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11485

バク転を1回。


最近はこんな動きをしてなかったから、体がなまっている気がする。


その間に斬撃ざんげきが飛ぶ。


避けて、避けて。


サフランとの距離は開くばかり。



「もっと近づいてよスーイさんっ!」



恍惚こうこつとした笑みを浮かべて、金色のナイフ…針を振り回す。


東の方で伝わっている武器だったはずだ。


床を蹴り、首を狙う。


正直ロボット相手に生命体の技が通じるとは思えない。



「わっ」



サフランの体が真横に吹っ飛ぶ。


首は有り得ない方向に曲がっていたが、何事も無かったかのように元には戻った。


いや。


正確に言うと人形のように首がぐるりと回転した。


ロボットではありえない。


だってロボットは人間に近いように作られているのだから。



「ねぇスーイさん。君は……どうやって殺されたい?」



不気味に笑みを浮かべ、破れた服を脱ぎ捨てる。


隠されていた部分が剥き出しになったことによって、より殺しやすくなった。


けれどもプレザントの話が本当ならば……。


オブサーヴ。


首を振る。


忘れよう。


後から考えよう。


立ち上がった彼を見据えて、腕を振りかざす。


鋭くとがった爪は壁を引っ掻いた。


太腿ふとももに電撃の様な痛みが走る。



「ゔっ」



直ぐに飛びすさり、鮮血が流れる足を抑える。



「ねぇ痛い?痛い?」



「全く痛くねぇよ」



強がるものの、声は震えている。


サフランは一瞬驚き、直ぐにニヤッと笑った。



「そっかそっか!うん!スーイさんの殺し方決めたよ!」



何歩か軽快に跳びながら下がり、ナイフをクルクルと回す。


彼は今までにない表情で口を開いた。



凌遅刑りょうちけいにしよう!」



舌なめずりをして、一気に距離を詰める。


恐怖が全身を支配するけど。


じぶんは……。


〝時間を稼げばいい〟


プレザントはじぶん達にこう言った。


1誘拐されている女の子がいるから、その子をエンプティっとリバティ。


プリヴェントが助けに行く。


2サフランがそっちに行かないように、じぶんが足止めをする。


いくら虎だからといっても限度はあった。


それに時間稼ぎだけでいいってどういうことだ。


素直に諦めるとは思えない。


脳は混乱するけど、身体はしっかり彼を投げ飛ばしていた。


攻撃は早いけど、受身は全く取れていない。


痛みを感じない。


それ故に壊れたとしても動けるからか。



「ちょっとぉ……投げ飛ばさないでよ……」



ゆっくりと立ち上がる。



「じゃあナイフ持つのやめろ、フェアじゃない」



「えぇ〜?でもナイフ持たないと戦力的にフェアじゃないんだけどぉ」



中のコードから火花が散っているのが見える。


もしかして。


サフランから距離を一気に離す。



「スーイさん?今更逃げるの?」



彼は。


今までに見たことない。


激怒をあらわにして。


ゴッ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「どっちだっけ!?」



「左だ!」



角を曲がると豪華な扉が半開きになっていた。


確か。


考えるよりも先に中に入る。


部屋はザ・レトロといった雰囲気でほこりの臭いはしない。


辺りを見渡し、隅っこでうずくまっている少女がいる。


プレザントちゃんが言っていた子だろう。


それにしてもスーイサイドは大丈夫だろうか。


致命傷になる怪我を負ってないといいんだけど。


不安を胸に抱えながら、少女に近づく。



「こんにちは。うらはエン……ラドゥルス=パーソン」



一瞬偽名を言うか迷った。


けれど……。


ブラッドはきっと今日で終わる。


なら偽名はいらない。


こんな怯えきった子に嘘なんか吐けない。



「我はらん。こっちはトゥーリ」



へぇ。


うらは初めて2人の名前を知った。


かれこれ3年は一緒にいるが、うらはスーイサイド以外の情報を知らない。


彼らもうら達を知らない。



「あの!あの!モルペウスは!」



弾かれたように叫ぶ。



「おっ落ち着いて!大丈夫!モルペウスくんは大丈夫だから!」



もちろん大丈夫な保証なんてない。


というかボスってモルペウスって言うんだ……。


今更な事実に少女を握る手が震える。



「プリ……トゥーリ達はトラッ……モルペウス様に頼まれて、助けに来ました!」



喉は全く動かない。


ほのかちゃんは、うらの手を握りしめる。


うらも強く握り返した。


少女を抱えて、乾いた舌を必死に動かす。



「急ごう」



2人も頷く。


少しきしむ床板を蹴り飛ばす。



「これ、どっちだっけ!?」



「右……避けろっ!」



体が後ろに引っ張られる。



「うわっ」



瞬間、天井が抜け落ちる。


危なかった……。



「ラドゥルス!トゥーリに変われ」



「あっうん!」



不安な少女の頭を撫でてから、木製人形に手渡す。


1度落としそうになったけれど、今度はしっかり掴む。


プレザントちゃんから聞いた事を思い出す。



『あのね、優傑僾ゆうけつほのかを長時間運動させちゃ駄目だからね』



『どうして?』



首を傾げる。


すると彼女の目は冷徹になった。



『彼女は心臓病でね。無酸素運動は避けた方がいい』



『無酸素運動?』



聞きなれない単語が鼓膜をつく。



『ん〜とね。人間は有酸素運動と無酸素運動ってのがあるんだけど……まぁ簡単に言うと全力疾走させちゃダメってこと』



『なるほど、なるほど……』



分かったような、分かっていないような……。


脳が理解するよりも先に夢の時間は終わってしまったけれど。


少女は怯えきっている。


うらに出来ること……。


走りながら思考を巡らす。


目が充血して、らんほのかちゃんが血管だけになって見える。


パッと顔を上げると、そこには誰かがいた。


トゥーリの袖を引っ張る。



「うわっ、ちょっエンプティ、な」



言い終わる前に人形の口を塞いだ。


誰だ。


恐怖感が天辺まで達しそうになった瞬間、それは姿を現した。



「ばぁっ!」



重たい前髪に、長いツインテール。


ゴシックロリータのような服をふんわりとなびかせて、ニコっと笑った。



「ここから先は瓦礫がれきが多いから怪我しないように気をつけてね」



「プレザントちゃんはどうしてここに?」



問うと、またニコッと笑った。


それは感情から来ているものではなく、強力な接着剤で張り付けたような笑顔だった。


うら達の間をすり抜ける。


手には華奢きゃしゃな体格に似合わない斧が握られていて。



「ここはもうすぐ崩れちゃうから、早くした方がいいよ。あっ目印はちゃんと付けといたから!」



まるで子供が親に「宿題やったよ」と言う感じで、最後に大きなハートマークを作って。


さっきまでいなかったはずの魑魅魍魎ちみもうりょうが一瞬にして消え失せた。


何が起こったのだろうか。


脳が処理するよりも速く。


出口へと駆けて行った。

ある作品に影響受けすぎ問題が発生してる気がします。

主に過去編とか……まだやってませんけど……多分すごく重たくなる。


良ければ評価やコメント、ブクマをお願いしますm(_ _)m


【おまけ】

『生前のリバティとプリヴェントとオブサーヴの会話』


「オブサーヴ」


「はい、リバティ様。何か用が」


「別に。呼んでみただけ」


「リバティ!プリヴェントの事は無視ですか!?」


「別に無視してないし。距離の問題だよ」


「まぁ確かにオブサーヴの方が遠いですけど」


「ふふっ」


「あっ笑った!」


「いやいや、なんというか……構ってちゃんというか」


「構ってちゃん……確かにそうかもね」


「へ!?」


「プリヴェント、メンヘラ化するのはいいけど仕事はちゃんとしてよね。この前だって」

「わー!!!しーらーなーいー」


「……プリヴェント…………」


(……こんな日がずっと続いたらいいのになぁ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【被検体11485の記録】

彼はとても精巧に出来た木製人形だ。まるで人のように喋り、動く。そして頭が良く忠誠心が高い。そんな彼はまさに実験にピッタリ!なので被検体11486と混ぜ合わせる事にしてみた。彼は酷く暴れた。暴れたからバットで殴った。それでも収まらない。今度は熱してみた。よく焼けた。悲鳴がうるさかったので猿轡さるぐつわを噛ませた。それでもまだうるさい。今度は白蟻を用意してみた。虫はよく働いてくれた。彼はようやく静かになった。実験は成功した。だが少し不安定な所があるので、よく監視しておく必要がある。

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