笑顔!!!
スコーピオン視点
脚が震える。
怖い。
2つある心臓、両方がバクバクと音を立てている。
あたしは。
あたしは今日で3回目の反抗をする。
きっと今日も分かり合えない。
それでも反抗しないといけない。
あたしがあたしでいるために。
気持ち悪い配色の戸をノックする。
中から年相応の声が聞こえた。
「はーい。どちら様」
「スコーピオンです」
名を言った瞬間、ドタドタと床を蹴る音がする。
勢いよく開かれた扉からは柔和な笑みを浮かべて出てきた。
「レディちゃん!もうっ心配したんだからねぇほんと……こんなに汚れちゃって。ほらほら早く中に入って脱いで。レディちゃんに似合う服を買ってきたのよ」
「あたしはレディバグじゃない、スコーピオン。姉さんに似合う服はあたしには似合わない!」
「まっなんてこと言うの!?あの子は……あの子はそんな事言わないわ!」
「そうだよ!あたしは姉さんとは全く違う!」
母さんは錯乱したように、「違う、違う」と何度も呟いた。
抑えろ。
抑えろ、抑えろ、抑えろ。
あたしが暴走したら皆に迷惑がかかる。
あの時だってそうだ。
落ち着け。
興奮するな。
考えれば考えるほど、感情の抑えが効かなくなりそうだ。
ーピピピッ
「うぃゆ」
足下には、なーくんに懐いていた鳥があたしのそばにいる。
元気づけてくれてるのかな。
乾いた口を必死に唾液で潤す。
「いい加減、現実を受けとめなよ。姉さんはもうこの世にはいない」
「違う違う違う!!!!」
どこから取りだしか分からない包丁、前に押し出してくる。
手首を掴み力を込めた。
もう少し……力を入れたら骨が折れるんじゃないかって時に離す。
母さんは痛みに顔を歪めた。
この魔族は何を言ってもフィルター越しにしか見れないから。
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姉さんがいなかった日。
「お母さん!あたしね頑張ったよ!」
そう言うも、母は退屈そうにスマホを眺めるだけ。
付けている服を引っ張っても、まるで虫を払うように腹を蹴り挙げられた。
思わず吐いてしまって、乾いた雑巾で拭いた。
その時も母さんは見向きもしなかった。
姉さんが帰ってくるまで。
ずっとずっっとずぅーっと。
体には青紫の後が残って、精神にめちゃくちゃに釘が刺されていた。
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あたしがまだ8歳の頃。
学校のテストで満点を取った時に、母に見せた。
「お母さん、見て!今日テストで」
「ただいま〜」
「あら、レディバグちゃんお帰り。学校どうだった?」
母さんはあたしには見せない顔をする。
「楽しかったよ」
姉さんはチラっとあたしを見て、強く手を引いた。
そのまま階段を登っていく。
「スコー、テスト返って来たの?」
優しい笑みを浮かべて、そう聞いてくる。
「うん!満点だった!」
あたしもニコッと微笑む。
魔族の宝物庫はきょうだいを作る家は少ない。
大体、捨てて捨てられを繰り返すからお金が無いのが理由。
勿論、お金があれば平等に愛して、育てる家もあるけれど……。
大抵は優秀な方が優遇されて、そうじゃないほうは煙たがられる。
家は後者だ。
姉さんより社交的じゃないから、空気扱い。
父さんは蒸発したからお金もない。
あたしが死ななかったのはきっと姉さんがいたから。
まぁ少し経ってから誘拐されたけれど。
そこでも沢山友達が出来たから。
何人かは死んじゃったけど。
一緒に姉の部屋に入った瞬間、抱きしめられた。
お湯に花を混ぜたような匂い。
「姉さん?」
「私はずぅーっと、スコーの味方だからね」
「……うん!」
徐々に力が込められていき、骨がきしんだ。
「姉さんっ」
肉に爪が食い込む。
いたいっ。
「姉……さん……」
息が苦しい。
「スコーはお母さん好き?」
「んっううん」
痛い痛い痛い。
あっ。
ードサッ
お尻から落ちた。
「スコーはずぅっと笑っててね」
そう笑う姿が、最後に見た姉さんだった。
8年間、あたしは母に空気のように扱われてきた。
息が詰まりそうだったけど、姉さんがいたから耐えてこれた。
けど。
この時の笑顔は子供ながらに心臓がバクバクと呼吸しだしたのだけはずっと覚えている。
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誘拐されて、帰ってこれた日。
母さんはあたしをレディバグと呼んだ。
何かの間違いかと思ったけど、そうじゃなかった。
母さんはあたしに姉さんの髪型を模して、姉さんの服を着て、姉さんが使ってた言葉遣いで、姉さんの性格を真似して。
母さんはあたしという存在を消した。
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色々と思い出したら、もうどうでも良くなってきた。
「あたしは……あたしはっ!!この家から出ていく!もう戻ってこないから!」
弾かれたように叫ぶと、母はその場で崩れ落ちた。
誰かが絶望した姿を見るのは久しぶりだ。
あたしは振り返らずに、その場を後にした。
所々でつまづきながら居場所へ脚を走らせる。
母さんが名前を呼んでるけれど。
今戻ったらダメな気がするから。
涙で視界が揺らぐ。
喉が焼けるように熱い。
あたしは今日で母さんに対する反抗は終わった。
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「お帰り」
「たっただいま」
なーくんがハンカチを差し出す。
ここは彼に甘えて借りることにした。
均一な色は目に優しい。
「ちゃんと言えましたか?」
子供に問いかけるみたいに、優しく話し出す。
それに乗るようにあたしも
「ちゃんと言えましたよ」
なんて言った。
2人して笑う。
なーくんは優しいと思う。
最初にあった頃は年下には見えなくて驚いたな。
「セッ…レーくんってどこに行ったんだろう?」
「何か魔導書探しに行ったぞ。んでもって……いつまで隠れてんだよレイ」
「えわっ」
茂みの中から、子兎のように出てきたのは今回の主犯 輝レイだ。
少し不安そうな表情で近寄ってくる。
可愛い。
「初めまして!あたしはスコーピオン!」
握手を求めて手を差し出す。
「あっ初めましてっ……」
「若干人見知りなんだ……多分?」
「適当だぁ……」
なーくんは優しいけど、ひとと接する時は超がつくぐらい適当になる。
もう少し頑張ってほしいけど多分無理そうだ。
約4年間見てて感じた結果。
「そういやなんだけどさぁ……」
困った様子でなーくんと目が合う。
「なに?」
「トラックとか運転出来たりする?」
「うん」
言った瞬間、なーくんの表情に笑みが浮かんだ。
カビのみました!
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【なんかちょっとなんか】
この世界にも自動車やトラック、電車はあります。ただ場所が違うだけで。なので免許も必要になりますね。セインは運転の荒さをウィンディーネのせいにしていますが、セインの方がもっと酷いです。フレア談。スコーピオンは乗り物の操縦が上手い。安心出来る。




