資料2
サティの虐めは彼らが居なくなっても過激さをまして続いた。
頭から油をかけられ火をつけられたり、キメラダーツと言ったサティを張り付けて物を投げつけたり。
その度に痣や傷は増えていった。
どんな再生能力を持っても、それの原料がなければ意味を持たない。
サティはもう何日もまともなものを食べていなかった。
そんな中、心を閉ざしたサティの背筋がヒヤリとした。
虚ろな目をした彼はもう壊れた人形のようにピクリとも動かない。
額から角を日本生やした典型的な鬼。
だが体は透けているからもう死んでいる。
彼女はサティに言った。
「アザ酷いねぇ〜痛くないの?」
サティは答えない。
答える気力が無いと言った方が正しいのか。
次の瞬間、彼の頭に強い衝撃が加わった。
ぐわんぐわんと視界が揺れる。
「いたい…………」
か細い声が空気を漂う。
それに鬼の幽霊は笑うでもなく「痛いんじゃん」と安心した表情を作った。
隣に胡座をかいて座った彼女の方をサティはゆっくりと見る。
彼女もゆっくりと見た。
「あんたはさぁ、アイツらのこと友達だと思ってるの?」
友達という言葉に口がきゅっと一文字に結ばれる。
だが次第に緩まり、「違う」と本音が溢れていた。
それを聞いた彼女はニヤッと笑い、「じゃあ殺していいよね?」と割れた舌をチロっと出す。
けれど特に驚きはしなかった。
暫く考えた後、頭は上下していた。
倫理観とかそんな大層な考えは、今までされたことを思い浮かべた瞬間消え失せてしまった。
頭がわしゃわしゃと心地よい衝撃をうける。
「じゃあここで瀧がここに来るまで、待っててね」
何も考えぬまま、首を動かした。
殴られた箇所がズキズキと痛む。
サティは何分か体育座りで彼女を待っていた。
白い扉が開く。
真っ白な部屋には不釣り合いな真っ赤に染まった肉体。
瀧の本体が赤く染った体から抜けると、肉体はだらりと崩れ落ちた。
「……ほんとに……やっちゃったんだ」
「まぁね〜ひっさしぶりにやったから楽しかった〜!!!」
サティの目に映る彼女はとんでもなく楽しそうだった。
瀧はサティに手招きをして走り去っていく。
フラフラとした足取りで追い掛けると、アルバートにぶつかった。
「サティ…………君がやったのかい?」
「違います」
蚊の鳴くような声はアルバートにしっかり届いていた。
視線を高くすると、実験のせいで顔がグチャグチャになった被検体が血塗れで倒れていた。
あれはもう何年か前に死んだはず。
そう思ったアルバートはサティの体に触れる。
ガリガリに痩せ細っている。
どこからどう見ても不味そうな姿に博士と呼ばれる神は、部下に食料を用意させた。
サティは中々口を付けなかったが、國圉がゆっくりとスプーンに液状の食べ物を口の前に運ぶとようやく体内に入れる。
その後もゆっくりゆっくりと食べ進めていった。
痣も次第に薄れていく。
だが心といった歴史を重ねても解決するのが難しい傷は濃くなるばかりだった。
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サティは虐められる前の生活に戻った。
お姫様のような部屋と表現したらいいのだろうか。
天蓋付きのベッドに沢山の大きなぬいぐるみ。
ふかふかのクッションに新品の本。
サティはそこで瀧と國圉と過ごす日々が始まった。
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「…………せんせぇ……」
「どうしたのサティ?」
「………………悪い子……なのかな」
目が死んだ魚のようだ。
ボサボサだった髪の毛は緩く三つ編みにされている。
國圉と同じだ。
彼女は座っていた椅子から降りて、サティと同じ目線にしゃがむ。
彼の頬をむにっと触って言った。
「サティは悪い子じゃないよ。いい子」
「でも…………嘘ばっかりついちゃう」
大きな目から涙が溢れ出す。
國圉は優しく冷たい体を包み込んだ。
「嘘はね。悪いことじゃないんだよ」
「そうなの?」
「そう。でもねサティ、自分が辛くなる嘘は続けちゃダメ」
ゆっくり息を吸う。
彼を支える腕に力が籠った。
「ごめんね……気づいてあげられなくて」
サティの肩が濡れる。
その雫は酷くあつかった。
瀧はその様子をただ黙って見つめていた。
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暫く経った頃だろうか。
サティは6歳になっていた。
虐められてから2年後だ。
神様に幼児期は学童期などというものは存在しない。
いや、正確に言えば幼児期から急に思春期後半になっていく感じだろうか。
それはあくまで精神の話であって、肉体の話ではない。
肉体は年不相応もいいところだ。
……私は誰に向かって話しているのだろうか?
まぁそんなことはどうでもいい。
その頃に瀧と生前仲の良かった魚人と出会った。
最初その魚人……デパスは彼が気に入らなかった。
ずっと探していた友を見つけたと思ったら、取られていたのだ。
いい気分はしないだろう。
だが、一緒に過ごすうちに仲良くなった。
決定打となったのは誕生日プレゼントをくれたこと。
今まで瀧にしか貰ったことが無かったデパスは、興奮のあまりホントの魚のように跳ね回っていた。
2人と1人は昼夜問わず、ずっと一緒だった。
國圉もだ。
サティの心は若干だか癒えてきたように思う。
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「せんせ、合ってる?」
「うん。サティは手先が器用だね」
ふふっと和やかな空気の中行われていたのは、解剖だ。
もう全ての言語を覚えてしまったサティは暇になっていた。
彼は國圉の仕事を知りたくなって、教えて貰っている。
今日は解剖の日だ。
メスとかハサミとかを使っていく。
瀧とデパスも興味深く見つめている。
2人は生きている頃、恐れられていた。
誰も太刀打ち出来ないぐらいの腕で殺す。
殺し屋……ではない。
ただの殺人鬼なのか。
過去を見るにそうだろう。
2人はよく殺した相手を解剖していた。
解剖する度、殺るのが上手くなっていった。
だが油断した。
そうして2人はぐちゃぐちゃの肉塊に成り果て、魂だけは現世を彷徨い続けた。
「瀧、デパス、どう?」
「上手い上手い!」
「綺麗だねぇ。初めてやったとは思えないよ」
2人が褒める。
國圉にも見えているが、声には出さない。
幽霊は見えるだけで声は聞こえないのだ。
解剖の授業は日が暮れるまで続いた。
束の間の休息はそう長くはなかった。
新着更新が約1ヶ月ないのはやばいっすね……現実がちょっと忙しかったもんですいません。夏頑張ります(* ˊ꒳ˋ*)
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【小ネタ】
棗はまだ誰も殺したことはないです。セインとフレアはやってます。まぁ殺らなければ殺される状況でしたからね。棗もいつか殺るのでしょうか。殺るとしてもよっぽどの事が無いとしないでしょうけど。




