光と影に潮風を添えて
「お〜い。2人とも。大丈夫?」
「これが大丈夫に見えるか!?」
怒ったような口調が部屋に響く。
正直、魔族の宝物庫を甘く見ていたと実感させられる。
スコーピオンからすれば、この場所は不揃いな色が多い。
棗からすれば、夕方から明け方まで鳴り響く不協和音。
フレアからすれば、臭いのキツイ香水が時間が経つ事に増している。
今日は休ませて置いた方が良さそうだ。
3人を少し見やって、ドアノブに手をかける。
宿から出てお姫様と戦った場所まで歩みを進めた。
鳥が多いのだけは、どうしても殺意が湧き上がってしまう。
「おはよう、輝レイ。調子はどうかな?」
「あの。皆は?」
先に彼等の心配をするとは。
良い子だなぁ。
「魔族の宝物庫が合わないらしいから、宿にいるよ」
柔和な笑みで微笑みかける。
レイは安堵して、深いため息をついた。
伺うように私の顔を見る。
「どうかした?」
「いえ……あの某は処刑でしょうか?」
「処刑より辛いんじゃないかな?何せ何デも屋はスノードロップの組織の中にあるからね」
彼は死ぬことに対して怖くないのだろうか。
処刑されるか聞いてきた時よりも不安そうだ。
風になびいて強烈な臭いが舞い込む。
にしてもハーフかぁ……。
彼は9:1ぐらいだろうか。
羨ましいとちょっと思った。
やっぱり異種族間の結婚は同種族よりも魅力的。
ハーフも6:4までなら美しく写ってしまう。
5:5……。
「あの……えっと……」
「私はレイラ・マグレーネ。ごめんね、あまりに綺麗だからみとれちゃったかな」
いけない。
レイラ・マグレーネはこんなこと考えない。
あれれ。
……………………。
違うセインじゃない、レイラだ。
呼吸を1度止めて仕切り直す。
「ところで……私がここに来た理由は分かる?」
瞬間、苦虫を噛み潰したような顔になる。
分かりやすい。
地面が激しく揺れた。
民間の方に被害は出ていないから、まぁいいか。
暴れてる、暴れてる。
「ウィンディーネ、取り抑えろ」
低い唸り声が響き渡る。
レイの背後からも同じ声が鼓膜を撫でた。
頭上では2体の精霊が、こちら側に被害を出さないように慎重に。
けれど大胆に攻撃しあっている。
レイは気まずそうに、目線を逸らした。
「今から精霊契約を行う」
「でも可哀想」
頬を思い切り叩いた。
何が起こったのか分からないようで、唖然としている。
「別に、君が死のうが死にまいがどっちでもいい。けど……精霊が殺した人達は戻ってこないんだ。これは君が義務を怠ったせいだよ」
無い肺に息を吸い込む。
そして声高らかに宣言した。
「今ここで輝レイをシャドウの主人にする!」
精霊契約は精霊を配下に出来る契約。
他者の宣言があって初めて出来る。
契約はただでさえ体力の半分を使うし……あとこの子、金だけ置いて逃げたし。
まぁ金は払っただけ良しとするか。
そんなどうでもいいことを考えつつ、彼を見る。
酷く衰弱していた。
手袋を外し、手を伸ばす。
少しずつ回復している。
時間が無い時は急ぐけど、後から回復痛に悩まされるためあんまりしない。
耳を劈くような悲鳴は棗とフレアで聞き飽きた。
「君はこれから報いを受けてもらわないといけない。」
「…………」
レイは何も答えない。
「取引しよう。君の刑期を短くするかわりに、私と一緒に精霊特訓を受けるなんてどうかな?」
「…………ダメです。ちゃんと罰は受けます」
真面目だなぁ……。
不休のスパルタ特訓にしようと思っていたが、休みは与えてあげよう。
指を鳴らし、鎖を解く。
支えを失った体は地面に落下する。
「ゔっ」
腕の力が入らず、上手く立てないようだ。
この時も精霊は助けようとしない。
いや、助けようとはしている。
けれど怖がっている。
推測するに1度彼に怪我を負わせたんだろう。
破れた靴下から痛々しい縫った後がチラリと顔を出している。
スマートフォンである神に連絡をかけた。
「もしもし」
軽快な声が脳に伝わる。
「もしもし〜♪輝レイのことだよね♪」
「そうです」
相変わらず伝わるのが早い。
「君はどうしたい?」
音が急に低くなった。
「私的には精霊と仲良くなるのが先だと思います。このまま放っておくと彼は死にますからね」
「じゃあそうしよう♪手続きは任せて♪」
そう言って切れた。
もしも彼が脱走しようとしたら……。
速やかに片付けるだけの話だ。
「輝レイ」
手を伸ばして捕まらせる。
足の力も弱い。
「君とシャドウを今日から私の弟子にする。これは強制だ」
取り敢えず魔法はフレアに任せるとして……後の2人はどうしようか。
そういえば試験も迫ってるんだよなぁ……。
体内でため息を着く。
一旦宿に帰るか……。
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「ただいまー!」
元気よく扉を開けると、スーちゃんが何やら考え事をしていた。
棗とフレアは未だに寝ている。
フレアを棗が眠っている方へ動かし、レイをベットに寝かせた。
「スーちゃん、どうかした?」
「あっいやぁ……なんか久しぶりに色々あって、考えちゃった」
角張った角を撫でる。
光に反射してキラリと輝いた。
「ちょっと傷入ってる」
「あれ…まだまだだなぁ」
下手くそな笑みを浮かべる。
私は貼り付けた笑みを押し出した。
「ゆっくり成長していけばいいよ。そうじゃないと直ぐに飽きちゃうから」
「もしかして、自分のこと言ってる?」
ちょっとだけ吃驚した。
「凄い。よく分かったね」
「セッ…レーくんは嘘つくと分かりやすいよ」
今度は穏やかに本心で笑った。
そんなに分かりやすいのだろうか。
もっと。
もっとセイン=ポドリファを演じるレイラ・マグレーネになりきらないと。
素のセイン=ポドリファはまだ要らない。
心の中で念を押した。
「ところで、レーくんはこれから何するの?」
長い髪が重力にしたがって落ちる。
「お店を回ろうと思って。最近依頼があっても道草はしてなかったからね、付いてくる?」
「行く!」
勢いよく椅子から立ち上がる。
額を抑えて、手に力を込めた。
耳が丸くなり、髪が毛先だけ違う色になる。
異空間に繋がっているアイテムボックスに手を突っ込み、魔術書を取り出す。
「カラーアイ」
スーちゃんが目をぱちぱちと開け閉させる。
「まだ使えるんだね」
「あと78年は使える」
昔、実験にされた時の後遺症。
色んな種族の血液を輸血されて、それに体が馴染んだ。
それまでに何人も死んだ。
仲の良かった子も死んだ。
皆死んだ。
「さっ、行こうか。ライ、任せたよ」
海坊主みたいな亡霊がゆっくりと頷く。
それを見届けて、私は部屋を後にした。
棗って名前に登録出来ないみたいです。常用漢字でもなく、人名用漢字でもないためらしいですね。そもそも彼は出生届けは出されているのでしょうか。
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【棗食レポ】
『カップケーキ編』
1人間の街
「うん。普通に美味い。えっ味の感想?甘い。砂糖の味」
2エルフの森
「なんか凄いヘルシーな感じする。ほうれん草美味い」
3ヴァンパイアの洞窟
「うん……血の味……。これ多分人間のだろ……おえっ」
4獣人の村
「おぉ〜肉の味。僕これ一番好きかも」
5虫の草原
「……食わない。マジで食わない。誰が虫がぶっ刺さったカップケーキなんか……ってウド…まじで……まじでそれ近づけんじゃねぇ!!!」
6妖怪の学校
「……食えない。これ食べたら火傷どころがすまないんだけど。見たことねぇもん、こんな燃え盛ったカップケーキ」
7鬼の里
「うーん……塩辛い。酒に合いそうだな。ただ……喉渇くな」
8人形の屋敷
「作り物。食べれない。次」
9神の世界
「今まではさぁ……カップケーキの原型留めてたじゃん。違うじゃん。そうじゃないじゃん……カップのケーキですらない。どう考えても巨大なサナダムシ!!」




