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誤解

ワスプ視点

「やぁワスプ、調子はどうだい?」



ヘラヘラとした様子で彼は話しかけてきた。



「しんどい……まだ一日も経ってないんだろ?」



長い長いため息を吐いた。


スノードロップはブラッド内でも警戒と言われていた理由が分かった気がする。


他の所だったら刑務所内で働いたり、社会奉仕をしたりなどと楽なものだ。


後は死刑か。


ただここはそうじゃない。


殺した分だけ体感で味わうことになるのだ。



「ねぇねぇ、どんな感じなわけ?」



「…………死んだ方がマシぐらい」



特殊な被り物をして、丸1日放置される。


意識は夢のような場所に移り、罪を犯した分だけ報いを受けた。



「そんなに?」



「24時間殴られ続けてる感じ」



「あ〜らら」



ニコニコと笑う彼は檻を挟んで向こう側にいる。


小さなパイプ椅子を広げ、脚を広げて座り込む。



「何しに来たんだ」



怒りを含んだ口調で言い放つ。


燿爛は顔を変えずにそのまま笑った。



「私は可愛い可愛い女の子だよ」



頭が酸素を遮断する。


全身が石のように動かなくなった。


たっぷりと空気の流れを味わってから口を開く。



「…………嘘だろ」



「冗談じゃないよ。ついてないし……見る?」



「いらない!いらない!」



ベルトを外そうとする彼女を、必死で止める。


羞恥心がないのかコイツは!?


唇を突き出しながら、目を伏せた。



「こっちは流石に冗談だけどさぁ〜。君って騙されやすいよね」



「…………否定出来ない……」



昔から見た目で判断するのが苦手だ。


いや、違う可能性を考えるのが大の苦手なのか。


自分の弱点をえぐり出しながら、彼女を見る。


女性だと分かった瞬間恥ずかしくなった。



「もしかして恥ずかしいの?」



「そんなわけないだろ!?」



「顔真っ赤にしながら言うことじゃないでしょ」



グッと言いたいことを呑み込む。


燿爛は静かに喉を上げた。



「魔族の宝物って知ってる?」



昔の故郷に耳を動かす。



「それがどうした?」



「何デも屋は知ってるよね」



「流石にな」



ちょっとぶっきらぼうに呟く。


恥ずかしさを隠すように言ったが、彼女には気づかれていないみたいだ。


逆に恥ずかしい。


気にする様子もなく話し始めた。



「実はさ、今、そこに行ってるみたいなんだけどさぁ…どんな場所なの?」



「どんな場所……輝いていると言えばいのか……。あっ全部1色だ」



「1色?金色?」



「そうそう」



随分ずいぶんと昔の記憶を思い出す。


嫌なことまで浮かんだものをかぶりを振って消した。



「他には?」



「……謎の店が多い」



「謎の店……魔術書とかあったりする?」



「あるけど……役に立たないやつしかないぞ」



「へぇ〜」



少し悩んだ後、口を開いた。



「ワスプってさ、ちっさい頃どんなだった?」



顔をしかめる。



「言う義理がないだろ」



「私は神社の子なんだ。元々は巫女になる予定だったけど姉に押し付けてきた。ってもまぁ姉さんも乗り気だったからいいんだけどさ」



その時、ようやくあれを手渡した意味が分かった。


結局貼れはしなかったのだが。



「あれってどんな意味があるんだ?」



燿爛は足で檻を蹴って言った。



「ワンチャンあの爆散を止めれるかなぁ〜って思ったんだけどね。もしも幽霊に憑かれてるなら止めれるじゃん?」



「結局、魔術師だったみたいだがな」



伏せ目がちに見る。


檻に手をつく。



「なぁ……ここから出してくれないか?そうしたら過去を話すよ」



つい含み笑いになる。


彼女は驚きも微笑みもしなかった。


代わりに澄み切った眼球に小生が映る。



「憎悪に満ちた種族を連れてきてくれたら、いいよ」



「それは君の趣味か?」



「さぁ」



ふふっと笑う彼女は、小生に話すよう促してきた。


自分が話したのだから、次は君の番だと言う風に。


顔を太ももと腹の間に埋める。



「話したくなかったら別にいいよ」



そう言われた瞬間、体内の奥底をガツンと殴られたような気がした。


掌をぎゅっと握る。


呼吸が荒くなった。


五感が全て鈍くなった感覚。


過去という本が捨て場所を求めるように。


頬を雫が濡らす。



「お〜い。大丈夫?」



背中に暖かな感覚が上下する。


絞まる喉を無理やりこじ開けて、音を漏らす。



「…………なんにもない」



「なにが?」



「…………がんばっでもでぎない」



頭に心地よい感覚が内側に安らぎを与える。



「ずっど……ずっど……いないものあづがいざれで」



「………………」



「じんどい」



横に寝転ぶ。


塩気を含んだ水で顔がべしゃべしゃになる。



「手ぇどけて〜。拭ったげるから」



生地の良いハンカチで水分を吸われる。


いつの間に入ってきたのだろうか。


ガランとして開かれた扉を燿爛越しに見る。


彼女の上半身に顔を埋めた。


温もりがダイレクトに伝わる。



「うっ……うわぁあぁあん!!」



声を上げて泣いた。


燿爛の服が濡れる。



「おやおや……」



彼女の困った顔が容易に浮かんだ。


亀裂が入った硝子がらすの入れ物は壊れた。


眠くなる。



「おやすみ、ワスプ」



ゆったりとした優しい声が耳に入る。


全身の力が抜けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「燿!どこ行ってた……ってなんで濡れてんの!?」



私を上から下まで見た杉は、目を丸くする。



「ワスプに会ってきただけだよ」



「全く……副隊長の自覚もってよ」



頬を膨らませる。


まるでハムスターだ。


その姿に思わずクスッと笑ってしまう。



「はいはい。ところでさ、ミツバとカルミア、トゥーリってもうすぐ帰ってくる?」



首を傾げて彼に聞く。


いけイケ我らが大地の王様は現在6人。


仕事の関係で彼らは今、〝人間の街〟にいる。



「確か……明日の午前中だった気がするけど……」



「そっか。ありがと」



給湯室には冷蔵庫がある。


名前を書いていないやつは、誰でも飲み食いしてオーケー。


9個皿に乗ったドーナツを手に取り、机に置いた。


これは私が買ってきたやつ。



「おたべおたべ〜」



「あっうん!」



杉はポンデリングを手に取り、口に頬張った。


美味しそうな声を漏らす。


私もチョコレートがかかったドーナツを口に入れる。


あっっっっまい。


水でリセットしないと頭が糖分過多になってしまうだろう。



「何デも屋は今、魔族の宝物庫に向かってるんだって」



「それがどうしたの?」



スマホである記事を見せる。


それはまだ誰も話題にしていない物だ。



「……これって」



「やばいよねぇ」



その記事には動画が添付されていた。


得体の知れない。


この世の者とは思えない容姿と悲鳴に、体を震わせた。


人のようで人ではない。


合成のように見える。


けれど違う。


それは有り得ないアングルが決定づけていた。

番外編で彼らの過去を深堀しようか考えてます。


良ければ評価やコメントをお願いしますm(_ _)m


【おまけ】


〝○○しないと出られない部屋に閉じ込められた燿爛とワスプ〟


「チューしないと出られない部屋だってさ」


「しないからな」


「でも出られないんだよ?」


「嫌だ」


「これって唇以外でもいい感じかな?」


「だからやらないって」


「ちょって手を貸してくれたまえ」


「はぁっ!?ってちょっ!?」


ーガチャ


「あっ開いた。……顔真っ赤」


「うるさい……」


「照れてる〜」


「うるさい!!」

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