生
ブラッド視点
「ねぇエンプティ」
「なぁにスーイサイド?」
「あの子達……どう思う?」
艶かしい表情に目線を固定される。
喉が音を立てた。
「分からない。けど、スーイサイドの望みは叶わなそうだけどね」
絡み合った指に力を込める。
彼女も同じように力を強めた。
「死ぬ時は絶対一緒だよ?」
「分かってるよ。そういや今日まだしてないよね」
「あぁ……確かにそうだね」
そう言ってスーイサイドは体重を乗せてきた。
これは日課のハグである。
うらのペアである25歳は甘えただ。
ふんわりと心地の良い香りが鼻をくすぐる。
もしうら達が、この世にいなくなるなら……。
「絶対に離れられないところがいいなぁ」
消え入りそうな声は空中に浮かび上がるだけだ。
カーペットの敷かれた床に2人分の体重を預けて、夢の世界に招かれた。
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つい先日の事が脳裏に浮かぶ。
正義感の強い、から傘お化け。
侵される前の檜と似ている。
どうしてあたし達を狙うかを聞いた。
彼は悪いことをしたからと言った。
アイツの言う〝悪いこと〟は対象年齢何歳までなんだろうか。
殺されちゃうぐらいの悪いこと……。
『お前さえ産まれて来なければ』
頭の臓器が殴られたようにぐわんぐわんと揺れる。
『こんな簡単なテストで100点すら取れないなんて』
『あの子達と関わるのは止めなさい。もっと馬鹿になっちゃうわ』
『頭も良くなければ、才能もない』
頭を振り必死に消そうとするが、上手くいかない。
銃声が鳴り響いたように過去がフラッシュバックした。
いつものように氷より冷たい声で、体を抉られる。
近くの机には、新品のハサミが置いてあった。
ぎゅっと握りしめて母の足に突き刺した。
そこからはあまり記憶が無い。
ただ。
我を取り戻した時に見た母の姿、もはや母かすらも怪しいくらいだった。
「フール先輩」
意識を戻すと、足元にはあの時と同じ光景が広がっている。
「殺りましたか?」
「うん。さっ帰ろう」
「はーい」
人懐っこい笑顔の奥にある、生々しい何か。
底知れない嫌悪感。
あたしは彼女が苦手だ。
箒に跨り、浮かせる。
もう3年ぐらい乗っているが未だになれない。
「先輩って、まじで乗り方下手くそですよね」
デフォルトの姿勢をひっくり返したような姿を少女は不機嫌になった。
「進めるからいいんだよ。お腹空いたから先に帰る」
そう言って、スピードを速める。
「あっ待ってくださいよ先輩〜」
頭に既視感のあるプロペラを取り付けて、浮かび上がった。
世界が逆さまになりながら、辺りを見渡す。
どんよりとした木々ばかりで面白さもクソもない。
「いつになったら僕ちんの名前呼んでくれるんですか?」
「さぁ」
素っ気なく返事を返す。
なんだ僕ちんって。
「フール先輩って、気に食わない相手だとまじで喋りませんよね」
「…………」
うるさい。
さらにスピードを上げて降下する。
ほぼ地面と同化してある窪みを掴み、押し上げた。
「これって、誰が考えたんですか?」
速い。
「リムーヴァルだよ」
「へぇ……」
横目で見た彼女は、薄ら笑いを浮かべていたように思う。
階段を下り、いつものジメッとした空気が纏わりついた。
「あっお帰り」
同室であるフォールスに声をかけられる。
「ただいま〜♡」
明るく元気に声を出す。
「いいですね。僕にもしてくださいよ」
「お疲れ様」
「やったぁ」
本当にそう思っているかすら、怪しい。
機械で作られた目は、生気はあるが無いように見えて仕方がない。
「フール先輩?」
「あたし甘味摂取してくる」
「僕もついて行っても?」
質問には答えなかった。
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「……人を殺すことに意味はあるのか。どう思う?」
「また難しいことを言うね」
スーイサイドは良く哲学じみたことを聞いてくる。
南天の実を指で潰す。
きっとこの〝潰す〟行為にも意味は無いのだろう。
辺りは日が差し込まず、若干暗い。
「スーイサイドはどうしてここに入ったの?」
「死ぬためだよ。言わなかったっけ」
…………。
どうにかして見送ることはできないだろうか。
幾度も巡り続ける糸を断ち切らないように、そっと奥にしまう。
「そういえばそうだったね」
「エンプティは?」
「うら?うらは……」
喉が濡れる。
「復讐するためかな」
「そんな奴いたんだ」
「うん」
静かな森を木の枝を踏み締めながら、どんどん奥へと進む。
まるで実の母に捨てられたヘンゼルとグレーテルのようだ。
彼らは小石を落として家に帰れた。
けれど彼女らは何も落とさない。
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「次は誰を殺そうかなぁ」
マジックペンをクルクルと回し、ノートを開く。
多くのページは真っ黒に塗り潰されている。
これを見る度に、心という物が熱くなった。
1人は絞首、2人はギロチン、3人は骨折、4人は丸焼き、5人は窒息、6人は溺水、7人は爆発、8人は感電、9人はファラリスの雄牛、10人はガス、11人は薬、12人は轢、13人は内蔵抉り、14人は落下、15人は銃、16人は釜茹、17人は八つ裂き。
今でも鮮明に情景が紙のスクリーンに映る。
もうすぐ僕の誕生日。
誕生日には何をしても許されるって先生が言ってたんだぁ。
その日以外は殺しちゃ駄目らしい。
なんでかなぁ。
聞く前に首を絞めちゃったから、分からないんだけど。
「おい、」
下を向くと、知らない奴がいた。
正確には知らなくないのか。
「もう消灯時間過ぎてるから、早く戻れ」
「君誰だっけ?」
瞬間、人型が崩れ落ちる。
「俺様はクレイジー・ナード。これでもう105回目だ!いい加減覚えろ、この糞野郎!!」
「ネーミングセンス終わってるね。本当に狂ってるの?」
鼻で笑うと、彼の顔が真っ赤になった。
やっぱり生き物って面白いよなぁ。
もっと壊れないようにならないかな。
木の上から飛び降り、クレイを踏みつけた。
「グエッ」
土埃が舞う。
「汚ったな」
手で払いながら、来た道を戻る。
にしても。
あの桃と炒って奴らは何だ?
他の奴らとは少し違う気がする。
何が違う?
どこがおかしい?
機械的な瞳孔を開く。
「………ね…」
体を後ろに向ける。
「何か言った?」
「ロボットも老化するんだな」
物理的な上から目線。
気に食わない。
早くいなくなればいいのに。
…………いや。
ここで今殺っちゃえば……。
そう思う前に、鉄で出来た腕はクレイの頬を掠めなかった。
!!!
腕を掴まれ、地面に叩きつけられた。
そのまま顔を土に押し付けられる。
「てめぇの方が汚ぇよ」
脚で頭を踏んだ彼は去っていった。
期末テストがあり、遅くなりました。すいません。
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【小ネタ】
エンプティは目玉焼きには胡椒を致死量かけます。さすがのスーイサイドもこれには引いています。




