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恋する乙女とサードオニキス

…………。


まるで大型迷路に迷い込んだかのように、方向感覚を失う。


進んでも進んでも同じ景色。


フレアが昨日作ったマップを見ればすぐかと思ったが、そうでも無い。


そもそもソレを見ながら歩く訳にもいかないのだ。


潜入って難しい。


昔の経験を生かすにしても、僕はスパイじゃない。


盗人だ。


盗ったらサッサと逃げるに限る。


内心ため息をつきながら、歩みを進めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ジメジメとした空気は1日経っても収まらない。


無意識に自身の手を見つめる。


やはり女っぽくない。


性別を変える魔術はある。


けれど、今より更に魔力を使う。


つまり今の僕が使ったら、まず地べたをいずることしか出来ないだろうし。



「あれ、桃ちゃん?また変な所にいるね」



振り返るとそこには腰まであるストレートヘアーが後方になびく。


2本の黒メッシュに、確かサードオニキスであろう宝石がキラキラと輝いている。



「私ったら凄く方向音痴みたいで……あははぁ」



「ふふっ。なんでも慣れたら簡単なんだけどね」



口に手を当て笑う彼女は、到底誰かを殺しているとは思えない。


昨日から思っていたのだが……。


ここにいる者全てが犯罪に手を出しているのだろうか。


この質問をするのはあまりにも無責任だろうか。



「ところで、その髪飾り綺麗ですね。どこで手に入れたんです?」



首を傾げる。


馬鹿だと盗んだものをこれみよがしに自慢する傾向があった。


…………。


エンプティの顔が赤くなる。


どうやら僕の第1の予想は外れてしまったみたいだ。



「実はね……貰ったんだ……へへっ」



ワインレッドのノースリーブワンピースの周りに漂う空気は甘酸っぱい。


おおよそ好きな人からの貰い物だろう。


空気が揺れる。



「それは良かったですね!ちなみにぃ〜誰から貰ったんですか?」



胸元で両手をグーにして、上半身を前に出す。


エンプティは後退りをする。


人間の街にいた時は良く耳にした話だ。



「えっとね……スーイサイドから貰ったんだよ。……多分何も考えてないんだろうけどさ」



言葉が終わりを結ぶにつれて、どんどん小さくなっていく。


けれどハッキリと聞こえた。


これはエンプティの一方的な片思い。


フレアよりかは凄くいいと思う。


いやアイツがヤバすぎるだけなのか。


流石にセインが捨てたゴミを丁寧にジップロックに入れていたのは忘れられない。



「もしかして好きなんですか?」



「あっうん……まぁ……片思い……なんだけどね」



頭をポリポリと掻く。


その表情は恥ずかしそうで、悲しそうだ。


手を後ろに組む。



「思いは早めに伝えといた方がいいですよ。その方が……きっと後悔しませんから」



ニコッと微笑む。


薄く開いた目にだいだい色が輝く。


エンプティは一度顔を逸らしてから、もう一度僕を見た。



「そういえば、どこに行こうとしていたの?」



「あっ実は〝ひのき〟さんに会いに行こうかと」



「檜?そりゃまたなんで?」



初めて会った時に比べ、彼女にまとわりついている空気が全くの別物だった。


昨日は多分、スーイサイドに合わせていたのか?


いや、無意識的にそうなっていたのかもしれない。


そうじゃなきゃあまりに自然すぎる。


セインだったらそうは思わないんだけど。


寝ている間、今も現在進行形で彼らの情報がたれこんでいる。


たれこみすぎって鬱陶うっとうしい。


頭を軽く振る。



「色んな人と仲良くなってみたいなって思って。それで、隣室りんしつのフォールスさんと話していたら彼の話が出てきたので気になっちゃいました!」



人のいい笑みを浮かべる。


悩む素振りを見せたあと、キッパリと言い放った。



めといた方がいいよ。危険だから」



「そんなに……ですか?」



あざとく涙で目を濡らすが、意味は無い。


ダメか。


エンプティにとっては重たい沈黙が流れた後に、彼女の方から口を開いた。



「今暇!?」



『暇って言って』



「暇ですよ」



勝手に入ってくるなセイン。


気分が悪くなる。


開いたか閉じたか分からないぐらいに、小さく口を開ける。



『とっとと終わらせないと』

『今後の精神的なケアのためにもさ』



向こうで薄ら笑いを浮かべる様が脳を支配する。


はーらーたーつー。


ヴァンパイアはぴょんぴょんと跳ねて、手を引っ張られた。



「あっちだよ〜」



「あの、どこに?」



「ティールーム!最近新しいお菓子買ったから、一緒に食べよう!」



急なテンションの変わりようについていけない。


よっぽど僕をひのきの元に近づけたくないのだろう。


菓子に毒物でも入ってなきゃいいけど。


一応何にでも聞く解毒剤は持っている。


任務に行く前にエリンギから郵送で渡された。


箱の中に蝶々が入っていたことが一番ショック。


ここでミミズとか出てきたら潜入どころじゃない。


死ぬ。


なんてどうでもいいことを思いながら、ズルズルと引っ張られ続けるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「最近の子って血が騒ぎすぎだよね」



「貴方まだ22でしょう」



到底22歳とは思えない知識量を持ち合わせているのだが。


辺りには血が飛び散っている。


見慣れてはしまったが、自身にはまだ出来そうもない。


棗たちの方はフレアさんとジンさんがやってくれている。


おらはレイラさんの付き添い。


という名の勉強というかなんというか。


血の着いたなたをひと振りする。


華奢な体に全く似合わない。



「…………どうしたらそんなに躊躇ちゅうちょなく殺せるんですか?」



ゆっくりと振り向く。



「まぁ仕事として割り切ってるからね。それと……」



大股一歩で彼とおらの距離がゼロに近くなった。



「ブラッドにはこっちの仲間が10人殺されてる。今のであっちの6人殺ったから後4人で同じになるね」



「おら……貴方の感覚が分かりません」



「そう?ただ恨まれたくないだけだよ。それに、無害なのには手を出してない」



「恨まれたくないってなんですか?殺った時点で恨まれるのは覚悟してるだろっ!?」



風を切る音がする。


ピンヒールのブーツが顔のすぐ真横に合った。


時間は1秒もなかったはずだ。


ガスマスクとフードに覆われて顔は見えない。


今口を開けば、すぐにでも鋭い蹴りが入るだろう。



「甘〜いことはさ……いずれ卒業しなきゃいけないんだよ。もし燿爛やジンが殺されたとしたら泣き寝入りする?しちゃうの?ほんとに?」



「あっ……」



木に張り付いた背中がずり落ちる。



「別に殺さなくてもいいんだよ?ただ、君が殺された彼らが一番報むくわれる方法を考えて実行すればいいだけの話。それだけさ」



頬が異常に冷たい。


まるで地面に転がっている死体のように。


氷の神様は静かに微笑んだ気がした。

夢の汎用性に気づいてしまった。


良ければ評価やコメント、ブクマをお願いしますm(_ _)m


【Happy birthday 胡桃 9/6】


「胡桃!誕生日おめでとう!」


「わっびっくりしたぁ……兄さんどうしたの?」


「どうしたって……今日は胡桃の誕生日だろ?」


「……そうだっけ?」


「うん。そう!今日は胡桃の誕生日!あっ具合はどう?」


「今はいい感じだよ」


「昨日は?」


「ほんのちょっとだけしんどかった」


「うぅ……何かおらにして欲しいことないか?今日は胡桃の誕生日だからな!何でもする!」


「なんでもかぁ……じゃあこれ読んで欲しいな」


「これって絵本か?」


「うん。安心出来る」


「……分かった!ひのき兄ちゃんみたいに上手くは出来ないけど……笑うなよ?」


「笑わないよ。絶対」

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