今年さいごのカレンダー
お兄ちゃんとのじゃんけんにかった。今日の日めくりをやぶるのはわたしだ。
明日もかてば、今年さいごの一まいをやぶける。
ゆっくりと、今日をやぶいた。
わたしは知らないところに立っていた。
赤いじゅうたんの広いおへや。お話に出てくるおしろみたい。
「こちらにくるのだ」
男の人の声。広いおへやを、声のした方に歩いていく。
ひょろ長い手足の生えた「31」が、ごうかなイスにすわっていた。31の上には小さな「十二」がかんむりみたいにのっている。
「どちらさまですか?」
えらそうな人なので、ていねいに聞いてみた。
「よは、日めくりの国の王である」
「ひめくに、日めくりの国?」
言いにくい。
「さよう。めくるたびに、一人たびだつのだ。そなたら兄妹により、とうとう、よがのこるのみとなった」
なんだか、わるいことをしてしまったみたい。
「ごめんなさい」
「あやまることはない。めくられぬことの方がわれらにはもんだいなのだ」
「でも、王さまはさびしくないの? おうひさまや、王子さまや、ほかにもたくさんのひとたちがいたんでしょ?」
「さよう。だが、そなたら兄妹は、かかすことなく、きまった時間にはたらいてくれた。わかれに思いのこすこともなかったわ」
そんなにさびしがってはいないのかな。
「王さまが、わたしをここによんだの?」
「さよう。そなたの兄もまねきたかったのだが、力およばずであった」
「わたしたちにどんなご用?」
「れいをしたくてな。かかすことなくめくってもらったこと、かんしゃしている。この国に生まれたもののつとめ、はたすことができた」
数字だからわかりにくいけど、王さまはおじぎしたみたい。
「どういたしまして」
ゆうがにおじぎをかえす。
「うむ。そなたの兄にもつたえてくれ」
わたしはうなずいた。
「それと、たのみごとがある」
「わたしにできること?」
「うむ。29はよのむすこ、30はよのつまなのだが、その二まいと、よはまとめてしょぶんしてほしい」
王さまは頭をかくみたいに手をうごかした。
「そんなことをせずとも、いずれは会えるのだがな」
やっぱりさびしかったみたい。
わたしがうなずくと、王さまはまたおじぎした。
「何してるんだよ。早くすててこいよ」
お兄ちゃんの声にふりかえると、いつものおうち。
「王さまがわたしたちにありがとうって」
「何言ってるんだ?」
「お兄ちゃん、王子さまさがすのてつだって」
わたしは手の中のおうひさまを広げ、かべにかかった王さまに頭を下げた。