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冬童話2025

今年さいごのカレンダー

作者: 壊れた靴

 お兄ちゃんとのじゃんけんにかった。今日の日めくりをやぶるのはわたしだ。

 明日もかてば、今年さいごの一まいをやぶける。

 ゆっくりと、今日をやぶいた。

 

 わたしは知らないところに立っていた。

 赤いじゅうたんの広いおへや。お話に出てくるおしろみたい。

「こちらにくるのだ」

 男の人の声。広いおへやを、声のした方に歩いていく。

 ひょろ長い手足の生えた「31」が、ごうかなイスにすわっていた。31の上には小さな「十二」がかんむりみたいにのっている。

「どちらさまですか?」

 えらそうな人なので、ていねいに聞いてみた。

「よは、日めくりの国の王である」

「ひめくに、日めくりの国?」

 言いにくい。

「さよう。めくるたびに、一人たびだつのだ。そなたら兄妹により、とうとう、よがのこるのみとなった」

 なんだか、わるいことをしてしまったみたい。

「ごめんなさい」

「あやまることはない。めくられぬことの方がわれらにはもんだいなのだ」

「でも、王さまはさびしくないの? おうひさまや、王子さまや、ほかにもたくさんのひとたちがいたんでしょ?」

「さよう。だが、そなたら兄妹は、かかすことなく、きまった時間にはたらいてくれた。わかれに思いのこすこともなかったわ」

 そんなにさびしがってはいないのかな。

「王さまが、わたしをここによんだの?」

「さよう。そなたの兄もまねきたかったのだが、力およばずであった」

「わたしたちにどんなご用?」

「れいをしたくてな。かかすことなくめくってもらったこと、かんしゃしている。この国に生まれたもののつとめ、はたすことができた」

 数字だからわかりにくいけど、王さまはおじぎしたみたい。

「どういたしまして」

 ゆうがにおじぎをかえす。

「うむ。そなたの兄にもつたえてくれ」

 わたしはうなずいた。

「それと、たのみごとがある」

「わたしにできること?」

「うむ。29はよのむすこ、30はよのつまなのだが、その二まいと、よはまとめてしょぶんしてほしい」

 王さまは頭をかくみたいに手をうごかした。

「そんなことをせずとも、いずれは会えるのだがな」

 やっぱりさびしかったみたい。

 わたしがうなずくと、王さまはまたおじぎした。

 

「何してるんだよ。早くすててこいよ」

 お兄ちゃんの声にふりかえると、いつものおうち。

「王さまがわたしたちにありがとうって」

「何言ってるんだ?」

「お兄ちゃん、王子さまさがすのてつだって」

 わたしは手の中のおうひさまを広げ、かべにかかった王さまに頭を下げた。

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― 新着の感想 ―
日めくりカレンダーが最後の一枚になった時に、今年ももう終わりなんだなって実感するのでしょうね。(ちなみに今は12/31 20:15です)
2024/12/31 20:15 退会済み
管理
すごく面白かったです!発想が斬新ですごいですね!
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