お喋りしましょ
セイン=ポドリファはスノードロップ内で結構高い地位にいる。
なんでも〝四天王〟とかなんとか。
前に漫画で「やつは四天王の中では最弱」とかお決まりセリフ的なものを思い出したが、彼はそれを言う方になるんだろう。
藍の皇帝。
普段ならフレアが付き添っているのだが、今日は僕が付き添っている。
それは僕がセインの秘密を知っているから。
「失礼します」
凛とした声が耳に響く。
中から籠った声がした後に、扉を開けた。
「皆の様子はどうだったかな♪︎」
「重軽傷者、いずれも命に別状はありません」
普段の何を考えているか分からない感じとは全く違う。
簡単に言えば別人のようだ。
「さっ、始めようか♪︎今回の議題はブラッドだね♪︎」
机に資料が置かれている。
その1つに手を伸ばした。
ブラッド内のメンバーの名前がずらりと並んでいる。
「まず、今回の事件は君たちとも関わりがある〝アルバート〟が主導者だろう♪︎」
「そっすね」
適当に返事をする。
エンプティが話していた中規模捜査班。
「そしてブラッドという名前も、彼らのあるものに関わっている。棗ちゃん♪︎」
「……血液ですね。エンプティによると僕らと彼女以外、皆血が青いんだと」
「その成分は毒だった。キロネックスっていう海月のね」
1人だけ優雅に椅子に腰掛けている。
「キロネックスって?」
問うと、瞳孔のない瞳がこちらを向く。
「平行世界ではオーストラリアンバチクラゲとも呼ばれている、極めて危険性の高い海月だ。エルフ語だったら……海の雀蜂とか」
「ふーん」
クスッと妖艶な笑みを浮かべ、
「キロネックスの凄いところは、毒性の高さだよ」
そうハッキリ言った。
「毒性?」
「あぁ。毒素は心臓や神経系、皮膚細胞に影響を与える。症状としては刺傷箇所の壊死や視力低下に呼吸困難、最悪心停止と言ったところかな」
サラサラと流れ出す言葉に、物騒すぎる単語が当たりを飛び跳ねる。
やっべぇじゃん。
……ん?
「でもクラゲって言ったら刺すだろ?なんか色々とおかしくないか?」
「これを聞いてもらったら、問題は解決するかな♪︎」
シグナは真っ黒なボールペンをクルクルと回した。
あれは潜入調査をする前に、放り投げられたものだ。
〝君なら分かるだろう〟って。
まぁ本当にそうなんだけど。
パソコンの音量がMAXに上げられて、カチッといい音が鼓膜をくすぐる。
燿爛とリバティ……圞の会話。
「ねぇねぇリバティリバティ」
「…………何だ」
「くらげってさぁ、刺すじゃん?血なんかに混ぜ込んでも意味なんかあるの?」
もっともな質問に意識が傾く。
「体外に出た瞬間、固まるんだ」
「固まる?」
「あぁ……結晶化と言うのか?あまり理科には詳しくない」
「分かるなぁ。何言ってるか分かんないし」
ハハッと楽しげな笑い声。
シグナがパソコンの再生ボタンを押して、一時停止させる。
「その結晶化した血が相手を刺して毒が回るってことか…………わざわざそんな事しなくても、針とか使えば」
「そんな事をするなら私は作られてないよ」
不貞腐れたような顔で言い放つ。
アルバートは変なやつだ。
何かとおかしなことをしたがる。
「ちょっと博士の話でもする?」
「いいのか」
「別に。シーちゃんもまだ、知らないことはあるでしょ」
不敵に微笑むセインに対して、シグナは神妙な顔つきで彼を捉える。
僕にはイマイチこの2人の関係性が分からない。
ただの上層部同士では無い気がする。
「アルバートの前に1つ聞いてもいいか?」
「なぁに?」
喉から込み上げる、緊張を抑えて口を開いた。
「二人の関係性ってなんなんだ?」
「家族だけど」
「えっ」
あっさりとした回答に理解が追いつかない。
それを察したように、セインは軽々と足を組みかえた。
「皆であの空間を逃げ出した時に辿り着いた場所はバラバラだった」
少し息を吸うフリをして話を続ける。
「私が目覚めた場所は裏路地のゴミだめでさぁ……まぁ何回も殴っては蹴られた後に知らないマフィアに連れていかれたよ。あの時も今もだけど、成長しきるよりも都合がいいからね」
「…………」
シグナの顔が曇りに曇る。
「そこからは依頼された誰かを殺し続ける日々。出来損ないに食わせる飯はなかったよ」
「結論」
あっと思考を巡らせる間に手を唇に当てた。
つい考えていたことが口を突いて出る。
それに彼は柔らかく微笑む。
「……まぁ仕事でヘマをして捕まった。そしてシーちゃんが私にふっかぁ〜い愛情に助けて貰ったって感じ!」
ヘラヘラと笑う彼はどっちで話しているのか。
いや、セインはこんなにお喋りが好きじゃないからレイラか。
あんまりセインには会ってないな。
クソ生意気に口論していたのが懐かしく思えてくる。
「あんまりダラダラ話してると、気が滅入る」
「そうだねぇ……」
誰よりも権力を持つ彼は寂しい眼差しを指に向けていた。
「棗、どうしてアルバートは血液を結晶化させたんだと思う?」
「さぁ」
「私の真似をしたんだ」
「どういうことかな?セイン」
記憶の神が流石に音符がなかった。
首を傾げて不気味に笑う。
「私は器用だから、こ〜んな小さな氷を耳や鼻、口から入れて内部で大きな塊にする。そいつは棘となって内臓に重く突き刺さる」
その辺の小さな石と同じぐらいの大きさを、掌で跳ねさせた。
パキッと氷が粒子状になって、床に舞い落ちる。
「誰か見てるのかもねぇ…」
不穏な空気が漂い初めた瞬間、着信が鳴る。
目覚まし時計っぽいなと思った。
「もしもし〜♪︎あっなーちゃん?……今?……うん……分かった、スピーカーにするね」
ピッと音が響き、なんのカバーも付けられていないスマホが机に置かれた。
「優傑僾の件だけど、セインの見立て通り心臓病なんかじゃなかった」
あの子、心臓病だったんだ。
いや、違うのか。
眠った姿しか見たことないから あんまり知らないけど。
ってか報連相。
怒涛の内心ツッコミは止まらなかったが、話は続いている。
「彼女はセインと同じだ」
その言葉に全身の毛が逆だったかのような感覚に襲われた。
バンっと海と氷の神は部屋を出て行く。
残されたのは僕とスノードロップを纏める重役だ。
「シグナさん。セインのことどこまで?」
「君と同じ知識量かな」
彼はアルバートのお気に入り。
アルバートはゼウスに次ぐ神様を作ろうとした。
そして出来上がった。
人工的に作られた神様が。
彼女も同じだということは、そういうことだ。
「アイツのとこに行ってきます」
「頼んだよ」
急ぎ足で、廊下へと出る。
大丈夫かな。
早まる心臓をどうにかして押さえながら、何を話そうか頭に血を巡らせた。
他の媒体で名前が同じキャラが出てくると、どうしてだか親近感が湧いてしまいます。あと、この作品2つ名多いですよね。大体後から出てきた名前は忘れてしまいます。覚えなきゃ。
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【おまけ】
『セインが来るまでの棗とシグナの会話』
「シグナさんって、何で小説とか嫌いなんですか?」
「えっ……まぁ記憶の神様だからね♪︎本を手に取った瞬間、内容が全部分かっちゃうんだよ。だから面白くないんだよねぇ……」
「へぇ〜……本代かからなくっていいっすね」
「いや、感覚的に『これ面白そう〜』って言ったら『あぁそれ犯人○○だよ』ってやられてるようなもんだよ」
「なるほど」
「そういう棗ちゃんは意外と買うよね」
「金があるのに、使わなくてどうするんですか」
「……腐ってないね」
「腐るまでのことがないですからね」




