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害虫駆除

トウモロコシ視点

目の前に広がる光景はよく見慣れていた。


プレイング・マンティスが近づいてくる。


上半身は女性で、下半身はカマキリの見た目をした生き物。


たまにイレギュラーで産まれる、上半身と下半身が別々の種族になった姿。


病気で例えると、がんみたいなもので、早めに駆除しないと草原一帯を火の海にしてしまう可能性がある。


いつもは産まれた時点で処分されるのだが……。


自分がお腹を痛めて産んだ子供だ。


そう簡単には殺せないし、殺させない。


感情があるのは厄介なことだ。


地面を揺らしながら、こっちに向かってくる。


向かってくる速度はいつも以上に速く、指示を出す時間なんてない。


ボクはうのちゃんを見た。


うのちゃんは不気味なぐらいニコニコしている。


まるで、〝どうぞご自由に〟とでも言わんばかりの顔だ。


他2人も特に感情のない表情だ。


少し彼らを試してみたい、そんな好奇心に駆られてしまった。


息を無い肺に吸い込む。



「いつも通りいくよ!」



そう言うと、何デも屋はニコりと笑い、メンバー全員は驚いた顔をしていた。


ただ1人を除いて。



「えっロッシー、いつも通りは……」



「多分……大丈夫!」



不安そうなメンバーとは裏腹に、棗の顔は先程まで嫌々と駄々をねていた人物とは大違いの表情だった。


なんというか……目が座りすぎてる。


他の2人も目が座っていた。


今度は近くで雄叫びが聞こえる。



「ヴアアアアアアアアアアア!!!!!!!」



標的はもう目の前にいる。



ボクは横に素早く避けた。


横目にエリンが映る。



「サング」



エリンの背中には羽が生え、軽快に空を飛んでいる。


こんな晴れた天気に、ヴァンパイアの彼が飛んでいる姿はなんとも奇妙だ。


プレイング・マンティスは急に体の自由が効かなくなったことに、苛立ちを感じているみたいだった。


悲鳴にも感じる雄叫びがどんどん大きくなり、思わず耳を塞ぐ。


服の裾をグイッと引っ張られる。


見ると少しニヤけた顔の棗。



「あれってさ、どこが弱点なわけ?」



そして何故だか少しつまらなそうな顔をする。



「心臓と、頭と、腹だね」



「爆発とか いける?」



「どうだろ……試したことないから……」



「じゃあやったげる。フレア」



棗がフレアを呼ぶと、彼は何かを投げた。


うのちゃんは草むらに寝転がってる。


君リーダーだよね とかツッコミを入れたくなった。


それはシュンも一緒みたいだ。


ウドは相変わらずの興味なさげ。


エリンはプレイング・マンティスを頑張って止めている。


棗は魔導書を開く。



「シュヴェーベン」



そう言うと、棗は高く跳び、プレイング・マンティスの口に何かを投げ込んだ。



「エリンギ!」



僕が叫ぶと、エリンはすぐに棗の腕を掴み、地面へと下降する。


そのすぐ後に、上空で爆発音が聞こえた。


肉片が辺りに飛び散る。


幸いにもうのちゃんが、海水で膜を張っていたおかげで肉片はボクらには振りかからなかった。


この肉片は当たったらかなり良くない。


周囲の草の状態を見る感じ、硫酸に近い液体だ。



「リーダー」



振り向くとシュンが真剣な顔をして、こちらを見ていた。



「僕らも加勢したh」

「来る」



プレイング・マンティスのはるか後ろから、黒い大群が近づいてくる。


1番危険なのは、この〝フライ〟だ。


見た目ははえと全く変わらない。


だが、皮膚に寄生して卵を産み付ける点は迷惑極まりない。


しかも、痛みもないために気づくことが非常に困難だ。


辺りに羽音が響く。



「爆発魔法がいいでしょうか?」



「トモちゃん。君的にはどう?」


肩にセインが腕を乗せる。


冷たい。



「えっと。止めといた方がいいかも。飛び散ると、更に被害を生むから。……凍らせたりとかだったらいいかな」



そう言うと、うのちゃんはフレアの肩を軽く叩く。



「じゃあフレア頼んだよ」


その言葉を聞いた瞬間、妙なガッカリ感におそわれた。


……なんでだろう。



「うのちゃんじゃないの?」



不意に口から漏れ出す声に、手でせんをする。


うのちゃんは不思議そうにしてから


「へ?あぁうん。弟子にはいろんな経験を積ませたいからね。まっ2人が失敗したら、私がやるけどね」



そう言って笑う うのちゃんを、ボクは笑えなかった。


あの日見た光景を、もう1度見たい。


手がじんわりと湿る。


少しの焦りと苛立ちが頭の中に、虫のようにうごめいていた。


フレアと目が合う。



「セイン様、俺はあいつが心配なので、加勢に行きます。今日は指示されずに動きたいので」



「あっそう。確かに今日の棗はやらかす予感があるからねぇ……じゃあ頼んだよ」



「期待に応えてみせます。」



彼はニコッと笑った後、プレイング・マンティスに苦戦している2人の元へと、駆けて行った。


リーダー2人が立ち尽くしている状態は、なんとも間抜けなものだ。


その時、耳にシュンの声が入る。



「2人とも!避けて!!!」



叫びにも近い大声に、一瞬反応が遅れた。


それが、命取りになるくらい分かりきっているはずなのに。


プレイング・マンティスが腕を思い切り振りかざす。



「ライ!」



うのちゃんがそう呼ぶと、辺りが若干暗くなった。


そこにはプレイング・マンティスにも劣らない巨大な海坊主が僕らを覆う。


そしてヤツの攻撃を防いだ。


初めて見る光景に目をぱちぱちとさせる。



「そう!いい子いい子!」



笑う彼に思わず見惚れる。


初めて会った時を何となく思い出した。


と言っても、勝手に見てただけなんだけど。


横顔がとびきり美人で、印象に残っている。


後、〝腕と脚が無かった〟のも印象に残っていた。


うのちゃんは不十分な助走距離の中 走り、床が動くみたいな高いジャンプをする。


綺麗なフォームで思わず見とれてしまう。


カラーバンド試験の時に見た、あの姿。


手を伸ばすと、冷気が降り注いだ。


次々にフライが凍りついていく。


その時、後ろに重たさを感じる。



「今日は出番ないじゃないじゃないですか、リーダーさん」



「君もね」



ウドはニコニコしながら、ボクにベタっと張り付く。


メンバー同士としては馴れ馴れしすぎる気もするが……。


まぁいいだろう。



「おれは〝貴方あなたとじゃなきゃ動けません〟からね」



「分かってるなら……まだ待ってて」



「うん」



ウドに向けていた視線を、戦っている皆に戻す。


棗がミスをして、フレアがカバーする。


それをエリンが慌てた顔をして、シュンが素早く支える。


うのちゃんは下から、4人を見上げていた。


前髪が目にかかり払い除ける。


巨大なプレイング・マンティスとフライの大群よりも危険なものが、まだ出てきてない。


あれは頭がいいから、多分、皆が疲れた頃に出てくる。


その時までに体力を温存しておかないと。


そう考え、目をつぶった。

毎週日曜日の8時半に投稿しようと思ってます。


良ければ評価お願いしますm(_ _)m


訂正↓

さのちゃんと表記していましたが、正しくはうのちゃんです。混乱させた方、申し訳ございません。


【唐突プロフィール】

名前/トウモロコシ

誕生日/7月15日

好きなこと/寝ること

嫌いなこと/虫を侮辱する人

趣味/虫と戯れること

種族/神

基本的におっとりとしている。しかし、時折見せる支配者の顔が地味にカッコイイらしい。


名前/ウド

誕生日/8月31日

好きなこと/4人仲良く過ごすこと

嫌いなこと/指示を聞かない人

趣味/トウモロコシとグルメツアー

種族/人間

掴みどころがなく、何を考えているか分からない。基本的に殺りそうな目をしている。


名前/エリンギ

誕生日/10月15日

好きなこと/料理

嫌いなこと/ウドの無茶ぶり

趣味/誰かにご飯を作る

種族/ヴァンパイア

若干天然な部分がある。グイグイくる人は苦手らしい。


名前/シュンギク

誕生日/9月3日

好きなこと/空を見上げる

嫌いなこと/下ネタ

趣味/虫の世話

種族/虫人

虫の種類のせいで嫌われているが、中身は気さくで、優しい。虫をこよなく愛する。

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