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グロとミーナの平穏  作者: グロとミーナの平穏
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第4話

急激な空腹感で目を覚ます。


突き動かされるように食糧に近付くと口いっぱいに頬張り食事を済ませる。


食事に夢中の間は紛れるが空腹感はそう簡単には収まってくれない。


しばらくして欲の支配から脱出した俺は、記憶を遡りあの時の感覚を振り返ることにした。


どうやらジョセフの説教中意識を失った俺はママウルフの所に帰されたらしい。

起きてすぐママウルフが居てくれたのは正直助かった。


しかしジョセフのヤツもう少し早く剥がしてくれれば良かったものを危うく死にそうだったぜ。

まぁ見付からないようにしたんですがね…

よく考えなくても自業自得だな、ジョセフありがとう。


さて、ジョセフの土捏ねを振り返ってみよう。


危うく死にそうな気配がしたが、あれが魔力に通ずるモノなのだろう。

感覚的には体温に近い、100m走を全力で走ったときに感じるドクドクした熱が無理矢理に引き出され、吸いとられるようなものだった。


吸い付いた指先は熱を帯びているのに腕の胸から指先までの熱は段々と消えていき、指先の暖かさが無くなると指先から血の気が引くように寒くなっていく。


底冷えと言うよりは身体の中心から冷えていった後、指先から凍える様な不思議な感覚だった。


恐らくあのまま中断出来なければ死んでいた可能性があっただろう。

熱を奪われ緩やかに死ぬ、まさか転生してしばらくして自殺しそうになるとは思わなんだ。


もう少し慎重に検証しなければ……


しかしまぁクヨクヨしても仕方ない上、同じ状況なのだとすれば尚更に急がねば彼女が心配だ。


どうすれば良いか……

あの感覚をこの場で安全に再現する方法は無いだろうか。


まず現状はまだ寒さが残るものの空腹感が収まるに従って熱が戻ってきた。

ここから考えられるに飯を食えば寒さを多少は補える可能性がある。

まぁ寝ることで動けた訳だし睡眠で多少は回復した可能性も有るが、、、


しかし、ジョセフの所ではママウルフは居ないし補給は困難だ。

持ち歩くことが出来れば良いのだが、現状水筒も無ければ器すら無い。

解決するにはジョセフの場所までママウルフを移動させるというのも有るが、ママウルフはここから移動する事はほとんど無い、食事かトイレの時に少し離れる程度で、俺が連れ戻される時も近くまで来ないとママウルフには連れ戻されない事を考えるに難しいだろう。

他の兄弟達はまだ覚束無い様だし尚更だ。


となると逆にあの土塊を持ってくることは出来ないだろうか。

そもそも初めて見た時は完全に土に見えたのだ、それを捏ねていた次の日には一回り小さい鈍い銀の塊になっていた。

つまりは土の中の金属を魔力で取り出すか、あるいは魔力で土を金属に作り変える、またはこの世界では魔力を帯びた土は金属になるとか。


そう考えれば、土を持ってくることの方はそこまでハードルが高くない様にも思える。

しかし、土の中の金属を取り出す方式だった場合土の種類が大事になるだろうし、後者だった場合はそもそも金属にすらならず魔力の使い方がわからない俺には出来ない可能性が高い。


よし!とりあえず土捏ねてみよう。

どちらにしろ触ってみねばわからん、魔力の出し方は全くわからんが前回は吸い出された。

魔力を吸い出す金属が有るならば試行回数を増やせば何時かは魔力を吸われるはずだ。


100個位捏ねてみて違いを確かめてみよう。


①そう思ったものの、土を掘ろうにも力がない上にここら辺はそんなに柔らかい土など無い。


よく考えて見れば土塊に見えたものがそもそも鉱石であった可能性すらある。




②手っ取り早く寝床の土を掬おうと試みるが、硬くてとても握れる様な量は掬えない。


うーむ、そもそもこの身体だと掘るのはもちろん、掬うことも難しいな。


寝床をハイハイで徘徊しながら柔らかい場所を探す。

しばらく徘徊すると少し柔らかい場所を見付けることが出来た。

比較的やらかいけど、やはり量を採るのは無理があるな。

寝床ではなく、別の場所から調達する方が現実的かもしれないな。


こうなってくると、作業量だけであの鍛冶の原理を探るのは厳しいか。

一旦あの時のジョセフの土塊を振り返ってみよう。


あの時のジョセフが捏ねていた土は茶色は微量でほとんど暗い灰色に近かった。


土の性質をつかむうえで重要な手がかりは色と質感だ。

ドキュメンタリー番組情報な上にうろ覚えだが、大きく違ってはないはずだ。

土の構成成分のうち、腐植は黒色、砂は白色、粘土は黄色や赤色だったかな。

土の色は、腐植、砂、粘土の量のバランス、粘土の種類によって決まるとかなんとか。

あれ?金属無くねとも思うがまぁとりあえず置いておこう。


ジョセフが捏ねていたものは、粘土質で色は暗い灰色がメイン。

土だとすると、粘土質と腐葉、砂がメインになりそうだがこれは砂くらいしか金属にはならなそうだ。


土から金属になるとすれば砂や、砂鉄のような微細な粒がメインのはず。

だが、あの時のジョセフの手元にあったのは粘土の様に見えた。


そうなると、あの時は既に魔力によって砂粒や鉱物が纏まった後だったと考える方が自然だ。



壁は固く、利用できそうもないが鉱物の固さを考えるとこちらの方が良さそうな気もする。


壁などは崩落の可能性もあるからはじめから考慮するべきじゃないか。


今まで動き回ったなかで見た色の土は茶色のものが多かった、壁に関しては茶色、白色、灰色これらの色が基本だった。


固さ的にも色的にも壁の方が鉱物っぽかったんだが、採掘する手段もないしなぁ…


壁も今まで手をついて歩いたことも多々あるが特に異変があったわけでもないし、やはり特殊な土なのか?


うーむ、意志疎通が計れればジョセフから教えて貰うんだが、いかんせん何を言ってるのか未だにわからん。


言語の習得は必須課題だな、これからの情報収集にも必須となってくるだろうし。


まぁ狼男に教えてくれる奴が居るかはわからないが…


よし、決めた、土の採取をしつつ探索ついでにジョセフの所に行こう。


あしげくジョセフの所に通いつつ、言語の習得と魔力の使い方を解明を当面の目標にしよう。


いざ行かん、ジョセフズ洞穴!


前回の道筋を辿りつつ、道中の土や壁の質感を確かめ進んでいく。


意識を向けて観てみると、壁の所々には削った様な凹みがあり亀裂を入れて割るように採掘したような跡が観て取れた。


視界が低かったから気付かなかったけど、こうしてみるとしっかり採掘してるようだな。

そうなると土ではなく鉱石だったのか?


その他にも、壁だと思っていた場所が四隅に隙間があり、確認すると崩れた坑道でだったり。

白色壁は所々に茶色の部分があり、記憶にある鉱石のようなものだったり、灰色の箇所を軽く擦ると金属質であることを確認したり。


見方を変えてみると色々な見落としが確認でき、有意義な移動となった。


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