見つかり隠れんぼ
耳の下で結ったクリーム色の髪の毛を撫でる。
ゴムには小さなクローバーがついていた。
いつもとあんまり変わらない、セーラー服じみた格好。
履きなれないローファー。
「準備出来ました。灯灸燿爛さん」
僕より身長が高く、背筋がいい。
キリッと細い目に赤い瞳。
同じ人間。
同じ魔術使い。
僕よりも強い。
相手の意向で僕は女役。
燿爛が男役となった。
「うん、可愛いね。君は元の素材が良かったからかな」
「褒めはいらないですよ。一人称どうしますか?」
「ちゃんと敬語使えて偉いねぇ〜。なんでもいいんじゃない?ボクっ娘も可愛いしさ」
白い歯がキラリと光る。
「じゃあ、私で」
「おけまる水産業」
「古くないですか」
何となくエリンギとウドを足した感じか。
窓から差し込む光が柔らかい。
「さて、そろそろ出るよ。準備はいい?」
「いつでもどうぞ」
燿爛は魔術書を開いて呪文を唱えた。
「ベヴェーゲンッ!」
体が上下に激しく揺れる。
時空が歪んだように、僕らの場所は一瞬にして変わった。
今日の任務は潜入。
もしかしたら死ぬかもしれない。
興奮なんてする性格じゃない。
ただ、淡々と任務をこなす。
こなして、こなして、こなしまくる。
金さえあればなんでもいい。
すおーを直せる資金さえあれば。
絶対成功させる。
目の前から見慣れない顔がやってきた。
「2人とも、よく似合ってるよ」
「そうですか?照れちゃいますね。……安心してくださいよ。棗…じゃなかった〝桃〟ちゃんは俺が守りますから」
「桃ちゃんかぁ。いいね。一応、彼らの記憶の中ではトラッシュに助けられて、加入することになってるからさ。頼んだよ」
そう言って、手をヒラヒラさせて姿を消した。
セインの本体は今頃、本部か。
確かスノードロップとか言う名前だったな。
日常的に銃やナイフの所持が認められているが、私服で所持する場合は、先に全体写真を送る必要がある。
そうじゃないと、警察に通報されても弁明のしようがないらしい。
目には目を。
歯には歯をの精神。
「君たちが新人さん!?」
余裕たっぷりに振り返ると、前に見た淡い2つ結びが風に揺れた。
「さぁさぁっ!中に入って入って!!」
腕をグイッと引っ張られる。
少し体が崩れた。
「君は?」
「あたし?あたしはフール!フール=ロイピュアル!よろしくねっ!」
笑顔が良く似合う子だ。
「そうなんだ、あっ私は桃。よろしくね」
「桃ちゃんかぁっ!可愛いね!そっちの君は?」
「俺は炒。宜しく」
「炒くん!!よろしくね!!!」
フールはニコッと笑って、さっきよりも僕らの腕をグイグイと引っ張り木々(きぎ)の中を走っていった。
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着いた場所は何も無かった。
フールはしゃがみこみ、石に見える突起を掴んで、開ける。
覗き込むと深い場所まで階段が続いていた。
こりゃあ見つからないな。
あまりにも紛れ込んでいた。
地下に続く階段を降りたら、ある一室についた。
古びたソファに机。
テレビはまさかのブラウン管。
「これって誰の持ち物?」
「それ?確かボスだよ!」
トラッシュはレトロが好きなのか。
後で日記に書いておこう。
炒が口を開く。
「ねぇボスってどこにいるかな?」
「ボス?なんで?」
大きな丸い目が更に丸くなる。
「いやぁ挨拶したいなぁって。俺たちに居場所をくれたんだし」
「そっかそっか!今はお仕事でいないからぁ、帰ってくるまであたしと遊ぼ!」
また2人して腕を引っ張られた。
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久しぶりだな。
おままごと。
フールがお母さんで、炒がお父さん。
僕は猫。
あるある。
「ほら猫ちゃん、ご飯ですよ〜」
「にゃぁ〜ん」
食べる振りをする。
フールは見た目に反して精神年齢が低い。
資料にも書いてあった気がする。
またさり気なく聞いてみるか。
そのまま30分ぐらい、猫として過ごした。
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薄暗い古びた廊下を歩く。
真っ白なローブをきた人物は一言も喋らず、ただ僕らの前を歩く。
フールは仕事に呼び出されて、外に出ていった。
話を聞く限り、恐らく殺人だろう。
にしても、なんか引っかかるな。
頭がグッと痛くなる。
『猫としての桃ちゃん可愛かったよ』
『頭に直接話しかけてこないでください。私まだ慣れてないんです』
『そうだったね。まぁでも口に出せない会話も多いから、このままで』
『何か分からないことがあったら聞いてね』
キーンっと頭が響く。
『……急に入ってくるなセイン』
『2人だけで会話はずるいよ〜』
ケラケラと笑ってる姿が容易に想像出来た。
『なぁセインくん、彼女の年齢は分かるかい?』
『12歳だよ』
『なるほど。ソースは?』
『資料に書いてあった。さっ着いたよ』
またセインは姿を消した。
乾いたノック音が響く。
「入れ」
ドアノブを回す。
「失礼します」
中に入るとレトロチックな雰囲気が身を包んだ。
前に出会った時と何も変わらない顔。
新聞片手にコーヒーをすする姿は、僕より大人に見える。
「あの時は助けていただいてありがとうございます。桃です、よろしくお願いします」
綺麗に頭を下げる。
少しの沈黙が辺りを包み込んだ。
「君は妖怪なのか?」
「いいえ人間です。橘桃です」
「そっちの名前は?」
「俺は焔炒です」
「ふ〜ん……あっ、ここにはランク制度があるんだ」
スノードロップと似てるな。
「ランク制度?」
「A〜Fまである」
トラッシュはペンを投げて笑って言った。
「誰か殺せば一気にランクは上がるよ」
「ランクが上がると何が起こるんですか?」
「気になることを教えてあげたり、しなかったり」
曖昧な回答だ。
本当に潜入はバレていないのだろうか。
こいつの言動といい、態度といい、見透かされている気分になる。
風で前髪が揺れ、見えなかった目が姿を表す。
瞳のない、上から下にグラデーションされた目。
人間より少し角張った耳。
この特徴は神か。
僕ら種族の見分け方は角とか牙とかが分かりやすいが、それ以外にも分かりやすいのがある。
目と耳だ。
人間の場合、目の上か下半分が黒く、丸い耳。
エルフの場合は黒目の輪郭線が濃く、横にとんがった耳。
特に神と人間はパッと見区別がつかないから、この特徴が判断材料になる。
初めてかもしれない。
神様と騙し合いをするのは。
多分セインよりは弱いんだろうけど、僕と比べたら、どれくらいの差があるんだろうか。
少しの不安と期待が胸にぎゅっと押し寄せた。
暇だったら 野菜言葉 調べてみてください。ちょっとは虫の草原のみんなが分かるんじゃないでしょうか。
良ければ評価やコメント、ブックマークをよろしくお願いします(*´︶`)
【おまけ】
『ホラーゲームをするセインとトウモロコシ』
「ちょっと〜どこいってんのさ」
「だってこれ操作ムズいんだもん」
「そう?普段ゲームしないけらなんじゃ?」
「それはあるかもだけど……にしても難しってわっ!」
「ほらほら、早く逃げろ逃げろ〜」
「そんなこと言われたって」
「あっその部屋は」
「えっあっ!襲われてる!襲われてる!」
「その部屋入ったら詰むって言おうとしたんだけど」
「もっと早く言ってよ〜!」
「めんごめんご」




