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グロとミーナの平穏  作者: グロとミーナの平穏
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第2話『グロと異世界転生』

「グルルルル………」

初めて聞いたのは低い唸り声だった。


周りを見渡すとボヤける視界の中、見えたのはピンクの塊が5つ蠢いている様子だった。


身体は鉛のように重く、身体中に粘張度のたかいゼリーのような液体が纏わりついていた。


「うぅあ…うぁ……」

舌も回らず手足も動かしにくい、ひどい頭痛も相まって立ち上がりにくい。


蠢いていた塊を良く見てみると、毛の無い犬のような身体のバランスの悪い生き物らしく、各々立ち上がろうとしているようだった。


"とりあえず立たなきゃ"という気持ちに突き動かされ、鈍い身体を立ち上がらせようともがく。


足がもつれて上手く立てず苛立ちを覚える。

(なんだこの身体、しっかりしろ!)

手で膝を抑えながら力一杯踏ん張って立ち上がると、視界が高くなり周りの様子が少しわかる。


薄暗く地面は少し湿っており天井は高い。

生えているキノコが巨大でないならば天井自体はそこまでの高さでもないかもしれない。

香る土の香りと獣臭さが鼻につくが少しボヤけた香りの様にも感じる。

なるほど…どうやら洞窟のような場所に居るらしい。


状況を確認すると、不意に後ろから視線を感じ振り返る。


そこには……視界一杯の大きさの獣がいた。

鋭い牙、灰色の毛並みに鋭い眼光の青い瞳。


直後、俺は死を覚悟した。

開く巨大な口、生暖かい吐息。

次の瞬間…



ベロン…

その化け物は俺を舐め回し始めた。

ザラっとした舌に痛みを感じながら、必死に逃げようとする。

しかし情け容赦なく巨大な獣は舐め回す。

指のある大きな手でがっしりと掴まれ、逃げることは出来ない。

ほうほうの体で抜け出すと他の塊達も立ち上がり始めるのが見えた。


一匹また一匹と拙いながらも立ち上がる犬の様なもの達。


ここまで来れば俺でもわかる、どうやら俺は狼人間になったらしい。

神らしきものとの邂逅、自身の死、そして転生…

怒涛の変化だったが、とりあえず考えを整理する時間はありそうだ。


まずは神らしきものが同じ場所に産まれさせるのは難しい様な事を言っていたが、確認しよう。


「ぅぁ…あっ…あぅ……」

薄々わかっていたが喋ることは出来ないらしい。

産まれたばかりの俺にはなんとか立ち上がることと、周りを見渡す事位しか出来そうにない。


もし彼女がここにいるのであれば、文字であれば反応を示してくれるかもしれない。

声がダメなら文字だ、こういう時はだいたいそう相場が決まってる。


そうと決まれば行動だ、幸い寝床のような出産場は暖かく地面も少しだけ柔らかかった。

小さな手を駆使しながらミミズの様な日本語を描く。

[この中にみーは居るか?俺はグロだ、居るならなんでも良い合図をしてくれ]


文字に注目してくれるように出来る限り大きな身振りで他の

兄弟達であろうピンクブラザー達にアピールする。


ディスイズザパニーズ漢字!さぁ文明の力に震えろ!!

明るく取り繕ってみたものの、兄弟達は立ち上がるの事に必死で視界に入ったその文字に反応はなかった。


やはり神の言うとおりここに彼女は居ないらしい。

少し落胆するが、元々神から言われていたことだ。


気を取り直して、状況を整理しよう。

1.神らしきものが言っていた事は本当なことが有った。

2.どうやらワーウルフか、それに近い種族に転生したらしい。

3.現在は洞窟の様な所の中で、自分は産まれたばかりで歩き回ることすらおぼつかない。

4.彼女はここではないどこかに転生している可能性があるが転生していない可能性もある。

5.神の口振りから恐らく何かをやらせたい。

6.神は都合の悪い事は隠す、あるいは誤魔化している。

7.魔王は存在するが現在は居ない、討伐済みの可能性がある。

8.魔王以外の原因で世の中が荒れている可能性がある。


どれもタラレバ、可能性の範囲を出ないことが多いが概ねこんな感じか……

抜けも多いが、おいおい考えていこう。

わからんだらけの中で、思考だけ巡らせても意味はない。


よし、まずは犬の生態から考えて48時間以内にしなければならないことがある。


授乳だ……食わねば免疫力が落ちて早々に死んでしまう確率が上がる。

この身体が即座に食い物でも食べれれば良かったが、食い物はない上、本能なのかなんなのか引かれる物がある。


先ほど蹂躙された主に振り向くと、他の兄弟達が向かっているのが見えた。


待て!俺が先だ!こんなところで死んで居られん!!

よこせ免疫力、唸れ俺のお腹!!


動かしにくい手足を必死に動かし、ママウルフにたどり着くと体毛にしがみつき登頂する。


目的の場所に到達すると、なんということでしょう手を使えません。

登頂の匠はそこで考えました、顔を埋めることで手を使わずに吸えるのです。

あの煩わしかった両手によるかき分けは必要なくなり、勇気を出すだけで吸うことが出来るようになったではありませんか。


現実逃避はこれくらいにしておこう。

しがみついてる体勢上、顔を埋める位しか思い浮かばんのはこの際まぁいいとして…


なんかちょっとバッチくない…?

毛もわっさわさだし、もふるのは全く問題ないんだけど、ちょっとカピついてません?


ケモナー授乳プレイ……余計なこと思い付いちゃったよ……

しかし、背に腹は変えられん……

男は気合いと根性、そして少しの大胆さ!


俺は命を吸っているんだ!何もやましいことなどない!!

吸えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!

勢いを付けて一気に吸い込むと物の数吸いで異常な満腹感に襲われる。


もう飲めないのか…俺の身体大丈夫か?

栄養失調とかで死んだりしないよな……


南無三…

明日はもっと良い日になるよねハム次郎…

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