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ごちゃまぜさん◤◢

……どうしよう。


彼女の言葉が頭蓋骨ずがいこつにまでべっとりと張り付いている。



「仲間の意味……」



「エンプティ?」



「わっ!?」



驚いて、思わず後方こうほうに飛びすさる。


落ち着いて姿を視界に収めると、いつもの栗色の髪をポニーテールにしたスーイサイドだと分かった。



「顔色悪いよ?熱でも」

「無いっ!無いからっ!大丈夫!」


手をこれでもかと、大きく振る。



「…………」



無言の圧が心臓に重くのしかかった。


手を掴まれて、ズンズンと引っ張られていく。


連れてこられたのは2人の部屋。


ガチャりと鍵がかかった。



「スーイサ」

「隠してる事あるでしょ」



壁と彼女に挟まれる。


あぁ。


いつもこうだ。


彼女に隠し事をしても最大3日しかつらぬけない。


けど今日は違う。


今回だけは……。


今回だけは巻き込みたくなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


事の発端ほったんは1桃ちゃんと会う前。


少し暖かい廊下を踏みしめる。


そこには紙の切れ端が無惨にも散らばっていた。


油性ペンで真っ黒に塗られた紙は、ビリビリに破かれて残骸ざんがいとなっている。


1つずつ集めていくと、最近入った新人の部屋からの気味の悪い声が耳をつんざいた。



「あっはっはっはっは!!!!」



薄く開いた扉からは中の状況がよく知れる。


無惨むざんに切り刻まれた写真は、数秒後に自分だと分かった。


うらの名前が書かれた長枕には、腹が何度も何度も切り裂かれている。


恍惚こうこつとした笑みを浮かべ、おぞましい単語を口にした。



「初めてだっけなぁ……ヴァンパイアって。中身どうなってんだろ?」



漠然ばくぜん的に死ぬんじゃないかと思った。


恐怖心と同時に寂しさも込み上げてくる。


手が扉に当たった。


空気が変わる。


刃渡り12cmのナイフが飛んできた。



「誰かいるの?」



息が荒くなる。


体の中の内蔵がひっくり返ったみたいに、気持ち悪くなった。


へたり込む足にむちを打って、その場から逃げ出す。


逃げても逃げても逃げたりなくて。


気づけば桃ちゃんの姿を見つけた。


咄嗟に話しかけてしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


もしかしたら、桃ちゃんなら何かしてくれるかもと思ったが駄目だった。


18歳ぐらいに見えるが、あの時の雰囲気はなんか。


もう少し大人に見えた。



「で、隠してることは?」



「言えない」


声が震える。


うらは別に死のうが、生きようがどっちでもいい。


前言撤回ぜんげんてっかい、死ぬのは怖かった。


けど彼女を悲しませるのは絶対に嫌だ。


見透かされたようにスーイサイドは、ドカっとベッドに座り込む。



「エンプティが先に居なくなったら、悲しい」



真っ直ぐな目と声は重要な臓器をグサグサと刺す。


……仲間。


意味。



「あのね」



体が痛い。


喉がつっかえたように動かなくなる。


小さな拳に力を込めた。



「スーイサイドと一緒に死ねなくなる……多分」



随分と語尾が小さくなってしまった。


長いストレートの髪が揺れる。



「…………寿命でってことじゃないよね」



澄んだ目には怒りの炎が宿っている。


仕事をする時を彷彿ほうふつとさせた。


水が頬をつたう。


小さく頷く。



「誰?」



「新人の……」

「サフラン」



きりがかった頭が一掃いっそうされる。


異様な空気感に心臓がドクドクと音を鳴らす。



「……謎……」



「スーイサイド?」



「ねぇエンプティ」



抑揚の無い声。


つややかな唇がかすかに動く。


細められた目は瞳がほとんど見えない。



「サフランっていつからいたっけ」



「えっいつからって……」



あれ。


いつからだっけ。


首を前後左右に動かしてみるが、全く効果はない。



「そもそもロボットなのかな」



不意に口をついて出た。


サフランの他にもロボットはいる。


その子達と比べてみると違うところが多い気がするようなぁ…。


思いつく限りでは、関節部分にオイルを差したり、部品を交換したりだが。



「ちょっと調べてみる?何も知らずにいるよりはマシじゃない?」



彼女はニヤッと笑う。


うらもそれに触発しょくはつされてニヤッと笑った。



「そうだね!」



このまま何もせずに終わるのは嫌だ。


それになんで狙われてるかも分からない。


もし分かったら、なにか対策出来るかもしれないと楽観的に考える。


体内に一抹の不安が居心地良さそうに寝転んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふんふんふふ〜ん♪」



軽快な鼻歌が聞こえる。


アルバートの出てきた部屋からは焦げ腐った肉の臭いが辺りをさまよった。


そこには元の種族がなんだったのかは分からない。


苦しそうに小さく悲鳴をあげるだけで、もう時間は残されて居ないだろう。


対する若々しい顔はニコッと笑う。


そんな足取りが人間の手に引っかかる。


彼はそれを掴んで、後方に放り投げた。


ぐちゃっと音が鳴る。



「今日はどんな実験しようかなぁ」



アルバートは1つのドアノブを手にかける。


中には歯と髪は全て抜け落ち、肋骨が剥き出しになっていた。



「たす……け……て……た……す」



「嫌〜♡」



注射器を手に取り、ほとんど肉の残っていない腕に針を刺す。


みるみるうちに元の姿を現すが、どうにも色がおかしい。


変色して真っ黒だ。


彼女は顔を歪めた。



「いやっいやぁっ!!!!もう踊れなくなっちゃうっ!」



「歌えばいいじゃん」



有名なアイドルだった彼女は自身の手脚を見て泣き叫んだ。


そんなに泣き喚くことだろうかとアルバートは思う。


脳がストレスを訴える。


手直てじかにあったなたを手に取り、首をはねた。


綺麗な血液型はドス黒い。



「貴重な実験体が減っちゃったなぁ」



悲しむ様子なんてものは無く。


頭をボールのように蹴り上げて、壁に叩きつけた。


ぐちゃりと鳴る。



「アルバート先生」



ハッキリした口調は彼の耳を撫でた。



「なにぃ」



「サフランについてなんですが……」



聞き覚えのある名前が脳ミソを揺らす。


以前アルバートが試作品で作ったロボットの名前だ。


ある犯罪者と、ある人形の意識をごちゃ混ぜにして作ってそのまま放置してあったはず。



「それがどうかしたの?」



「今まではなんの行動も出なかったのですが、最近ヴァンパイアの1人を殺害する計画をくわだてています」



「ヴァンパイア〜?」



誰だ?と自分と都合のいい実験体にしか興味がない頭をフル回転させる。


数秒立ったがアルバートは既に別の事を考え初めていた。


多分彼の後輩が、ため息混じりに口を開く。



「エンプティさんですよ。今の所、誰も殺せていない」



「ただの無能じゃないか」



辛辣しんらつな言葉は室内に木霊こだまする。


別に彼女が死のうが生きてようが、微塵みじんも興味無い。


現時点で優秀な実験体を押しのけて、アイドルとの密会を終えた。

極力休まないようには頑張ります。去年誕生日祝えなかった子ごめん。


良ければ評価やブクマ、コメントをお願いしますm(_ _)m


【Happy birthday アルブス・ラーベル 1/16】

『死ぬ前の話』


「アルさん!誕生日おめでとうっす!」


「……おぅ」


「なんすか!そのやる気ない返事は!」


「んなガキみたいなこと」


「今日ぐらいいいじゃないですか!アルさんが誕生した日なんですから!」


「……ってかさぁなんでお前引っ付いてくんの?」


「尊敬してますから!」


「…………頭大丈夫か?」


「大丈夫ですよ!」


ーーーーーーーーーーーーーーー


「…………なぁライオス。今日、私の誕生日なんだけどさぁ…………」


「………………」


「私も幽霊に慣れたら良かったのになぁ……。でもさ。もうすぐでそっちに行けそうな気がするから。…………また一緒にワインでも呑もうぜ」




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