表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/68

使い道

「失礼しますっ!」



言い終わるか、終わらないかぐらいでスライド式の扉をバンっと開けた。


優傑僾ゆうけつほのかは手術台で寝ている。


というより麻酔が切れていないと言った方が正しいだろう。


苦虫を噛み潰したような表情の亡故なこさんと、口元を抑えて嫌な顔をするセイン。


目が合った。



「彼女は私より酷くないよ」



「……そうか」



長い沈黙が訪れる。


次に口を開けたのは亡故さんだった。



「ゼウスに報告しなきゃなんだけど……君のは特例だったからね。今回もそうなるか、ならないか……」



「あの、話を遮るようでなんですが……なんの話しを?」



遠慮がちに言うと、医者は真面目な顔付きで語りかけた。



「蟲駆除隊との依頼は覚えてるかな?」



「あっはい」



蟲駆除隊と言えば、上半身と下半身が別々の種族で産まれてくるイレギュラー個体。


彼らの間ではXエックスと呼ばれている。


それを放置しておくと、被害が出るため駆除しなければならないのだ。


……まさか。



「人工的に作られた生命体は見つけ次第殺処分される決まりだ」



「順当にいけば、彼女はこの世に痕跡を残すことなく消えるだろうね」



いつの間にか付けたガスマスクによって、目元以外の情報が無くなる。


まぁ目元しか見えなくても感情が豊かだから分かりやすいけど。


今は…………。



「全て判断するのはゼウスだ……セイン的にはどう思う」



「私みたいに首輪付けといたらって簡単に言いたいけどさぁ〜……正直言ってほのかちゃんに利用価値があるとはあんまり思えない」



「もの凄く話ぶっ壊していい?」



圧倒的に「今じゃなきゃダメ?」みたいな顔をするが、ここから話についていけないのは困る。



「なんで僾……ちゃんって壁ん中に入ってたわけ?」



「モルペウスが持ってきたんだよ。アルバートは従順な犬が大好きだからね。それ以外はストレス発散に使われるんだよ」



言いながら胸元をさする。


僕をかばってセインは思い切り殴られていた。


血は出ていたっけな。


…………。



「利用価値はあるだろ」



「まぁあるっちゃあるよね」



どっちだよ。


脳内でツッコミをしつつ、優しく頭を撫でている彼を捉えた。



「アルバートはまたセインみたいなの作ってたんだろ?それはなんでだ?」



「全知全能の神を殺すため。でもそれにしては、どうもおかしい。作られたのは人間だからね。私みたいにキメラじゃない」



「新しい兵器を作るためとか……。彼女を傷つけた瞬間なんやかんや起こる的な」



不意に亡故さんが声を出した。


試験管に入った澄み切った青色の液体をゆらめかす。


新しい兵器……。



「まっとりあえずゼウス様に交渉してみるよ。期待はしすぎないでね。神様は命を軽く見すぎてるからさ」


利用価値とか言っていたが、本当はただ救いたいだけなんだろうな。


まだ眠っている少女のひたいを軽く撫でて、外に出るよう促した。


それに従って外に脚を運ばせる。


頭が痛い。


色んなことが巡りすぎていて。


そんなことを考えていると、セインがふわりと振り返った。



「棗」



「何だ」



「ありがとうね」



「……はいはい」



それだけ言って、軽い足取りで廊下を跳ねる彼にドンドン置いていかれる。


真似してやろうかと思ったが、余計に頭が痛くなりそうだったので止めた。


遠くから赤髪の気に食わないエルフが走ってくる。



「セイン様ー!!!結婚してくださーい!」



「ことわーる!」



聞き慣れた会話が耳に入る。


これでもう何回目の求婚なんだろうか。


セインが本当のことを言って、コイツが受け入れなきゃ終わらないんだろうな。


極めて他人事な思い。


まだ未完成な何デも屋が揃った。



「今日は帰ったらタコパしたいなぁ〜」



「器具ありましたっけ?」



「無いから買わないと」



「どうせするなら闇鍋形式にしようぜ」



ニヤッと意地悪く口角を上げる。


それにセインもニヤッと目元を上げた。


フレアだけが若干嫌そうな顔をして。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「目隠しおっけー!」



「鼻栓オッケー」



「耳栓おっけー……」



正直意味があるかないかは分からない。


が、中身が分かってしまっては「何が当たるか分からない」ドキドキ感が薄まってしまうだろう。


記憶力のいいセインは目を。


鼻のいいフレアは鼻を。


耳がいい僕は耳を塞いだ。


氷で形を作られたルイとロイが具材を投入していく。


2人とも目は開いてるから、セインが可哀想だなぁとか思っていたのに。


前言撤回ぜんげんてっかい


あまりにも入れるのが速すぎて、何が入ったか分からない。


買った具材はたこ、チョコレート、チーズ、餅、唐辛子とうがらし、ドリンク系のグミ、わさび。


そいつらが入った たこ焼きをフレアが職人みたいな手つきで丸めていく。



「セイン、もう目隠しいいぞ」



「とってとって〜」



固く結ばれていた部分を丁寧にほどく。


急に光が目に入ったせいか、しばらく目を閉じたままだった。


何分か経ったあと、脳天気な彼が爪楊枝つまようじ生地きじを刺す。


そして口に放り込んだ。


僕らも習って、口に運ぶ。


すると、気に食わないやつの顔色が変わった。



「フレア当たりだね」



「いい気味いい気味」



チョコレートの風味が口腔こうくう内に広がる。


エルフは辛いものが苦手だ。


割れたやつを見るに中身は唐辛子のようだった。


神はノーマルのやつ。


…………あれ。



「なぁセイン」



「ん?」



チューっとストローでいちごミルクを吸っている。



「海の神様って海洋生物食べていいわけ?」



「別に魚類の神じゃないし……それにその神だって嫌いじゃない限り食べるよ」



「へぇ」



意外な事実。


というか前にも聞いたことがある気がする。



「じゃあ2つ目〜」



緩い声と共に3人同時に針を入れる。


と同時に激しく咳き込んでしまった。



「かっっら!」



木が描かれたマグカップを口につける。



「ほんとだ辛い」



そう言うセインは特に何も考えては居ないだろう。


僕も辛いのは得意方だが、これは度を越している。


明らかな入れすぎ。


下に向けていた顔を上げると、神妙な顔をするフレア。



「お前何食ったの」



「妙に甘いというかなんと言うか……微妙……」



「多分グミかな。棗あーん」



「あー……」



視線が痛い。


こういう時セインは無意識なのか意識してやってるのか分からない。


が、きっと無意識なんだろう。


それを分かってるから奴は何も言わない。


ただ不満気な気持ちを全面にさらけだして。



「価値……」



「僕は金以外の価値は知らないな」



「?何の話ですか」



僕はゼウス様がどんな神かは知らない。


ウジウジした背中に平手打ちをする。



「頑張れよ」



「……うん」



「だから何の話ですか!」



その後、2人して辛さにもだえながら今日を終えた。

ブラッド編終わりました〜!当初の予定よりだいぶん延期してしまいましたね……。木曜投稿は7月、8月ぐらいになるのかなぁとかなんとか。死ぬまでには完結させます絶対!


良ければ評価やコメント、ブクマをお願いしますm(_ _)


【おまけ】

『ゼウスとお話するセイン』


「話は聞いているよセイン」


「……そうですか」


「話してごらん」


「…………優傑僾ゆうけつほのかの件で……その」


「生かして欲しい……そうだね?」


「はい……あの……責任は!私が取りますからっ!!」


「いいよ。責任はセインじゃなくてアイツに取らせる。これを持っていきなさい」


「えっいいんですか!?」


「セインの頼みならなんでも叶えてあげるよ」


「…………ありがとうございます。あの、ゼウス様」


「なんだい?」


セインはゼウスに抱きつく。


「私と家族になってくれて……ありがとうございます」


そう言って特殊なチョーカーを手に彼は元の場所に帰って行った。


「……やっぱり子供はいいなぁ…………」


「この親バカが」


シグナは小さくそう呟いた。


「なんだい?君も頼み事かい?」


「あいつが心配だから来ただけだ」


「妹思いだねぇ」


2人はクスリと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ