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わたしが幸運だったのは、わたしの家が代々続く商家だったこと。
うちは代々続くとは言っても作ったものを引き継ぐことはなく、
それぞれ一代で新たな事業を立ち上げる。
自分で作った事業は一緒に働いている人の中で
一番優秀な人間にわたし、そのあともその事業の利益の一部を得ている。
そこに、女も男も関係ないのでももちろんお母さまも事業を立ち上げている。
うちの家訓は
「しがみつくな、分け与えろ」
その家訓に従って、うちの家のお金は使われている。
この町にある治療院、学校、インフラなどはすべて我が家の資金で
作ったり、寄贈したりしたものだ。
20歳のころ、結婚をしたくない宣言をして以来、
わたしは15年間みっちりとはたらいた。
もちろんはじめは家族の仕事の手伝いから始めた。
お父さまはインフラや物流事業の展開、
お母は商品やサービスを売る能力を身に着ける教育事業を行ったいた。
もうすぐ80歳になる祖父は商品や機械の開発を今でも行っている。
決まった時間にしか、働かない。
休みはしっかりと取る。
自分がピンときたことはとことん行う。
にもかかわらず、あれだけの利益と貢献度。
一緒にはたらくほどに家族とは思えない、ただのすごい人だった。
でも、だからこそわたしはその仕事の面白さに夢中になっていった。
夕食時のこと、母がそわそわとしながら話し始めた。
「ねぇ、メイリア。この間わたしシトリに出かけたでしょ?
そこの息子さんがとてもステキでね。」
「そう、それはよかったね。どう素敵だったの?」
「快活で、仕事熱心、社交的でね。ああいう人だったら、小さいこと気にしないと思うの。」
お母さまはちらりとうかがうような目でわたしをみる。
はぁー。お母さまが私のことを想っていることはわかるのだけどね。
「お母さま、わたしにすすめるではなくて、リリィにその人どう?わたしは今はお仕事が楽しいからね。」
「あらそう?ん-、リリィちゃんあってみる?」
「お母さま、ありがとう。でもわたしはお母さまたちのような恋愛結婚がしたいから遠慮しておく。
ねぇ、ふたりの出会いをもう一回聞かせて。」
そういわれたら、お母さまもお父さまも喜んで若いころの話を始めた。
妹は私のほうをみて、ウインクをする。
やってやりましたぜ。という意味ね。
妹はわたしのことをとても気にかけてくれている。
わたしが姉さんを守るし、養ってあげるからねと言ってきかない。
わたしからすれば、のびのびとしてほしいし、
なんとも思っていないのだけど。
本人がしたいのだから仕方ないと最近は放っておいている。
今回みたいに助けてもらうことには感謝もしているしね。