大事な後輩
灯灸燿爛視点
危うく死ぬかと思ったぁ~。
そんな呑気な事を浮かべながら、適当に角を曲がる。
彼に体力は無さそうに見えたから、結構走ってみたけれども……。
どうやら勘違いだったようだ。
なんなら私の方が疲れてきた。
足が縺れかける。
しっかし流石に魔術師だけでは倒すことは出来ない。
相手がよっぽどの馬鹿なら出来なくはないが。
早いところジンを見つけて、協力してもらおう。
でも、このまま倒してもいいだろうか。
不意にそう思い、スマホを見る。
目に映った情報に息を呑んだ。
振り向きざまに止まる。
フォールスも驚いて止まった。
「いやぁ~怖いねぇ。疲れ知らずって」
「何だ急に」
すこぶる嫌そうな顔をする。
さっきまでは頭になかった考えが、急に現れた。
ただ、これなら激しく殺り合わなくて済むし、セインくんの言いつけも守れるし。
まさに一石二鳥だ。
そう思い、口を開ける。
「フールちゃんは、うちの後輩に倒されたらしいよ」
「なっ!?」
ここまではすこぶる良くない。
「コプス」
私を睨みつけている彼に魔術書のあるページを見せつけた。
瞬間、フォールスの体が膝から崩れ落ちる。
何の会話をしているかは分からない。
が、目の前の魔族の表情は少しスッキリとしていた。
忠実な犬。
仲間を誰よりも思う気持ち。
言葉の1つ1つに一喜一憂しやすい単純さ。
こういった性格は味方につけると使いやすく、敵にいると面倒臭い。
目が合う。
「私たちは別に殺すつもりは無い。協力してくれたら新しい居場所をあげるかも」
「………………何をしたらいい?」
「おっ、いいねいいねぇ~。じゃあ一緒に檜を止めに行こうか」
「分かったが、なぁさっきから続いているこの地響きって……」
「檜だよ」
そう言って、業務用のスマホを見せる。
映されているのは敷地内のマップ。
そこには今いる全員の位置情報に、誰が何をしているのかといった監視映像もあった。
「いつの間に……」
「業務以外で使用してないから安心してよ。流石にお縄にはなりたくないしね」
ケラケラと笑うと、フォールスは何とも言えない表情をした。
感情を読み取りやすいのは助かる。
地響きのせいで画面を触る指が震えた。
どうやらこっちに向かってきているらしい。
先輩として、これは助けないといけないなぁ。
「私は基本的にサポートした出来ないから、ちゃんと守ってね」
「……分かった。小生は援護の方がいいか?」
「そうだね。さっお出ましみたいだよ~」
2人して目線を左に向けると、彼は元の姿からは似ても似つかない姿になっていた。
あらゆる箇所が膨張し、息が苦しそうだ。
早めに決着をつけないと、死亡する確率が高いだろう。
魔術書を開く。
「シュタルク」
攻撃力を上げる魔術。
ジンが土の壁を作り、檜の背後に周り、肥大化した腕を切りつける。
ドロっとした血液が流れ出し、嫌な臭いが鼻につく。
耳が壊れるぐらいの悲鳴をあげ暴れまわった。
壁がどんどん崩壊する。
「2人とも、一旦外に逃げるぞ!」
ジンの掛け声と共に、地上へと目指す。
崩れかけている地面は走りにくかった。
というかさっきから走っていたせいで、体力が無くなってくる。
2人がどんどん遠くなっていく。
息をするのがしんどい。
何とか動いていた足は次第に動かなくなる。
「あっ」
ードサッ
転ける瞬間がスローモーションになった気がした。
立ち上がろうとするが、足が棒のように動かない。
自分の姿が暗くなる。
踏み潰されるのか。
魔術書は転けた拍子で、手からは無くなっている。
「…………」
死ぬ時はやっぱり怖いな。
首元にかけたロケットペンダントは、チェーンが外れ、遠くへと姿を現していた。
ぎゅっと固く目を瞑る。
「リーニュ」
その瞬間、耳を劈く叫び声が聞こえる。
思わず目を開けると、そこにはフォールスがいた。
「貴女が死んだら後味悪いですからね」
ぶっきらぼうに言いのけて、まるで米を担ぐようにして肩に乗せられた。
「もっとカッコよく出来ないの~?」
「置いていきますよ」
「ごめんって」
フォールスに冗談は通じないみたいだ。
動かない足の代わりに、手に力を込め服をぎゅっと握った。
久しぶりに誰かに抱えあげられたな。
さっきよりも速いスピードで駆けていく。
服の上からは分からなかった体格の良さがはっきりと分かる。
「鍛えてるんだ」
「今は必要ないでしょう」
「それもそうだね」
そこからは一言も会話はなく。
ジンが開けた、暗闇が差す穴を抜けた。
近くにフールと杉がいる。
「燿爛っ!!!」
「杉!危ないから下がってろ!!」
「でもっ!」
「先輩命令だっっ!!!!!」
カラカラの喉を潰す勢いで、そう叫んだ。
それでもまだ渋る2人を何かが暗闇へと引きづりこんだ。
「こらこら、ちゃんと命令には従わないと」
「セッ……レイラさん」
「君らは指示無しじゃ動けないんだからさぁ~。取り敢えず、私達は本社に戻るから頑張ってねぇ~♪」
「えっあっちょっ!?死なないでよーっ!!!」
フールが大声で叫ぶのが聞こえた。
「ゲホッゴホッけほっ」
応答しようとしたが、もう声は出ない。
「喋らないでください。休むだけでいいですから」
「まだ……やらな……く」
「どうして諦めが悪いんですか」
キレ気味に言う彼に未だに担がれたままだ。
暴れる檜から繰り出される攻撃を、少し余裕そうに交わすジン。
振り向く神と目が合う。
その目は酷く冷たかった。
「…………フォー……ルスッ」
「なんだ」
「こ……れ……」
最後の言葉はほとんど声にならなかった。
力を振り絞り彼の手に1枚の紙を乗せる。
「御札か、これ?」
「ん……はっでぇ……ゲホッゴホッ」
喉が痛い。
足が痛い。
こりゃ終わったら地獄だなぁ。
私から札を受け取ったフォールスは、檜の攻撃が当たらなさそうな場所まで運んでくれた。
やっぱり良い奴ではあるんだよなぁ。
なんてことを思いながら、動く上半身で2人を見る。
ジンはフォールスが動きやすいように、檜を足止めしていて流石だなと思った。
確か……。
なんだっけな。
急に眠たくなってきた。
目を擦ると、眠気を覚ますぐらいの悲鳴が聞こえる。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
赤い液体が飛び散る。
膨れに膨れ上がった皮膚が、破裂したのだ。
死んではないだろうか。
置かれた拍子に「動くな」と言われたが、言いつけを守ってる暇はなかった。
あの子が言ってたんだ。
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「実は、おら、兄妹なんです」
「えっそうなのかい?」
「はい。妹は病気がちだったんですが……今では治ってます」
「へぇ〜じゃあ杉がお兄ちゃん?」
「いえ、上にも兄がいるんです」
悲しそうに顔を俯かせた。
「杉は確か……誰かを探すためにココに入ったんだっけ」
こくりと頷く。
「必ず見つけて……また3人で暮らします」
ニコリと笑う彼を見ると、心臓が痛かった。
そう言って入所した私は、大切な人を失ったから。
だから決めた。
私が先に見つけたら、助けようって。
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重たい足を上げ、地を蹴った。
「ジンッ!フォールスッ!」
「燿爛!?おとなしく」
「檜はっ!!!」
目に映る光景は信じたくなかったが、希望は薄いながらまだある。
身体中に血が飛び散り、息も絶え絶えだ。
「檜!?生きてるか!?」
「よう……らん……無理だろ。そいつはもう」
「まだ生きてるっ!!!」
性格に似合わず声を荒らげる。
今ならまだ、先生のところに持って行ければ助かるはず。
「フォールスくん!燿爛を頼む!」
「はいはい……」
呆れながらも、また米俵のように担がれその場をあとにする。
薄れゆく意識の中、ボタボタと血の道が見えた。
たまに燿爛の漢字が耀だったりしてますが、間違ってます。見つけた場合は、報告頼みますね。そうじゃないと私、燿爛に何されるか分かりませ
良ければ評価やコメントの方をよろしくお願いします(ノ_ _)ノ
【Happybirthday 8/31 鉱鉛】
〝蟲駆除隊が結成する前の話〟
「はっぴーばーすでー鉛」
「…………痲琥様」
「今日で確か1……5歳だっけ?」
「そうですけど」
「あんまり嬉しそうじゃないね」
「誕生日を祝うメリットってなんですか」
「メリット?ないよ。それがなにか?」
「嫌……別に。おれの親は祝ってくれたこと無かったですから」
「そっか。2人とも教師なんだっけ」
「母が大学、父が高校教師です」
「なるほどねぇ。僕とはまるで違う」
「どんな両親ですか?」
「2人とも冒険家だよ。昔は色んなところに行った」
「…………いいなぁ…………」
「……………………決めた」
「?何がですか?」
「今日の誕生日プレゼントは遅くなるけどいい?」
「別にいいですけど……何するつもりですか」
「仲間を集める。そして色んな場所に行く」
「あの人たちみたいですね」
「そうかもね。まぁ僕も最近はしてないから、丁度いい」
「意外と楽観的ですよね」
「神様は死なないからね」
「そうですか」
「じゃあ楽しみにしてて」
「はいっ」




