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トントンとお父さまの書斎をノックする。

「入りなさい。」

お父さまの明らかに何かほかのことをしながらの返事が聞こえて部屋に入る。


お父さまの机には書類が山積みで!

なんてことを期待しているかもしれないけれど、書類なんかない。


お父さまは仕事で紙を使わない。

うちでつかわれている、魔法使いと科学者たちが作ったツールは

声を使って、目の前に必要な資料や情報、会議なんかすべて執り行える。

だから、すべて仕事の様子が宙に浮いているような感じに見えてる。


最近は、脳波でと言って、

頭のてっぺんに棒の様なものを立てて想像したものを

そのまま行えるツールもおじいちゃんが開発したんだけど、

あまりの見た目のダサさから、デザインを再考しているところ。


「メイリア?きいてるか?」


「あ、はい!聞いています!」


「そうか、なにやらぼそぼそと独り言を話しているようだったが?」


「いえ、ちょっと考え事を。」


お父さまは、はぁ、と言ってあきらめたような顔をして話を続ける。


「考え事な。で、最近はメイリアの事業はどんな感じだい?」


「ちょうど、それを話そうと思って考えていたんです。


 前回をアドバイスを受けて、

 レイとアラティに仕事を任せることができるようになりました。

 この間も2週間わたしが休んでみたのですが、

 うまく回り、何の支障もありませんでした。」


わたしはうれしくて、おもわずニコニコしながら話した。


「おお、それはすごいじゃないか。

 で、2週間休んだということだが、何してたんだ?」


「2週間休むことができたので、

 おじいさまの開発の手伝いと、

 新たな事業を始めるための準備をしていて。この間も。」


お父さまがまた、はぁ、とため息をつく。


「メイリア。2週間自分の事業から離れていても、

 違うところで働いていたら、

 それは休んでいないってことだよ。」


「あ、でも。ついつい楽しくて。」


「仕事がたのしいのはいいことだし、

 お前が好きなことも知っているんだよ。

 でも、そのメリハリだけはつけないといけない。」


「はい、がんばります。」


「もう何年間もそう言っていて、お前はできていないんだよ?はぁ。」


お父さまはまた、ため息をついて、おでこに手を当てる。

怒ってはいないみたいだけど、なんか少し言いづらそう。


「メイリア、わたしはこれからお前にミッションを与える。」


ミッションなんてなんか楽しそうじゃないと思ってほっとして

お父さまに笑顔を向けた瞬間。


「メイリア、明日からお前は無職をしなさい。

 商売に関するすべての行為はこの一年間禁止。」


「え?なに?どういうことですか?わたしの商売をやめろって?」


 意味が分からない。

 そんなにわたし今まで行けなかった?ダメだった?

 今までしてきた様々な失態が走馬灯のようにめぐる。ダメ!

 ショックすぎて口がぽかんとあいているわたしが話し出そうとした瞬間に、

 優しい目をしたお父さまが微笑みながら口を開く。


「お前はなんでもできる。

 お前は理解力が高い。

 お前はコミュニケーション能力が高い。

 しかも空気まで読める。

 この家、きっての秀才、天才なんだ。」

 

へ?は?ほめられている?

私ダメじゃないの?走馬灯グッバイでおーけー?


と思ったら、お父さまが突然立ち上がり、

今まで見たこともないポーズを決める。


「でもな、

 そんなんだから、そんなんだから、

 お前はダメなんだ!!

 もう、メイリアがちゃんとやらないから!

 

 今日から、お前は無職になりなさい。

 

 これから1年間、働いてはいけない。

 これから1年間、家に報告以外でかえって来てはいけない。

 

 そして、この一年間でお前の”最愛の人”を見つけて

 連れて帰ってこなかったら、今後うちで仕事はさせない。」


へ?は?ぺぺっぽぽぴ?


ふたりの間に無音の時間が流れる。


さっきまでほめられていたよね?

だから、ダメで、家からでて、なおかつ働いちゃいけなくて?


「え?excuse me? say again?」


「もう嫌だ!あんなこともう一度親に言わせるんじゃない!」


お父さまがこんなにぷりぷり怒っているのはじめてみたわ。

リリィそっくりだわ。


「はぁ、お前は知らないかもしれないが、

 我が一族には代々当主に受け継がれている本がある。

 そこに書かれていることを破ってはいけないとされているんだが、

 お前はそれを破ったんだ。仕事を休むこと。」


「え?でも、いままでは特に何も言われなかったじゃない?」


「いままではお前の正規の仕事ではないから、多めに見てきた。

 今回初めて、メイリア名義の事業ができたからもう無視できない。

 しかも、家族の全員がお前に、忠告したが聞かなかっただろ?」


「でも、でも、働かないとか、家出るとか、

 最愛の人見つけるとかってなに?!」


「あー、それはな。これを書いた初代の格言は実はもう一つあって。

 【愛あるところに、休みあり。ラブアンドピース】。

 愛する人がいたらそのために必ず、時間を作る。

 っていうことで、休みを取らないものには

 最愛のパートナーを作るというミッションが

 課させるようになってるんだ。」


おーーーーい!おいおいおい!

初代どんだけラブリーなんだよ!!

LOVE & ピーーースじゃないんだよ!


「なんじゃそりゃー!!今までの人たちは?」


「いや、いままでお前のように仕事で休まなかった人なんでいなかったから、

 たぶんはじめ施行されたんじゃないかな?」


「でも、そんなの現当主のお父さまがどうにかできるんじゃないの?」


「いや、これはな、

 初代の親友だった大魔法使いがしっかりと本に魔法をかけているから、

 簡単には変えられないんだよ。」


 こんなところでバリバリのファンタジー!!!

 普段、魔法魔法してないのに、こんな時だけなんでだよ!


 と、言いながらも、翌日わたしはこの家を出ることになった。




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