契約 ◤◢
棗視点
頭の中には恐怖にまみれた言葉が浮かんでは消えていった。
そんな思考の中、不意に口から言葉が飛び出る。
「気持ち悪」
頭は牛で身体は百足。
腕や脚は人間で、プレイング・マンティスとほぼ同じぐらいだった。
目の前で鮮血が舞う。
我に返ると、そこには片腕のないシュンギクの姿があった。
必死に血を止めようとしている。
明るかった表情は消え失せ、ただ痛みに悶えていた。
そんな空気をぶち壊す、抑揚の無い声でセインが指示を出す。
「よーし棗。腕取ってこーい」
「えっ僕!?」
「見ての通り、シュンとエリンギは動けそうもない」
「エリンギ?」
疑問を投げる。
「ほらあそこ」
セインが指を指した場所には上半身と下半身がぱっくりと切断されたエリンギの姿があった。
「えっ死なっ」
「心臓がやられてないから、出血多量で気を失うぐらいだろう。シュンはあのままだと確実に死ぬ」
淡々とした口調で喋る姿、心無い医者のように見えた。
「…………」
僕が返事に答えずにいる間に、どんどんシュンの呼吸が浅くなっていく。
意識的に両手の拳に力を込めた。
「行ってくる」
「セイン様、俺はなにか」
「フレアは私と一緒ね」
「はい」
フレアの質問に間髪入れずに答える。
セインの判断は間違ってないと思う。
フレアは左目にごつい眼帯をつけている。
確か……過去の記憶だから曖昧だが、誤作動でセンサーが起動した時に誰かを庇ったせいで、目に矢が刺さってたっけな。
救護室に運ばれていくフレアは非常に痛々しいかった。
回復魔術を使えば治せはする。
が、あまりにも時間が達すぎていて回復魔術を使っても意味は無いだろう。
「フレアくんはセインくんの護衛でもしてなよ〜」
「何 当たり前のことを」
「いいから早く行ってこい」
テンポの良い会話に思わずクスッと笑う。
「はいはい。じゃあ行ってきますね〜」
魔導書を開く。
「シュネル」
軽く地を蹴り、走り出す。
体全体がビリビリとしていて、髪や服が鬱陶しい。
あっという間にシュンギクの腕を回収し、戻ろうとした。
黒い色が落ちる。
速っ。
ーズドーン!
「やっば……」
地面が衝撃に耐え兼ねて抉られる。
急いでセインの元に戻ろうとした。
頭に何か生暖かい液体がかかる。
触ってみると、白い手袋が紅に染まった。
どこも怪我なんてしていないはずだ。
上に視線を向ける。
開いた目が閉じない。
天使のような白い羽が生えた奴がセンティピードの首に何かを突き刺した。
「アッハハハハハハ!!!!!」
不気味な笑い声が響き渡る。
光に照らされて、誰か分かるまでに時間がかかった。
多分ウドだ。
急いで戻り、シュンギクの腕をくっつけながら人数を確認したら、〝2人〟いなかった。
エリンギは気絶しており、シュンギクは痛みに苦しみ悶えている。
セインは何故か微妙な顔……怒っている。
フレアは何か考えている様子だ。
少し離れたところにトウモロコシがいる。
薄く微笑んでいる。
その姿は酷く不気味だった。
気の弱そうな第一印象からは、かけ離れた表情だ。
「……………」
綺麗な顔の眉間に皺が寄っている。
仲悪いのか?
不意に目が合う。
「くっついた?」
「ついたついた。後は動かせれば成功」
流石に髪が邪魔だ。
腰まである髪を1つにくくり、お団子スタイルにする。
自分をか弱く見せようと伸ばし始めた髪だが、邪魔すぎて切ろうか悩んでいた。
シュンギクの目が僅かに開く。
「大丈夫か?」
「うんっ……もう少しだけ……」
そう言ってまた目をつぶった。
少し呼吸が荒いが、多分大丈夫だろう。
まぁセインがいるから平気か。
にしても、ウドのことが気になった。
さっきまでは全然仕事しねぇな此奴とか思ってたのに、めっちゃ笑いながら刺しまくってんだけど。
なんかセンティピーダーかわいそ。
僕はセインの元に近づき、聞いてみることにした。
「なぁセイン……ウドに何が起こってんだ?」
「〝契約〟だよ」
「契約?書面上とはまた違う感じ?」
首を傾げると、彼の表情が少し暗くなる。
「うん。契約した者の人生を180度変えちゃうぐらいには」
「へぇ〜」
「身近な契約でいくと異種族間〝結婚〟だね」
「えっ結婚?」
「例えば、人間とヴァンパイアが結婚したら、人間の成長はそこで止まる。そして寿命が200年に伸びる。」
「まーじか……じゃあエルフと神だったら?」
「………………エルフの寿命が無くなる。神様は永遠の命を持ってるから、結婚したら大変だよ」
「まぁでも離婚したら良くない?」
「出来ないよ。寿命が尽きるまで」
「えっ」
空いた口が塞がらなかった。
僕は絶対無理だな。
「だから、離婚したかったら相手を殺すしかない。殺したら殺したで捕まっちゃうし……オススメはしないよ」
「なるほどなぁ……でウドは誰とどんな契約してるわけ?」
曇りがちだった顔がさらに曇る。
「ウドはトウモロコシと激昂契約を結んでる」
「激昂契約?」
聞きなれない単語に耳がに入る。
「契約は絶対に上下関係が生まれる。上をI下をⅡ(ユウ)とでもしようか。激昂契約はⅠがⅡに向かって、ある言葉を発した瞬間から始まる。その言葉は決まってないから……普段言わない単語、異種族の言語が多いね。契約が始まるとⅡの姿が変わる。感情によって姿は多種多様に変化するんだ。」
「なーるほど……じゃあ、なんでそんな嫌そうな顔するわけ?」
さっきからずっと気になっていた。
セインの顔は普段の明るい様子とは違い、心の底から拒絶するような様子だ。
非常に珍しいので、目に焼き付けておこう。
セインは目をつぶり、ゆっくり口を開いた。
「私は仲間に不必要なリスクを追わせることは大嫌いだ。もっとも安全な道しか進ませない。」
「あれは危なかっただろ」
「さぁて……どうだろうね?……激昂契約はⅡの感情を限界まで引き上げる。そして理性を失わせ、契約終了の合図がなるまで、あんな感じで暴れ続ける」
指のさす方向にはウドにより、センティピーダーの身体はボロボロになっていた。
「それもまた言葉?」
「いや、こっちは動作」
「ややこし」
頭をポリポリとかくと、フレアが隣に来た。
「なんだよ」
「別に」
「はぁ?」
「2人はエリンギとシュンギクの面倒見といてね。後、トモちゃんのことは嫌いじゃないから。勘違いすんなよ〜」
下をペロッと出してセインは、草の中に寝転がった。
フレアによると仕事をしてるらしいのだが……。
寝るのが仕事とか赤ん坊か此奴。
そんなことを考えつつ、僕はウドに視線を向けた。
虫の草原の回、誤字多すぎて申し訳ない……
良かったら評価お願いしますm(_ _)m
【おまけ】
「耳かきをしてもらう棗とするフレア」
「あ〜そこそこ、いい感じ」
「指図すんな」
「いっっった!!!ふざけんなクソ野郎!」
「ちょっ!暴れんな刺すぞ!」
「はぁ!?やんのかてめぇ!?」
「相手してやる」
「負けたらセイン貸せよ」
「断る」
「元はと言えばお前がセイン様のお手を汚す訳にはいけないのみたいなことい」
「さっさと勝負だ。お前が負けたらセイン様に20m近づくな」
「断るに決まってんだろ!このボケナス!」
「何だとこのアンポタン!」




