第23話:干ばつの試練、民の声と太陽の知恵、そして神への祈り
第23話:干ばつの試練、民の声と太陽の知恵、そして神への祈り
熱帯の太陽が、まるで容赦のない灼熱の矢を放つかのように、南海の島々を、この地に住まう長老たちでさえ、その長い人生の中で一度も経験したことのないほどの未曾有の、そして人々の生きる希望さえも根こそぎ奪い去るかのような、絶望的な干ばつが襲った。数ヶ月、いや、もはやどれほどの時が過ぎたのかさえ曖昧になるほどの間、雨は、ほんの一滴たりとも、乾ききった大地を濡らすことはなかった。
かつては島の隅々を潤し、豊かな生命を育んでいた清らかな川は、完全にその流れを止め、ひび割れた川底を虚しく晒し、豊かな恵みをもたらしてくれていた、鬱蒼と茂っていた森の木々も、その瑞々(みずみず)しい緑を失い、まるで枯れ木のような姿で次々と力なく枯れ始め、部族の、そして島全体の唯一の生命線とも言える集落の井戸の水も、ついにその底から濁った泥水が混じりはじめ、もはや飲むことすら躊躇われるほどに、その命の源泉が尽きかけていた。
人々は、日に日に減少していく、わずかな水と、残り少ない干し芋や木の実といった食料を求めて、これまで隣人として助け合ってきた者同士でさえも、互いに猜疑の目を向け、いがみ合い、時には、生きるための本能が理性を打ち破り、盗みや、些細なことから起こる暴力沙汰も、悲しいことに日常的に起こり始め、部族内には、出口の見えない絶望と、いつ何が起こるかわからない不穏な空気が、まるで鉛のように重く、そして息苦しく漂い始める。子供たちの、渇きと飢えを訴えるか細い泣き声が、昼夜を問わず、集落のあちこちから聞こえてくるようになっていた。
現族長は、その衰えきった身体で、部族の、顔に奇妙な模様を描いた年老いたシャーマンと共に、連日連夜、燃え盛る篝火の前で、意味不明な呪文を唱え、神への生贄として貴重な家畜を屠り、雨乞いのための、どこか狂気じみた儀式を繰り返すばかりで、この絶望的な状況を打開するための、具体的な対策を何一つ打ち出すことができずにいた。その姿は、もはや指導者というよりも、ただ神頼みにすがる無力な老人でしかなかった。民の飢えをよそに、貴重な食料が儀式で浪費されることに、不満の声も上がり始めていた。
長老たちもまた、その多くが、ただ天の神々の、計り知れない怒りがいつか自然に収まるのを、力なく、そして無気力に待つしかないと、諦観に満ちた表情を浮かべ、為す術もなく、日ごとに衰弱していく民の姿を、ただ傍観するばかりだった。
「これは……これは、あの太陽を名乗る異人が、我らの聖なる島に来たことによる、大いなる神の怒りではないのだろうか……彼が来てから、おかしなことばかり起こる」と、一部の、太陽の存在を快く思っていなかった長老たちは、ここぞとばかりに、彼に対して、あからさまな非難と呪詛に満ちた視線を向け始めた。人々の不満の捌け口を、太陽に求めようとしていたのだ。
そんな、誰もが希望を失いかけ、ただ絶望に打ちひしがれる中、太陽は、そして彼を心から信頼する岩牙は、決して諦めることなく、新たな、そしてまだ見ぬ水源を求めて、灼熱の太陽が照りつける中を、来る日も来る日も、島中を歩き続けた。
彼は、前世で、ほんの僅かではあるが学んだ地理学の基礎知識――それは、天文部の部室にあった地学の参考書で読んだ、地形の起伏と、地下を流れる水脈の、目には見えない関係性や、特定の植生が地下水脈の存在を示唆するという記述だった――や、この島で、数年間暮らす中で得た、動物たちの、生きるための本能的な行動パターン(例えば、特定の場所に、喉の渇きを癒すために集まる鳥や虫の群れ、あるいは、一見枯れ果てているように見える植物の、地中深くまで伸びる根の張り方、さらには、わずかな湿り気を好む、特定の種類の植物の群生地など)を、その鋭い観察眼で、一つ一つ注意深く、そして根気強く観察し、わずかな、そして他人から見ればあまりにも馬鹿げた可能性に、最後の望みを賭けた。彼は、岩牙の、象たちが水源を見つける能力にも期待を寄せていた。
そして、数日間に及ぶ、想像を絶するほど困難な、そして時には、毒蛇や、食料を求めて凶暴化した獣との遭遇といった、命の危険さえ伴う探索の末、ついに、集落から遠く離れた、これまで誰も、危険を冒してまで足を踏み入れようとはしなかった、険しく、そして切り立った岩肌が続く山奥の、薄暗く、そして湿気に満ちた、苔むした巨大な洞窟の、その最も奥深く、陽の光も届かないような場所に、清らかで、そして冷たい地下水脈が、細々とした流れではあるが、しかし確かに、そして決して絶えることなく、岩間から湧き出し、小さな水たまりを作っているのを、奇跡的に発見する。岩壁のわずかな湿り気と、そこに群生する特定の種類のシダ植物が、太陽にその場所を教えてくれたのだった。
「あった…水だ! 岩牙、見てくれ!」太陽の声は喜びと安堵に震えていた。
太陽と岩牙は、その喜びを爆発させる間もなく、部族の、まだ心の奥底に、ほんのわずかでも希望の灯を失っていない、若い世代の者たちを、その熱い言葉と、揺るぎない信念で鼓舞し、自らが、泥と汗にまみれながら先頭に立って、文字通り不眠不休で、その、命の源泉とも言える洞窟から、遠く離れた村へと、原始的な、しかしこの状況下では唯一可能な、そして驚くほど効果的な、竹や木の樋を繋ぎ合わせた水路を掘り、そして築き上げる作業を開始した。
それは、灼熱の太陽の下、硬い岩盤を砕き、深い谷を越え、険しい山道を切り開くという、想像を絶する困難を極める、まさに時間との戦い、そして体力と精神力の限界への挑戦とも言える作業だったが、太陽の、どんな困難にも決して諦めない、鋼のような不屈の姿勢と、岩牙の、まるで神話の巨人のような、人間離れした超人的な働き(彼は、他の者たちが数人がかりで動かすような巨岩を一人で軽々と運び、水路の障害を取り除いた)、そして何よりも、彼らが示す、部族の未来への揺るぎない希望が、最初は半信半疑だった若者たちを、一人、また一人と奮い立たせ、いつしかそれは、部族全体の、生き残りを賭けた一大事業へと変貌していった。太陽は、水路の勾配を計算するために、簡単な測量術(これもまた、天文観測の基礎知識の応用だった)を用い、作業の効率化を図った。
数日後、ついに、その、あまりにも貴重で、そして待ち望まれた水が、泥と汗と、そして時には血にまみれた彼らの、数えきれないほど多くの手によって、村へと、まるで生命の奔流のように導かれ、カラカラに乾ききり、ひび割れた畑に、再び命の水が勢いよく注がれ、そして、喉の渇きに苦しみ、衰弱しきっていた人々が、その冷たく、そして甘露のような水を、貪るように飲み干し、生き返ったようにその顔に生気を取り戻した時、部族中から、太陽への、心の底からの、そして言葉では言い尽くせないほどの感謝と、畏敬の念を込めた称賛の声が、まるで嵐のように、そして天を衝くかのように、一斉に巻き起こった。
「太陽様だ! 太陽様が我らを救ってくださった!」
「神々は我らを見捨てていなかった! 太陽様こそ、神の使いだ!」
かつて、太陽を「神の怒りを招いた異人」と声高に非難した長老たちも、その、誰の目にも明らかな、そして奇跡的としか言いようのない成果を前にしては、もはや一言も発することができず、ただ呆然と、その光景を見つめるばかりだった。彼らの権威は、完全に地に落ちた。
この一件は、太陽の名声を、そして彼への信頼を、部族内で絶対的で、そして揺るぎないものとして決定的なものとした。民衆は、もはや、旧態依然とした、何の役にも立たない、ただ祈るだけの無力な指導者たちではなく、具体的な行動と、そして彼らが「太陽の奇跡の知恵」と呼ぶ、前世の知識という名の力で、部族を、この絶望的な危機から救った太陽にこそ、部族の、そして自分たちの未来を託したいと、心の底から、そして切実に、強く願うようになる。
族長の座を巡る、静かな、しかし確実な、そしてもはや誰にも、そして何ものにも止められない、新しい時代への変化の大きな波が、南海の小さな部族の中に、力強く生まれ始めていた。その波の中心には、いつも、太陽のように穏やかに微笑む、異邦人の若者の姿があった。彼は、この成功に驕ることなく、次に起こりうる危機に備え、さらなる知恵を絞ろうとしていた。




