変な奴に好かれてしまった
「誰お前……」
さっきから鼻息が荒く、来ている服もパツパツである。
脂汗も滲み出ており、言っちゃ悪いが嫌悪感が口から出そうだ。
清潔感のない奴は本当に無理だ。
寒気がする。
そいつは臭い息を吐きながら、近づいてきた。
で……。
あんまり聞いたことがない音と共に壁が壊された。
涙で顔がぐしゃぐしゃになっているスコーである。
「な‘’ぁ‘’く‘’〜ん‘’」
人差し指で多分男であろう奴を指した。
「あっ殺ればいいの?」
「多分……知らんけど」
「あたし殺っちゃった」
2人して目を見開く。
スコーは首が取れるんじゃないかと言うぐらいに振った。
「でも!でもね!風船だったんだよ!血じゃない!」
「あれは風船じゃない」
「…………あらぁ……」
そいつは不意に体を仰け反らせた。
ーバァンッ!!!
鼓膜が破れたんじゃないかと思った。
耳を触るが、異常はない。
次に聞こえる呻き声が響いた。
「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「何か出そう!」
「糞尿かゲロ意外ならどうぞ」
「あたしじゃないよ!?」
「…………」
ダメだこいつ。
一種の呆れに抜ける体に力を入れる。
思っていた液体固体ではなく、脂の塊や臓器。
血液に関しては、真っ黒だ。
にしても足場が徐々に傾いている気がする。
「何か傾いてない?」
「確かに……あと体から落ちてるやつが膨らんできてるから……やばいよどうしよう!」
「防御なら任せろ」
透明の膜を張る。
スコーはそれを触り、ニヤッと笑った。
「ありがとう!じゃあ━━殺っちゃうね」
雰囲気が捻れるように変わる。
「エクスプロージョンッ!」
目の前が赤、黄、白の順で散る。
次の瞬間視界はどす黒い紫の視界に、体は急速に風を切った。
「派手に殺ったね」
「レイラ様を真似るなど浅はかだな」
「じゃあ私が誰かを真似るのは?」
「棗以外なら」
「げんじょーほうこく」
いつもながらに妖艶な雰囲気を漂わせたレイラ。
レイラにだけ感情が豊かなフレア。
力の抜けた首を起き上がらせる。
だが、またガクッと下を向く。
なぁんか疲れてるなぁ。
そして何かを忘れている気がする。
…………。
……………………。
!!!!!!!!
「鳥は!?」
「キゥーィ」
独特な鳴き声は首裏からした。
つつかれてる。
「良かった……」
ホッと息を吐き、胸を撫で下ろした。
頭に手を伸ばすと小さな嘴が指を加える。
珍しく、レイラがフレアより後ろにいる。
海水で浮かせられている体を捻じって、地に足をつかせた。
無言のまま近づくと、彼も無言のまま退く。
21の男は22と20の神と男の間に入る。
「なんだよ」
「レイラ様は鳥が苦手だ」
「へ〜……」
ニヤッと口角が上がる。
コイツは絶対〝獣人の村〟に連れていかなきゃと思った。
自身に100%の非があるとは思っているけれども。
スコーが僕らの袖を掴んで、前方を指した。
「あれ……どうやって倒すんだろう?」
スコーがそういった瞬間、別の空間になった。
またかと思ったが違う。
4人いるし、敵は居ない。
フレアの顔が曇った。
「セイン様」
「説教は後で聞く。ゆっくり……とはいけないけど、少し話したいことがある」
軽い面持ちで彼は口を開いた。
「今回はちゃんとしたところだから。死なないように頑張ろうね」
「ちゃんとした所?」
「マジで殺してくる」
目がいつも以上に死んでる。
スコーの近くに寄った。
「博士……分かるだろ?」
「あぁ‘’……んぅ……がどうしたの?」
引き攣った声は部屋をさ迷っていた。
「僕らを捕まえようとしてるかもしれない。そして、僕らは大事な人を奪われているかもしれない。そんな状況」
「……あっ!もしかして今回のも!?」
「今回はねぇ違うんだよ。刺客じゃないからヤバイんだよ」
疑問を浮かべる彼女は目を見開かせた。
そこにフレアが真実を垂らす。
「ただの殺人〔仮〕集団だな」
「それは大変だ!!」
緊張した空気を一瞬にしてぶち壊す魔族。
「なので、いつも以上に気をつけて欲しいんだ。あの場所だと話す時間が無くてね。……はぁ……後でお説教だよぉ」
「魔術を使えば良かったじゃないですか」
「…………まぁまぁまぁまぁ……」
泳ぐ視線は誰も映していない。
壁がホログラムの様に消えて、感触は何かであった。
足をバタつかせて、手を伸ばす。
両手で力を込めて開き、顔を出した。
「ぷはぁっ」
暗く、息が出来なかった。
辺りはさっき見た光景。
息を整えていると、液体から引き摺り出された。
なんとも言えない感覚に鳥肌が立ち、振り払おうとする。
何か数年前に流行った掴めない何とかに似ている気がする。
体をグイッと引っ張られ、顔を固定された。
「はぁぁ♡可愛いねぇ♡♡好き♡結婚しよ♡♡♡」
「…………誰お前」
うっとりとした笑みで口付けをしようとしてくる。
手も足も動かせない。
となったらする手は1つ。
思い切り頭を仰け反らし、振り落とした。
ーガンッ
いってぇぇ……。
薄く目を開けると、少年は目をキラキラさせている。
「〝愛〟だねっ♡♡♡」
「ごめん無理」
「どうして?なんで?」
どこを見ているか分からない瞳はよく知っている。
でも神様じゃない。
耳が長い。
多分ハーフか。
エルフは一目惚れした相手を逃すことはまず無い。
それはフレアを見たら分かるだろう。
アソコにいた時……だから……。
アイツ17年片思いしてんのか。
よく飽きねぇな。
「なぁボク」
「某に性別は無いんだ♡どうしたの?マイダーリン♡」
これ程までに背筋が凍る体験は今までに無い。
「他の奴らは何処にやった?」
「今は頑張って戦ってるんじゃない?知らないけど♡」
カールした髪が風に揺れる。
さて。
僕はこの現状をどうにかしないと。
「ズボン引っ張るのやめて貰えるかなぁ?」
「ダーリンのダーリンを確認したいだけだよ♡」
「流石に真昼間からは宜しく無いよね?」
昼間かどうかは知らないけど。
…………絶対使うことが無いと思っていた方法を使うしかないようだ。
自身に渦巻く嫌悪感を何とか押し込んで、体を脱力させる。
「暑い……」
顔を下に向ける。
何かこうすると良いらしい。
どうしてかは知りたくないけど!!!
頭がおかしい奴の息が早くなる。
拘束が緩まった。
「ケーネベヴェーグング!」
「!!!!!」
落下する体に緩急を付ける。
そこには鎖で拘束されたスコーがいた。
寝ているのか叩いても反応は無い。
「シュタルク」
鎖を手で引きちぎる。
魔術の中ではこれが1番好き。
顔は見えないし名前も知らない。
聞こえてるかも分からない相手に指を向けた。
「てめぇの相手は僕らだよ」
先週車に跳ねられましたが元気です
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【前回に引き続き小ネタ】
トウモロコシはめっちゃ性格悪い奴でしたが、池に落ちてしまったが故に綺麗になりました。
さて性格が悪い方はいったいどこに行ったのか……。
それはある人以外は知らぬまま。




