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星、自然、環境

実家のお茶はなぜ美味しいの?飲み水の長~い旅に思う事

作者: 池畑瑠七

 今はもう取り壊されて思い出の中にしかない、実家。

 前述したように父を見送ってから一人暮らしになった母が、ずっと倹しく暮らした小さな平屋。

 我が家から車で12-3分の所だったから、母の様子伺いや手伝いも兼ね子供たちを連れてよく遊びに行った。


 4DKの平屋は、母が一人で住むにはちょっと広すぎて寒かった。

 息子たちはおっとり優しいおばあちゃんが大好きで、しょっちゅう泊まっては一緒にゲームしたり、テレビを見たり、お料理したり。お泊りを楽しみにしていた。

 時には猫を連れて行って、キャンプや旅行で留守にする間 面倒見て貰ったりもした。

 なんやかやと理由を見つけては、ばあちゃんに世話になりつつ賑やかしていた。


 母の田舎から送られてくる干し芋とかリンゴや梨なんかを茶菓子にして、よく他愛のないおしゃべりをした。そんな時に飲むお茶やコーヒーは、何故だかとても美味しかった。


 それはどうってことない、普通のお茶。コーヒーは安いインスタントだ。勿論、水道水を沸かしてポットに入れてるだけの普通の水で、同じ市内の我が家で飲んでるのと全く同じ水だ。


 なのになぜだか母の家で飲むと、我が家のそれは違うのだ。スッキリと雑味がなく薫りも高くてまろやかに感じる。何杯でも飲める。もちろん水だけ飲んでも、凄く冷たくて美味しい。


 炊飯器で炊くごはんや料理の味も、自宅で同じに作ってもなんか味が違う気がしていた。

 ずっと、なんでだろう?って不思議だった。


 何が違うんだろ?


 ある時自宅で食器洗いをしていて、その答えらしきものが閃いた。

 我が家のシンクは水垢がすごくつきやすくて、すぐに白くなってしまう。水垢掃除がいつも結構大変なのだ。

 実家の台所のシンクがいつもピカピカなのが羨ましいなあ、って両方のキッチンに立つたびに思っていた。沸かしたお湯を入れる保温ポットも、ヤカンの内側も、うちのはあっという間に白く垢がついてしまう。

 

 対して実家のポットもヤカンも、いつ見てもスッキリ綺麗だった。別に母が綺麗好きでしょっちゅう磨いていたわけじゃない(笑)。磨く必要が無かったのだ。水垢が、さほどつかないからだ。


 そうか!カルキの量が違うのかも!

 水道水の消毒に使われている次亜塩素酸カルシウム、いわゆる塩素ってやつだ。


 有難いことに、ここは水が豊かでとても美味しい土地だ。

 山肌と地層で長い時間をかけ濾過された地下水を汲み上げた天然水が、最低限の塩素を加えたのちに配水池から全市へと水道管を通して届けられている。

 自然の恵み美味しいナチュラルミネラルウォーターが、蛇口をひねれば勢いよく流れ出てくるわけだ。

 ゆえに、ペットボトルの水を買って飲む人はこのあたりでは都会に比べたらきっと、大分少ないと思う。


 配水池からの距離が住まいによって当然違うのだけど、実家のすぐ上にその配水池はあった。すぐ、そこ。


 一方我が家はというと。うちよりも下に配水池があって大きなタンクがすぐそこに見えている。距離は実家のそれよりも全然近い。

 でも、うちが使っている水道水はそこから運ばれてくる水じゃないのだ。なんでって、うちの方がそのタンクよりも標高が高い場所にあるから。


 我が家の蛇口から出てくる水は、ここよりも大分標高が上の方にある遠い配水池から流れ下ってきている。

 うちはその経路の最末端にあたる場所なのだった。


 地下に埋設された水道管の中を長い長い旅をしてくる水が運んでくる、残留塩素=カルキの量。

 やっぱ最も上流の汲みたてのそれと、末端のうちのではちょっと違ってくるんじゃないか?健康に影響ないとは言え、明らかに違う水垢の付着具合はそれを物語ってる気がした。


 実家のお茶やインスタントコーヒーがウチで飲むよりも美味しく感じたのは、そのせいなのかも!

 

 と思い至って、かなりスッキリした(笑)。


 あとで知ったのだが、どんなに美味しい天然水でも水道水は必ず塩素を使い消毒しないといけないと、安全のため法律で定められているんだそうだ。

 

 うちのすぐそばの配水タンクでは、毎日のように水道局の人が点検に来ていてメンテナンスを怠りなくやってくれている。

 時折、大きなディーゼルエンジンの音が辺りに響きわたる。多分、災害時や停電などに備え定期的に非常用発電機を動かして、揚水モーターを回しているらしいことが分かる。


 ディーゼルの賑やかな音が長時間するし、煙が流れてきて匂う事もたまにある。けど、毎日の生活や命の要を支えてくれる「ライフライン」と、それを誠実に保守してくれてる方々に、ほんとに有難いなあと感謝の想いが湧いてくる。


 この地の自然の恵みにおおいに感謝しつつ。

 安心して美味しくそれを飲めるって事、毎日当たり前のように届けてもらえるってことは、決して当たり前じゃない・・・。

 保温ポットに斑にこびりついたカルキを見て、なんかそんなことも想った。


 他愛ない話で笑いあった、いつも変わらない穏やかな母の笑顔と、マグカップの温かさを思い出しながら。

 さて、もう一杯コーヒーを頂くとしようかな。


 実家で飲んだ味にはちょっと及ばないけど。ポットのお湯で淹れる、いつものクリー〇入りインスタントだけど。やっぱ美味しいんだな、これが(笑)。






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― 新着の感想 ―
[一言] お水がおいしいとなんだかしあわせな気持ちになりますよね(´ω`*) 海外だと水道水が飲めない所が多いですし、日本は恵まれているなぁと思います。 お茶やコーヒーもおいしく感じる、それはお水もそ…
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