星の王子様
「スコー、起きろ。起きないと死ぬぞ」
片手をグッと引っ張るが、起きる気配は全くない。
あっちからも攻撃してくる気配はない。
戦いたい訳じゃないのか?
脳裏にセインの言葉がフラッシュバックする。
『1.相手から攻撃を仕掛けられた時のみ反撃OK、極力殺さない、痛めつけない』
簡単だが難しくもある。
巨体の腕が伸びる。
スコーを抱き、魔術書を広げた。
「フリーゲンっ!」
トンっと飛び上がる。
彼はまるで星を見たかのように、目を輝かせた。
「シュヴェーベン」
流石に巨体に乗るのははばかられて、近くにあった木の枝を踏む。
「お前に聞く。誘拐された子達は知っているか」
「誘拐?名前分かる?」
多分とぼけてはいない。
音が気持ち悪くない。
これは悪魔で感覚頼りだけれど。
視界に彼を収める。
「ヴァンパイア、人間、魔族、魚人、エルフ、獣人に覚えは?」
「あぁ。誘拐扱いになってるんだ」
つまらなそうに顔を背ける。
「どうして誘拐した?」
警察、世間、メディアはよく言う。
その終わりの無い問いに真摯に答える者は数少ないがいるに入る。
だが認められるものと、そうじゃないのがある。
多くの同情を得られるかどうか。
彼は。
どっちだろう。
小さな口が小さく開く。
「彼女がお腹を空かせていたから……これは建前ね。もう1つは……」
喉がごくりとなる。
酷く悲しそうに。
酷く辛そうに。
少年は僕を視界に収めた。
「貴方に来て欲しかったから」
次の瞬間、脳は居場所を消した。
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パッと瞼を押し上げると、そこはまた知らない空間だった。
まるで物語のお姫様になった気分。
初めて見たぞ。
天蓋付きのベッドだなんて。
そしてまたもや1人ぼっちか。
…………。
〝貴方に来て欲しかったから〟
………………。
手首と足首は拘束されている。
これも何度か経験済み。
縄は結構細め。
服は元のまま。
手首は前で固定されており、可動範囲は通常に比べてそこそこは動く。
椅子の角にズボンを引っ掛けずらす。
結構ずらさないと中々本体には辿り着けない。
ようやく見えた持ち手を右手で掴み引っこ抜く。
皮膚を切らないように気をつけないと。
それをクルっと回転させ刃先を自分に向ける。
1分足らずで切れ、足の縄を解く。
監視カメラと盗聴器はある。
今更壊したところで、か。
いや、でも。
頭は考えていたが、身体はとうにカメラを壊していた。
盗聴器は音を出さなかったら意味は無い。
スコーだったら多分面白い結果になっただろうけど。
ナイフを太腿に着けたカバーに戻し、代わりにヘアピンを2本取り出す。
本当はちゃんとしたやつを使いたいけど、鞄の中に閉まってるので今は無い。
置いてくるんじゃなかったな。
パスワード系じゃなくて良かった。
フレアがいないと結構面倒。
カチャッと音が鳴ったのは9秒後。
にしてもさっきからずっと気配を感じる……。
思わず手を伸ばすと、手は冷水に包まれた。
「ルッ……じゃないロイか?」
彼女は赤く染まり、姿を現した。
造形的に、高く結んだポニーテールにふんわりとしたスカート。
ブーツ型のヒールを履いている。
彼女は丁寧なお辞儀をして、僕の手を引っ張った。
「スコーがどこにいるか分かるか?」
ロイはこくりと頷く。
生憎転移魔術を習得出来ていない。
そもそも1度来ないと転移は出来ないと燿爛から聞いた。
結構広い屋敷だと言うのに、人っ子1人いやしない。
右足を踏み出した時。
「ダーリン?」
全く気づかなかった。
ロイは既にいなくなっている。
スコーの元に行ってくれたらいいのだが。
ゆっくりと振り向く。
「ねぇダーリン!某と遊ぼう♡」
「……何して?」
警戒心と別の気分が殴りつける。
「ダーリンは何が好き?双六とかトランプとかぁ……あっ知ってる?」
「知ってる知ってるー……」
キラキラとした眼差しと得体の知れない親近感に、モヤモヤする。
もしかして昔……会ったことがあるのか?
いやでもこんな……。
「あっダーリンお腹空いてない?先にご飯食べよっか!」
手をぐっと引っ張られる。
今日で2回目。
普段ならバシッと手を振り払う。
けれど何故だか体が拒否した。
……なんなんだ一体。
壁にかけられた絵画は独創的なものばかり。
でもそれにも覚えがある。
本当になんなんだ。
聞けば……。
口を開きかけて止めた。
昔からの防衛意識が邪魔をする。
きっつい。
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やばいどこだここ!
昔、魚人の水源に行った時に拾った本とよく似ている気がする。
手首を鎖に繋がれて、十字架には吊るされていない。
引っ張ってみるがビクともしない。
手に力を込める。
下手をしたら自分が死ぬ。
ただ無感動に。
小さな魔法陣が鎖に触れる。
「エクスプロージョン」
小さな爆発が起きる。
やっぱり。
まだまだだな。
両手首に流れる鮮血が、苛立ちを物語っていた。
なーくんに懐いていたウィユが、あたしの頭に乗っている。
彼もここにいる。
ってことは……ここは誰かの屋敷。
そう決めつけるのはまだ早いけど。
杖は無い。
檻に手をかざす。
「フレイシィール」
指先から血が滲む。
1歩踏み出すと、薄暗かった牢屋が明るくなる。
閉じた目をゆっくり開けた。
「……?」
目の前には何かがいる。
光に反射して輝く。
水っぽい。
彼女?は近づく。
あたしは後ずさる。
彼女は指で文字を書き始めた。
魔族語。
「レイラの友達のロイ……」
人型の液体はあたしの手を握ると、水っぽい液体が傷口を塞いだ。
魔術?
「貴女はなんなの」
『私は幽霊。君は霊感が無いから私の声は聞こえない』
微かに笑った気がした。
ロイはあたしの前をスキップして、重厚な扉をぶっ飛ばす。
ドガァンっと大きな音が鳴り、シャンデリアが揺れる。
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毒の入っていない得体の知れないものを食べていると、階下が唸りを上げた。
「あの子、起きたのかな。ハク」
「確認してまいります」
丁寧なお辞儀をして、扉を閉める。
そういえば。
「名前、何」
「某?」
きょとんと首を傾げる。
にしても何なんだこれ。
肉っぽい味に魚っぽい味。
野菜っぽい味によく分からない味。
なんの料理だ。
結構長い沈黙を高い声が破った。
「輝レイ」
耳を疑った。
聞いたことあるなんてモノじゃない。
見た目が変わりすぎて分からなかった。
それに声のトーンや喋り方。
同姓同名と言われた方が信用出来る。
実験体にされた後、行き場無くした僕はまた昔の事をした。
何かを盗んで、売って。
世の中は弱者に厳しい。
抗っても抗わなくて死ぬ。
そこで出会ったのがレイだ。
彼もまた貧困に陥っていた。
レイは8割エルフの2割神。
腕を1本無くしたら戻らない。
ちょっと同情しちゃって。
僕は彼を助けた。
遅くなりましたm(_ _)m
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【唐突プロフィール】
名前/輝レイ
誕生日/6月29日
好きなこと/人形遊び
嫌いなこと/掃除以外の家事全般
趣味/棗
種族/神とエルフのハーフ。
損をしやすい性格。棗の為なら死んでもいいと思ってる。




