片隅の記憶
ウドは相変わらず、激しい動きでセンティピーダーを攻撃しまくっている。
けど、心なしか表情がしんどそうだ。
フレアをちらっと見る。
「なぁウド大丈夫かな?」
「これ以上引き伸ばしたら死ぬな」
「まーじー?」
「こんなところで嘘をついても仕方ないだろ……激昂契約はⅡの感情を限界まで上げて、身体能力が大幅に変わる」
「半分知ってる」
呆れた口調で返すと、フレアに睨まれた。
キレ症。
「あの状態のときは体内の血管がずっと切れてるらしい」
「はっ!?マジで、えっじゃあ死ぬじゃん」
「まぁ今日はセイン様がいるから平気だろ」
そう言ってフレアはセインを指さした。
気づけば背中だけ起き上がっており、空に向かって手を伸ばしている。
ウドの方を見ると、しんどそうでは無くなっていた。
むしろ生き生きとしている。
「なぁエリンギの時も思ったが、あれ何やってんだ?」
「献血みたいな感じらしい。自分の血を相手に輸血させて、元気にさせる」
「器用だな」
「セイン様だからな」
フレアはふふんと鼻を鳴らすが、無視した。
何故お前が得意になるんだ。
不意に辺りを見渡す。
思わず目が離せなくなった。
多分違うかもしれない。
けれど、確かめずには居られなかった。
足が勝手に動く。
フレアの静止を振り切って、走る。
元から足は早い方だ。
すぐにその場所についた。
手を〝それ〟に伸ばす。
持ったのは黄色いリボン。
ボロボロになっていて、とても〝髪飾り〟としては意味をなさない。
僕はある一点を見つめた。
そこには拙い字で〝すかびおさ〟と書かれている。
「……すおー」
いつの日かに呼んだ名前を口に出す。
その瞬間、強烈な睡魔が襲ってきた。
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「なぁ」
「なぁに?」
「これ……あげる」
僕は勝手に盗んできた、黄色い紐をすおーに渡す。
すおーは少し嬉しそうにしながら、困ったように言った。
「なつ……ぬすんできたやつじゃないよね?」
思わず肩がビクッと上がる。
それを見てすおーは、はぁっとため息をついた。
「もう、見つかったら〝しんたいきょうか〟だけじゃすまされないよ」
「べつに……すおーにくらべたらましだし」
「つよがって……あっそろそろいかなきゃ」
「……………………」
「だいじょうぶ。しなない」
「でもこわ」
「こわれない」
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頬に冷たい感覚がある。
目を覚ますと、セインが顔を覗き込んでいた。
「何があった」
声は冷たくも温もりがあった。
声を出そうとするが、涙のせいで声が出ない。
「もう終わったから、休め」
タイミング良く髪のゴムが、プチっと音を立てて切れる。
顔に髪がかかり、表情は周りから見えなくなった。
2人がどこかに行く足音が聞こえる。
あっ。
置いていかれる。
手を伸ばす。
セインの足を掴む。
「……ルイ」
体が持ち上げられ、抱っこをされる。
僕は思い切り抱きついた。
「置いていかないよ……棗が裏切らなかったらね」
「お前が裏切ったら容赦はしない」
「…………ありがとう」
普段とは似ても似つかない、か細い声で発する。
ルイ越しに見た2人は、普段通りの表情だった。
そのまま蟲駆除隊の元へ行く。
蟲駆除隊の4人は草原に寝転がっていた。
「もうおれ立てなぁ〜い」
「はっ!えっ終わったの!?」
「いたい……」
「バラバラに喋らないでぇ……」
なんというか、僕たちよりもマイペースな感じに、少し楽になる。
トウモロコシはキリッとした感じから、ふにゃんとしていてギャップがあった。
言っちゃ悪いが二重人格だと思ってしまう。
そこに誰かが走ってきた。
顔をあげて、またすぐに戻した。
忘れていたが、ここは虫の草原。
虫の草原には虫人なる存在がいる。
人間に触覚や羽が生えたタイプと、虫がそのまま人間サイズになった2種類。
今目の前にいるのは紛れもなく後者だ。
僕は固く目を閉じた。
「これはこれは蟲駆除隊の皆様。いつもありがとうございます。おや、そちらのお方は?」
「あぁ今回は中々強い子が多くてですね、何デも屋の方たちに手伝っていただいたのです」
「そうでしたか、これはこれは ありがとうございます」
薄目で彼を見る。
やっぱりダメだ。
あの目の中に無数の目がある感じが苦手。
ここを出るまでずっと寝とこうかな。
そう考え、また目をつぶる。
気配を感じる。
良くない気配だ。
人間関係的に。
「ねぇねぇ〜なぁんで寝たふりしてんの?」
「虫嫌いだからだよ」
「そんな君にプレゼントってあっ」
少し焦ったような声が聞こえ、思わず目が開けた。
丁度虫が飛んでいく。
こいつは悪魔か。
どうやらルイが払い除けてくれたようだった。
流石は有能執事。
ボクらにも優しい。
厳密には執事じゃないけど。
やばい。
どうでもいい考えしか浮かばなくなった。
ポケットの中を漁る。
あった。
ビリッと小さな包みを開け、口に放り込む。
プリンの味をした飴は、頭の雲を取り払っていく。
やっぱり仕事終わりの糖分補給は格別だ。
「さて、皆様。もう暗いですから、今晩はこちらにお泊まり下さい」
優しい深い声が頭に響く。
声はめちゃくちゃ良い。
好きな人多そう。
でも顔見たら駄目だ。
トノサマバッタそのままの見た目をしている。
せめてウドみたいに触覚だけだったら……。
ってかここに泊まるのは流石に勘弁したい。
セインに届くか分からない念を送ってみた。
あいつは面白さを取るヤツだ。
絶対泊まるって言うだr
「じゃあお言葉に甘えて」
ですよね ですよね そうですよね 知ってますよ!!!
1%でも期待した僕が馬鹿だった。
せめて食事は普通がいい。
イナゴの佃煮とか蜂の子とかやめて欲しい。
本当にやめて欲しい。
絶対吐く。
未だ抱っこされた状態のまま、辺りを見渡す。
建物は草で出来た竪穴式住居みたいなやつと、よく見る木で出来た家が半々に並んでいる。
約10分ほど移動したんだろうか。
ついた場所は、一戸建ての綺麗な外観をしていた。
「あってる?」
「あってますよ。あぁそれと、お二方はいつお帰りになられますか?」
「ぼく達はまだ長居します。セッレイラは?」
「じゃあ明日の朝にでも」
「承知致しました。では、どうぞごゆっくり」
彼は頭を下げて出ていこうとした。
僕は彼を咄嗟に呼び止める。
「あの、名前」
「?私ですか?私はセロリと申します。どうぞごゆっくりなさってください」
セロリは深々とお辞儀をして、出て行った。
何でだろう……。
ぎゅっと心臓の当たりが痛くなった。
今週テストです。
良ければ評価をお願いしますm(_ _)m
【おまけ】⚠リバースあり
〝イナゴの佃煮を食べさせられる棗とさせるウド〟
「その箸を僕に近づけたら、ぶん殴るからな!!」
「そんなこと言ってぇ〜」
「いや冗談じゃないし」
「はい、あーん」
「ほんとにやめろって!」
「えいっ」
ーズボッ
「んむっ……」
「どう?おいし?」
「うっ」
ーごぷぁ
「あらら……リバースしちゃったかぁ」




