劇薬コンビ
遅い。
いくらなんでも遅すぎる。
壁に掛けられた時計は午前11時ピッタリ。
彼女は9時ぐらいに到着すると言ってから、約2時間。
またあの方向音痴を発動しているのだろうか。
今日に限って2人は本社での会議があるらしいから、いない。
必然的に僕が迎えに行かないとダメか……。
重たい腰を上げ、ドアノブに手をかける瞬間。
「ひゃあっ!?」
「うわっ!」
よろけた足に力をいれる。
何とか転ばずに済んだみたいだ。
彼女の体を起こす。
「久しぶり。スコー」
「お久しぶりです!なー君!!」
興奮気味なスコーは目をキラキラと輝かせていた。
「あれ?セー君とフー君は?」
「あいつらか?今はいねぇよ」
「そっかそっか!」
ニコニコと明るい笑みを浮かべるスコー。
「早速で悪いんだけどさ。ここがどんな場所かは知ってるよね?」
「うん!色んな依頼をこなすんでしょ?」
自信満々に喋る彼女は昔と変わらなかった。
「確か……スノードロップ採用試験に合格しないといけないんだよね?」
不安そうな表情の彼女と、僕の頭の中の話がイマイチあっていない気がする。
確認するように、口を開いた。
「なぁスコー。もう受かってるけど?」
そう言うと彼女は目をこれでもかと見開いた。
「えっ……えっなんで!?」
スコーの様子は、昔の自分を思い出させる。
「まぁ驚くよなぁ……僕もそうだったしね」
「待って待って!?えっと、えっんっんー?……混乱してきちゃった……」
「あっははは!やっぱり変わんねぇな。……さぁてと。どっから説明するかぁ」
固まってくる体に制裁を加える。
と言っても、大きく伸びをしただけなんだけでも。
「まず、チームとパーティーの2種類がある。チームはこの、スノードロップ内部にいる奴から構成されてる。で、パーティーは外部にいる奴からの構成だな」
「じゃあ、あたし達はパーティーなんだね!」
「そうそう。パーティーの場合、リーダー……セインの決定が絶対。アイツが〝何デも屋〟に入っていいって言ったら仲間だし、駄目って言ったら自力で頑張るしかない」
「はぇ……」
ゆで卵が入りそうなぐらい、口の中が見えている。
誰かを騙すのは無理そうだな。
確か……フレアは自力で入ったって言ってたな。
まぁセインはツンデレだから仕方ないか。
無表情のまま、話を続ける。
「ここは、カラーバンド試験って言うやつがあるんだけど……やっぱりまだいいかな」
「えぇっ!?気になるんだけど!!」
頬を膨らませる姿はまるでハムスターだ。
そういえば……。
ソファに腰をかけ、彼女にも座るように促す。
「気分はどうだ?」
スコーは最初、訳が分からないという顔をしたが、頭を振って「うん!」と答えた。
スコーは色彩感知能力が高い。
例えば、目の前に全く同じりんごがあるとする。
それが「何色か?」と聞かれたら、僕は「赤」と答えるだろう。
彼女は違う。
片方がピンクがかった赤と答え、もう片方はオレンジがかった赤と答える。
同じ色でも全く違う。
丸い色の着いた眼鏡をグイッとあげる。
「気分悪くなったら言えよ」
ぶっきらぼうに言って、クッキー缶を取りに行く。
「うん!ありがとう!」
振り返るとスコーはニコニコ笑っていた。
鼻で笑って、棚を開ける。
そこには山のようにお菓子があった。
誰がこの量を食べるのか。
アイツしかいないな。
「あっなー君。すーちゃんは見つかった?」
体が硬直する。
極めて明るい口調と声で返事をした。
「んー……まだだよ。でも見つかるから」
「そうだよね!うん!」
首が取れそうなぐらいに頷くスコーは、さっきとは様子がおかしい。
「何で、ここに来たの?」
ペットボトルに入っている緑茶を注ぐ。
カチカチと時計の針がうるさかった。
「久しぶりに会いたかったのもあるけど……」
そこまで言って黙り込む。
フレアがここに入ったのは9割方セインだろう。
っていうかレイラとセインなんで別々何だよ、分かりにくいんだよ、クソがっ。
そういやアイツはなんで入ったんだろう。
どうでもいいことを、ポコポコと出しながら回答を待つ。
顔に出てしまっていたのだろうか。
スコーが心配そうな顔で覗き込んできた。
「なー君?大丈夫?」
「えっあぁ……うん。大丈夫。大したことじゃないから」
顔を上げ、笑顔を作った。
彼女は色つき眼鏡を外し、僕はじっくり観察される。
流石に恥ずかしい。
「良かった……。〝偽物〟じゃない……」
その言葉が脳裏に引っかかった。
伏せ目がちに見上げる。
「〝偽物〟って?」
問い返すと、頭についた角張った角がキラキラと輝いた。
「あぁ……実はここに来るまでにトラブルがあったんだけど……」
1番重要な内容をボソボソと喋るスコーに、クッキーを投げる。
彼女は犬がフリスビーを咥えるみたいに、口でキャッチした。
「行儀悪い」
「クッキー投げる方が行儀悪いよ!」
「で、続きは?」
「……なー君とそっくりそのままの人が居たの。あっ!色がね!全然違うから直ぐに分かったんだけど……危ないことをしているみたい……なんだよね?」
「危ないこと?」
首に爪を立てて掻く。
「ごめん。そこまでは分からない」
長めのスカートを握る。
クシャッとなった布は震えていた。
「どこで起こった?」
「あたしの故郷!」
「魔族の宝物庫か……。うん、後はフレアに聞いて」
「えっ!責任放棄!」
「僕にはそこまでの責任を与えられていない」
そう言うと、また頬を膨らませた。
探し続けている〝すおー〟を思い出す。
あの子も彼女みたいに感情が豊かだった。
心が不安定になるのは何でだろう。
絶対見つからない答えを空に浮かべながら、ソファに身体を吸い込ませる。
「あっ」
思い出したように喉を震わせる。
「何でここに来たの?」
「えっ!?……え〜っと〝居場所〟を見つけるため?」
「……居場所?」
問いを返すと、スコーは気まずそうな顔をする。
…………。
……………………。
「僕は自分が1番カッコイイと思ってる」
辺りに静寂が訪れた。
彼女のもぐもぐする音が響く。
クッキー好きかよ。
気づけば、缶の中は空に近かった。
事務所にクッキーが増えそうだな。
「あっあたしも自分が1番可愛いと思ってるよ!」
「別に張り合うつもりは無いんだけど」
「そうなの!?」
いちいちリアクションがデカイな。
全く減っていなかった緑茶を飲む。
確か妖怪の学校が作ってるんだっけな。
飲むと随分ぬるくなっていた。
ここでセインがいたら、冷たくなったんだろうか。
そんなことを思いながら、声を出す。
「セインとスコーって似てるよな」
「どこら辺がですか?」
首を右に向ける。
僕は反対側に向けた。
「〝自分を隠しちゃうところ〟」
謎だけばらまいて放置してますが、回収しますので大丈夫だと信じたいです。
良ければ評価やコメントを宜しくお願いします( * . .)"
【突然質問コーナー・・・・・・今回はブラッドでお送り致します】
今回のお題↓
「刑期が終わったら何をしたいですか?」
〜トラッシュ〜
「僕らが外にでてもいいのかな……。でも、もし出来たなら、皆でどこかに行きたいね。その時は何デも屋の彼らにいい場所を聞いてみようかな」
〜リムーヴァル〜
「自分は……トラッシュと一緒に絵を描きたいかも。昔から2人でよく地面に描いてたんだ。彼の絵は大体風景がなんだけど、本物そっくりなんだよね」
〜フール〜
「ん〜杉の家族に会いたい。なんか妹ちゃんがめっちゃ可愛いらしいんだよね〜。あたしとどっちが可愛いのか知りたいな♡」
〜フォールス〜
「まず、棗ってやつに会いたい。ここに連れてこられた後、桃ちゃんに会ったんだ。その桃ちゃんに今までの経緯を説明されて……反論できないままどこかに行ったからな」
〜檜〜
「…………。なんで……中途半端に生きちゃったんだろう。早く死ねばいいのに。えっ杉、何でここに……これ作ってくれたのか。……ふふっありがとな。兄ちゃん……まだ生きなきゃいけないな」




