衆の前で、聖なる大樹の最も高い場所に、まるで天に昇るかのように軽やかに立ち、その力強い両手を、夜空に輝く満月へと突き上げ、高らかに、そしてその澄んだ、しかし今は万感の想いを込めた瞳に、熱い、熱い涙を止めどなく浮かべながらも、どこまでも力強く、そして未来への、無限の希望に満ちた声で宣言した。
「私は、この、神々に愛され、そして私を温かく受け入れてくれた美しい島に、全ての命が、草木の一本に至るまで、そのあるがままの姿で輝きを放ち、誰もが、生まれや立場、肌の色や力の強弱に関わらず、互いを心から尊重し合い、そして何よりも、心からの、一点の曇りもない笑顔で、安心して、そして豊かに暮らせる、真の楽園を築き上げることを、この聖なる月と、満天に輝く無数の星々に、そして我らが祖霊に、固く、固く誓う!」
彼の言葉は、力強く、集まった人々の心に響き渡った。そして、少し声を落とし、しかし変わらぬ決意を込めて続けた。
「そして、いつか必ず、この広大な、そして時には我々を隔てる海を越え、遠い、遠い地で、ただ一人、私を待ち続けている、かけがえのない、大切な人と再会し、その、我々が共に夢見た、誰もが幸せになれる理想を、この世界の果ての、そのまた果てまで、この手で、必ずや広げてみせるのだ!」
その、彼の魂からの叫びにも似た、そして揺るぎない決意に満ちた言葉は、南海の、熱く、そして生命力に満ちた優しい夜風に乗り、遠く、遠く北の、全てを凍てつかせる極寒の空の下で、同じように、孤独に星空を見上げているであろう、愛しい、ただ一人の人の元へと、そして彼女の震える心へと届くかのように、力強く、そしてどこまでも、どこまでも優しく、そして暖かく、いつまでも、いつまでも響き渡った。
太陽の、そしてやがて中原の、いや、世界の歴史そのものを、大きく、そして劇的に揺るがすことになるであろう「太陽の連合」の、壮大で、そして光り輝く、希望に満ちた伝説が、今まさに、この南海の、地図にも載らない名もなき小さな島から、静かに、しかし確実に、その輝かしい、そして歴史的な第一歩を踏み出そうとしていた。彼の胸には、凛から贈られた、あの古びた、しかし彼にとっては世界で最も大切な、かけがえのない宝物である白い貝殻のペンダントが、新たな、そしてあまりにも重い決意と、未来への、計り知れないほどの、そして無限の希望と共に、まるで彼の心の高鳴りに呼応するかのように、熱く、そして力強く、命の鼓動そのもののように輝いていた。それは、彼が決して一人ではないことの、そして、どんな困難が待ち受けていようとも、必ずや再会できるという、揺るぎない、そして永遠の約束の証だった。




