休息
「棗。私に血を出させたら勝ちにしてあげるよ」
「…………無理だろ」
真顔で告げる。
ニッコリと笑う彼は人間の姿だ。
黒い髪に白い毛先。
深い青の瞳に雪のように白い肌。
いつもとは違う姿に新鮮味を覚える。
「だって棗、ヒーラー向いてないもん」
「なんで守られ役に徹しなきゃなんねぇんだよ」
ぶっきらぼうに言っているが、実際そうだ。
僕は他の魔術師より回復が向いていない。
5秒で出来るのが10秒はかかる。
「まぁまぁ、だから君の得意な強化魔術を特訓しようって話!」
左手にランドールM14を軽く握って、喉元目掛けて振りかざす。
だが、あっさりとかわされた。
「いいね」
「あっそ〜……シュタルク」
1枚のメモ用紙をチラ見して呟く。
ナイフを振る速度が格段に早くなる。
彼は軽く避けて、横目に足がとんでくるのが見えた。
下に避けるのをやめて上に飛ぶ。
脳天目掛けて、刃先を落とすが、またかわされる。
やっぱり当たらないなぁ。
「よーしっ、フレア!入ってこい」
直線上に光が放たれる。
「試験は君らが、協力しないといけない。だから頑張ってね〜」
セインは銃を取り出し発砲した。
若干腕を掠める。
「後で服縫ったげる」
淡々と話す姿が怖い。
フレアが奴の背後に回って、こっそり貸したナイフで首を切り裂く。
が、見つかって肩をぶち抜かれた。
だからコイツと戦うのは嫌なんだよな。
隙が無さすぎる。
とか考えた途端、2人して胸ぐらを掴まれて地面にねじ伏せられた。
「怖っ」
「セッレーくん強い!」
遠くにいる2人はスコーとヤドリギだ。
ヤドリギはまだ刑期は終わっていないが、今回だけ特別らしい。
多分セインがスノードロップの中で偉い所にいるから出来ることだ。
四天王とか言ってたっけな。
トウモロコシさんから聞いた話だと、まさに一騎当千って言葉が似合うらしい。
まさに化け物。
「スーちゃん、ここはセインでもいいよ。で、ヤドリギ〜感想は?」
嫌そうな顔をしながら、小さな口を開く。
「そうですね……息は合ってると思いますが、セインさんが強すぎますね。相手を変えた方がいい」
まともな意見にこっそり頷く。
「えぇ〜……あっじゃあヤドリギ戦ってよ」
「残念ですが、神前さんから禁止されてますので」
「かったいなぁ……じゃあもう1戦」
「やらねぇ。お前とは絶対にやらねぇ」
治癒が終わったフレアも口を開く。
「俺も同感です。それに先生から休めと言われてるでしょう」
すっと何事も無かったかのように立ち上がり、土を払う。
スノードロップ内にある闘技場は色々カスタム出来る仕組みだ。
今は固い地面だから、普通に顔の出っ張ったところが痛い。
前の依頼が終わって、1日休憩したあと。
僕は8段の試験を受けることになった。
いや馬鹿じゃないの。
今3段だよ?
いやまぁ確かにね、3段受けたのは大分前だったから分かるけどさぁ……。
燿爛さんにも「えっ3段って嘘でしょ!?」と言われた。
シュタルクとかは5段ぐらいとかだったけ。
「あっそうだ2人とも、これ」
セインはスコーに黄色のリボンを。
僕には緑色のリボンを手渡した。
「カラーバンド試験は受けてないけど?」
「あぁ職権乱用」
コイツさらっとトンデモないこと言ってる。
「大丈夫なんですか?」
ヤドリギが心配そうに、なんても言えない表情でセインに目を合わせる。
彼はニコッと笑って
「見てる内容は試験の時と同じだよ。藍の皇帝は筋書き通りじゃお気に召さないからね」
と言った。
服を引っ張られて振り返ると、スコーが小声で話しかけてくる。
「カラーバンド試験ってなに?」
「スノードロップ内での階級みたいなもんだよ。黄色から始まって青、赤、緑、紫、橙、白、黒が1番上。で、普通なら試験受けなきゃなんだけど……」
「まぁセーくんだしね」
クスクスっと笑う姿は兎っぽい。
セインが何かやらかしても「まぁセインだしね」で許されてしまう。
皆納得してるからいいんだろうけどさ。
ただの横暴で終わらないのが凄いところ。
「それじゃあ、自分は時間がきたので失礼します」
「またね〜」
軽く手を振って、広大な訓練場に4人取り残された。
「そういえばスコーの歓迎会してないよね」
「…………そうだな」
今から絶対やるんだろうなぁ。
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「「「「かんぱ〜い!」」」」
グラス同士がコツンっと重なり合う。
まるで高級レストランみたいな料理はセインとフレアが作ったもの。
レシピ通りにフレアが作り、セインが盛り付ける。
気に食わないエルフは現時点では1番上手い。
僕もお菓子以外なら作れて、神様はハンバーグを作れと言ったらクッキーが出るぐらい意味分からん。
スコーは全てを炭にしてしまうのは、火加減が間違っているからではないのが一番の謎。
何がどうしたらそうなるんだ。
「んっ!これ美味しい」
「喜んでもらえて良かった」
爽やかスマイルを浮かべるフレアが気持ち悪い。
とか言ったら何が起こるかは容易に想像出来てしまうので止めとく。
人間に馴染みのある料理を口にする。
違和感無いのが凄いよなぁ。
納得出来てしまうのがウザイ。
「あっスーちゃん、これ」
セインは中くらいの平たい箱を投げる。
「あっわっと!」
危なげに箱を掴む。
不思議そうに見つめる、スコーに僕も丸い箱を投げた。
フレアもそれに乗っかって軽く投げる。
「なんで投げるのさ!」
「まぁまぁ、開けてみてよ」
薄く微笑む彼に、彼女はリボンを解く。
最初に見た箱は平たい箱だった。
取り出したのは月の髪飾り。
「可愛い……!これ作ったの?」
「うん。作ってみた」
店で出したら結構売れそうなレベル。
ライが飾りを手に取り、スコーの髪を結い始める。
彼女は三つ編みしか出来ないってか、他の髪型で結われてるのを見たことがない。
頭は極力動かさずに出したのは丸い箱。
中は名前の刺繍をしたハンカチ。
「わぁっ!」
「刺繍はやってないから。僕は出来ない」
「棗は出来る出来ない、はっきりしてるよね」
セインがニヤリと口角をあげる。
「出来ないことは他に任せたらいい。僕はお前とは違う」
「わぁ友達減りそう」
アルコールを口に含む。
僕はセインみたいにやりたいことに体が追いつかない。
逆にセインは僕みたいにやりたいことに頭が追いつかない。
何考えてんだろ。
その間にスコーは三角形の箱に手をかけていた。
「飴だぁ!」
「飴だよ」
和やか。
今日は平和だなぁ。
エイプリルフールに番外編を投稿します。西園寺未來のやつで。タイトルは【不羈奔放なパーティですが、番外編】です。暇だったらどうぞm(_ _)m
良ければ評価やコメント、ブクマをお願いします(_ _)
【おまけ】
『わくわく!お料理編/スコーピオン+棗』
「あっえっと!カメラ回ってるんですよね?えっえとじゃあ!なんかハンバーグを作れって言われてるから頑張るね!ん〜と……ハンバーグって……取り敢えずひき肉を潰せばいいんだよね?」
(先に玉ねぎ切って炒めない?)
「でぇ……ねーぎをー入れるんだっけな?」
(あうのか?)
「んでもってコショウがあっ!」
(…………)
「……まだ……挽回出来る出来る」
ーそんなこんなで調理終了
「でーきたー!」
(発がん性物質……)
「よし……早速食べて……」
「死にたくなきゃ食うなよ」
「大丈夫大丈夫!多分死なない!」
「そう言って死にかけたのはどこの誰?」




