猫と傘
今僕は気分が悪い。
2つの視界には慣れていたが、3つの視界はまだ慣れていなかった。
あの後、僕は三つ目小僧、フレアは狼男、セインはキョンシーの見た目をしていた。
傍から見たら、ただのコスプレ集団だ。
若干恥ずかしい。
そして昔ながらの牛車に乗りながら、依頼の内容を確認していた。
「さて、今回、表向きは体育祭の競技メンバー。裏向きは薬が売買されているかの調査だ。それで黒だったらひとまず拘留って形になるかな」
「薬ねぇ……大麻とかその辺だろ?」
「そんな分かりやすいものじゃないだろ」
「どうだろうねぇ。多分リレーとかは盛り上がると思うから、どさくさに紛れて……とかはあるかも。まぁ手強かったら最悪グサッとしても問題はないからさ」
「仮にも警察なんだろ?んな適当なことしていいのかよ?」
「まぁ回復させれば問題なし!」
袖をヒラヒラさせながら、あっけらかんと言う。
セインは命に関して軽すぎる節がある。
だからか知らないが、運転が荒すぎるためシートベルトがあっても体がぐわんぐわん動く。
僕が早く免許取らないとな。
あーそうだ。
淡々と流していたが、実は昨日直前になって依頼が来たのだった。
見張りは得意だが……それなりに神経も使うし当たりたくない。
基本的に指示は出てこないから、自分たちで考えないといけない。
で、1番近くにいたヤツが依頼をこなす……。
大抵1人でやらないといけないから、誰かに任せることも出来ないし。
今から憂鬱だ。
「あっそういえば棗、これ」
なんだろうと思い、手を差し出す。
手にずっしりと重たい感じがあった。
セインの手がどく。
黄緑色をした丸い部品だった。
ところどころ欠けていた。
が、見覚えがある。
「これっどこで!?」
「ウドに聞いてみて、私は何も聞いてないから」
そう言って遠くを見つめた。
フレアにしては珍しく牛車の中にある、ファッション雑誌を眺めている。
僕はしばらくその球体から目を離せなかった。
これはすおーの左の眼球だ。
牛車が軽く揺れる。
持っていた頑丈な箱の中にそれをしまった。
「見つかるまで何年かかるかなぁ……」
誰に問うでもなくそう言った。
「あっちから出てきてくれたら早いんだけどねぇ」
「…………もし見つかっても、無茶だけはしないで下さないね」
「まぁ死なない程度に無茶する」
「はぁ…………。今は目の前のことに集中しましょう」
「だね〜あっもうすぐ着くよ」
蛇腹状のカーテンを上に上げると、薄暗く赤と青の炎が見えた。
「きれい……」
ふと口から本音が漏れた。
ハッとして口を抑えたが、無駄だった。
セインはニヤニヤしながら、こっちを見ている。
相手にするのも面倒なので無視に限る。
またすおーのパーツが見つかったらいいな。
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なんかお化け屋敷感あるな。
独特の匂いと空気が肌をまとわりつく。
1匹の猫がこちらに近づいてきた。
しっぽが2つに分かれているから、おそらく猫又だろう。
試しに頭を撫でてみたら、ゴロゴロと喉を鳴らした。
普通の猫と何ら変わりないのか。
手を離すと、ボフンっという音とともに、猫又は姿を消した。
いや、正確に言うと姿を変えたと言った方が正しい。
「皆様、ようこそ!妖怪の学校へ。依頼をした椛と言います。今日はよろしくお願いします!」
ペコッと勢いよく頭を下げる。
スポーティーな見た目に対して、中身は大人しい感じだ。
「久しぶり〜椛ちゃん。元気にしてた?」
「お久しぶりですレイラさん!元気ですよ」
にへへって照れくさそうに笑った。
流石は〝歩く図書館〟か。
フレアに目を向けた。
「フレアは椛…さんについてはなんか知ってんのか?」
「いや、そんなに知らん」
急なタメ語。
別にいいけど。
「俺が来たのは2年前だ」
「あれ、ずっと一緒にいると思ってたけど?」
「祭事の時に運良く見つけたんだ。あの時のレイラ様は非常に美しかった……」
聞き飽きたノロケが始まりそうだ。
不意に椛と目が合う。
耳がピコピコ動く。
遠くから声が聞こえた。
「生徒会長〜!ん?何デも屋の人?」
「うん!」
「……大丈夫なの?この人たち。特にソイツ」
足が1本の少年は僕を指さしながら言った。
「これでも仕事はちゃんとしますから……あれってか依頼なのか?これ」
「椛ちゃんは律儀だからねぇ〜良かったね棗」
「わー嬉しいーなー。で、誰?」
極めて棒読みで少年に顔を向ける。
「おらか?おらは杉だ。手を抜いたら承知しねぇからな」
つり目で言葉使いが荒い。
前に事故でレイラと体が入れ替わった時を思い出した。
あの時のフレアの発狂ぶりは半端なかったな。
今日は全然関係ないことしか浮かばない。
こうゆう時は糖分が不足してるか、ストレスが溜まってるかのどっちかだ。
後でレイラから飴でも貰おう。
「では案内するので、着いてきてくれますか?」
「はいはーい♪」
「いくぞ」
「うぃー」
「大丈夫か?本当に……」
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だんだん3つの視界にも慣れてきた。
一応生徒では無いので、別に応援席が用意されている。
本部のすぐ隣ぐらいに席があるのは流石に恥ずかしい。
まぁ2人は気にして…いやフレアはちょっと気にしてるか。
さすが、学校と言うだけあって周りの景色は遊具やらなんやらでいっぱいだ。
話を盗み聞きした感じ、杉は副生徒会長らしい。
それでレイラは以前医者としてここに来ていたみたい。
こいつの職歴はどうなってんだ。
22歳だと言っていたが、絶対サバよんでるだろ。
じゃなきゃ信じれないことが多すぎる。
レイラを見た。
1番分かるようで分からない。
不思議だ。
風が吹く。
「いたっ」
目が痛い。
どうやらおでこに作った目に髪が入ったみたいだ。
痛覚まで再現するんじゃなかったな。
「これ使うか?」
目をやると、杉が小さい箱を手渡してくれた。
中身は赤い液体をした目薬らしい。
僕はそれを受け取り、額にある目に数滴垂らした。
ヤバい薬かと思ったが大丈夫そう。
「さんきゅー使わせてもらうわ」
「それ使う前に言うセリフだろ……あぁ一応開会式には出ろよな」
「流石にそこまでの無礼はしねぇよ。バックが怖ぇからな」
「バック?」
「あの華奢なヤツですよ〜」
そう言ってレイラを指さす。
異様にレイラの顔が笑顔だった。
耳にスピーカーの音が風と共に入り込む。
「それではこれより開会式を行います。皆様、グラウンドに整列してください」
ムキムキパラダイス。
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【小ネタ】
フレアは元々セインを普通の変な上司にぐらいしか思ってませんでした。が、やっぱりセインには熱狂的なぐらい愛してくれる存在が欲しいなぁと感じフレアにくっつけました。
棗にも恋愛フラグが立ちそうな子を発見させたいですね。




