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夢の世界

まるで怒りの権化ごんげのようだなと漠然ばくぜん的に思った。


憎悪と何かを混ぜに混ぜ込んだ表情。


1つ目を閉じると、世界が変わる。


そこにはセイン様がいた。


いつも通りに息をしている。



「フレア」



ガスマスクをつけていないから、端正な顔立ちがはっきり分かる。


しばらく見ていると、彼の指が落ちた。


少しだけ苦痛に顔を歪める。


鮮血がしたたった。


全く趣味の悪い神様だ。


魔法で幻影を消し飛ばす。


また黒い世界に足を着く。



「君の好きな人がぐちゃぐちゃになってるのに、よく平気だね」



薄く笑う。


まるで小さい子がありを潰すみたいに。



「あれはセイン様じゃありませんから」



そう。


違うのだ。


約2cm鼻の高さが違っていたり、紙の長さが1cm長かったり、手の大きさガ、0.5cm違っていたり。


そもそもちゃんと呼吸していることすらおかしい。


随分ずいぶんと舐められているものだ。



おもにどこら辺が違うの?教えてよ」



猫なで声が鼓膜をおおう。



「偽物は偽物ですよ」



先端が鉱石で出来た木杖きづえを振る。


また世界が変わった。


鬱陶うっとうしいなぁ……。


今度もセイン様。


何本もの棒で貫かれている。


実際似たようなこともあったが……普通に引っこ抜いて振り回していた。


あまりこの言葉は使いたくないが、化け物だと思う。


まぁ彼の願いに沿うならいいか。


にしても……。


アイツはまだなのか。


焦りと苛立ちで、わずかに動作を誤る。



「君らしくないミスだね」



「失礼。焦りました」



今度は彼の右足が吹き飛んだ。


痛がる気配すら感じられない。


これも夢の世界だから。


だったらさっきの悲鳴はなんだ?


外部的な痛みじゃない。


内部的な痛みだとしたら。


……持久戦は本当に苦手だ。


昔を少しだけ思い出してしまうから。


また世界が変わる。


杖を向けようとして、止めた。


海水の匂いが鼻をくすぐる。



「やっほ〜♪調子どう?」



クスッと笑って、1歩。


また1歩と近づく。


心臓が跳ね上がる。



「レイラ様!」



「セインでいいよ。苦戦してる?」



「まぁ……お恥ずかしいですが」



頬が紅潮こうちょうしていく。


愛情が溢れて、どうしようもなくなりそうだ。



「じゃあ……ほいっ」



小さな体に包まれる。


この神はどれだけ、俺を翻弄ほんろうさせるのだろうか。



「セイン様」



「何?」



大きな瞳に自分が映る。



「セイン様は俺の事……好きですか?」



多分初めて聞いたと思う。


彼は1度離れて、考える素振りをしてから口を開いた。



「好きだよ。どういう意味かはまだ分からないけど」



「ごめん」と手で謝るポーズをする。


そこで夢は途切れた。



「っ……気持ち悪い…………」



口に手を当てるモルペウスは、今にも何かを吐き出しそうだ。


頭が妙にスッキリしている。



「ウェアプール」



小さな水の渦が空中にいくつも現れる。


ここは夢の世界。


なら俺にも干渉できるはず。


中から氷のゴーレムが姿を見せる。


少しだけ後ろに下がった。


大丈夫。


まだいける。


そう思ってロケットペンダントを握りしめた。



「夢はさ……楽しいものなんだよ……」



「俺に悪夢を見せたのはどこの誰ですか」



モルペウスの唇からはカラフルな液体が溢れだしている。


色の組み合わせが気持ち悪い。


しかも独特な臭いがする。


何日か立った肉と、新鮮な果物っぽい。


かと思えば今度はパンとカメムシのような……。


気持ち悪くなってきた。


ゴーレムの大きな腕が彼に振り落とされる。


瞬間、あたりは絵の具のパレットのようになってしまった。



「凄いねぇ……凄い凄い凄い!!!!!!」



高笑いが壁を押す気がした。


さっきバラバラになったはずの体は、綺麗さっぱり治っていた。


体からゲームにありそうな剣を取り出す。



「なーんか夢を見せる気なくなっちゃったからぁ………」



ウルフカットにした髪がふんわりとなびく。


肺に残る酸素が酷く重たい。


顔の真横に小型のナイフが、通り過ぎる。



「殺りあおっか!」



瞬間、目の前に無数の銀が飛び込む。


まずい!!!


咄嗟とっさに左に避ける。


エルフは攻撃魔法しか持たない。


だから人間とよくペアを組まされる。



「よく避けたね!」



にこやかに笑いながら、手を叩く。


その間にも目の前に銀のやいばが飛び込み、避けるの繰り返し。


何度も何度も。


攻撃を仕掛けようにも出来ない。


時を止められてる。


干渉出来ない。


その暇すら与えられない。


クソッ。



「あっ?何これ?」



「リニアッ!!」



直線上の魔法がモルペウスを貫く。


誰だ。


彼に〝拘束魔術〟を仕掛けた人間は。


弾かれたように後ろを振り向く。


真っ白な人型がいた。


セイン様とよく似た服装だと思った。


彼の方がよく似合っているけれど。


顔は鳥のようなマスクでおおわれている。



「君は」

「好きな人の仲間だから助けた」



それだけ言って、ナツメの匂いを残して消えてしまった。


好きな人…………。


まさかセイン様じゃないだろうな。


そうだとしたら危機だが……。


喉仏のどぼとけが上下する。


モルペウスの体はさっきよりもゆっくりと。


ゆっくりと再生し続けている。



「あぁ……」



思っていたよりかすれた声が出る。


少し疲れて床に座り込んだ。



「なんか……よく死んでないよなぁ」



結構な頻度で考える。


セイン様からは無理するなと言われる。


あの神の方が絶対無理しているのだが……。


はぁっと息が空中にたわむれる。


見えないし、臭いもしないし、音もない。


次に呼吸をした時。


甘い香りが鼻腔びこうをくすぐった。



「自損なさっているのですか」



「君は」



また遠く離れた場所にいる。



「そんなに気を抜いていて、いいのですか」



「気を張り詰め過ぎていても仕方ない」



モルペウスの両脚だけ再生した。


再生する時間が遅くなっている。


全身が回復するまでにまだまだかかりそうだ。



「……さんは……って……に」



「なに?」



「いえ、何でも……それじゃあボクはこれで」



立ち去る間際まぎわに一瞬だけ、目元が見えた。


並行寄りのつり目っぽい。


どことなく見覚えのある眼球に、目が離せなかった。



「棗…………?」



その問いに答える者はいない。


あの憎たらしい瞳は嫌という程見てきた。


似ている。


似すぎている。


気にしすぎかもしれない。



『何かあった?』



『!セイン様!』



脳が水を得た魚のように喜んでいる。


姿はいつも通り全く見えない。


声だけがハッキリと聞こえる。



『怪我はしてないよね?』



『はい……あの』



少し間を置いてから、重い腰を上げた。



『棗とよく似た目で、見た目はセイン様に似た人間に助けられました』



さっきよりも長い間が2人を包む。



『へぇ…………なんだか面白そうだね』



何となく。


いつもよりも楽しそうな彼が脳をかすめた。

フレア視点の時は心の声が多くなる気がします。この話が日常系ならセインと棗のことしか考えてないでしょう。多分。


良ければ評価やコメント、ブクマをお願いしますm(_ _)m


【相関図】

『何デも屋編』


何考えてるか分かりそうで分からない

棗ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー→セイン

←ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

過去に何があったのか知りたい。頼りにしてる。


変態。過保護。無口。でも頼りにはなるから困る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー→フレア

←ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

気まぐれ。金しか見えてない。頼りにはしてる。


好き。愛してる。結婚したい。一緒にいたい。

フレアーーーーーーーーーーーーーーーーーー→セイン

←ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いつになったら諦めるんだろう?眼を治したい。

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