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グロとミーナの平穏  作者: グロとミーナの平穏
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第0話『グロとみかずきの崩壊』

こちらは前日譚となりますので異世界にはまだ行きません。

あらかじめご了承ください。

『グロさーん、バスお昼までしか走ってないみたい(泣)』


仕事帰りのある日、通知にスマホが光る。


『そうなんか、車で迎えに行こうか?帰ってから向かうからちょっと時間かかるけど、待てる?』


『申し訳ないからいいよー』


絵文字も何もないシンプルな文字列は彼女が不安で強がっているサインだ。


『ついでに段ボールも捨てに行けるし問題ないよー』


彼女があまり気を使わないように、他の用事を絡めて返事を書くと、しばらくの間が空いて控えめに返信が来る。


『うーん…今町外れのゲームショップにいるんだけど…』


『あー、あそこら辺の?おけおけ、帰ったらすぐ向かうよ』


一度も行ったことは無いが、彼女の不安を考えれば大したことはない、足早に家に帰ると簡単に荷物をまとめて車に乗り込んだ。


「ゼロ、教えてくれ俺は何処に向かえばいい!!」


「目的地への到着は19:52分です。」


「3~40位ならまぁ、行けるだろ運転歴半年を舐めないで貰いたい!」


カーナビと軽く小芝居を交え、疲れを振り払っていざ出発。


いつもの小路を抜け、広い道に出てしばらくすると、街灯が少い大きな道へ。


そこから更に進むと徐々に徐々に街灯は減り、道幅も狭くなっていった。


「おいおい、車通りは多いのに街灯少いし走りにくいな…」


視界が悪くなるなか、ライトをハイビームに切り替えて、まだ少し有る街灯と店の光を頼りに進んでいった。


「暗……。街灯無いの怖っ!」


ついに街灯が無くなった頃、道はハイビームを呑み込んで大きな口を開いて待っている様だった。


前の車とカーナビを頼りに小さな小路を抜けると、大きな店舗の明かりと十分な明るさの大通りが見えた。


「目的地周辺です、運転お疲れ様でした。」


サイドブレーキを掛けて見上げるともう彼女は笑顔で駆け寄って来ていた。


「一番くじ有ったよ!グロさんが欲しがってたガ○ダムのヤツ!!」

彼女は車のドアを開けると大きめの袋といつもの手提げカバンを持って嬉しそうに乗り込んだ。


「あー、それでここまで来たんかぁ。寒くなかった?」


「ちょっと肌寒かったけど大丈夫やったよー。」


「そっかそっか、それならエエけど…寒かったらなんか暖かいものでも買ってくるからいいや?」


「うんー、それよりさ何があたったでしょー?(笑)」

ニヤニヤしながら自分の成果を見せたい様子の彼女は胸に抱えた袋を俺に少し見せないように聞いてきた。


「えー、なんやろ」


「マァグカップゥー!」

某未来の猫型ロボットの様な発音と共に、ポケットならぬ袋から四角い箱を取り出しこちらに見せてくる。


「おぉ!νガ○ダムのマグカップやん!昨日言ってたヤツ!!」

SNSで見掛け、2人で眺めていたそれを受け取り確認する。


「それと、マァグカップゥー!」

「かぶりかーい(笑)」

間髪入れずに突っ込みを入れると、少し申し訳なさそうな顔をして

「実は何回か引いてみたんだけど、プラモは1回も当たらなくて…後はコレだけなんだー。」


というと袋の中身を見せてくる。

その中には、2つのマグカップ、イメージボードが2つ、ファイルセットが2つ入っていた。


「えっ、このボードめっちゃカッコエエやん、激アツやわぁ、ファイルも無駄にならんし完璧やな!」

迫力満点のボードはいつもの映像で見る物より、より鮮明で力強く、そして何より可愛く、カッコ良かった。


「良かったー、ここまで来たかい有ったよー」

「ありがと、結構ここら辺暗かったし怖かったやろ、遅くなってごめんね。」

「全然大丈夫ー、喜んでくれて良かったー。」


「バスなかったって言ってたから、夜道で泣いてんじゃないかって思ってたんやぞー(笑)」

「そんな事無いよー…あっても、ちょっとだけね…。」

少し照れくさそうに、はにかんだ彼女が笑う。

「やっぱり、怖かったんやろー。ありがとうね、わざわざ探してくれて。」

「えへへ…。」


「よし!なんにせよ、お腹もペコペコやし帰ろっか。」

「うん!」

もっと明るくなるように、怖さを吹き飛ばすように、少しでも良いものでも食べて帰るべく車を走らせる。


なににする?粉ものなんかどうかな?寒いし鍋は?お肉もいいな、最近お魚食べてないね。

なんて他愛もない事を話ながら、向かう途中に目星を付けておいた店に立ち寄る事にした。


カランカラン…

「すいません、今は営業時間を短縮しておりまして…。」

「あちゃー…そうなんですか…また寄せさせていただきます。」

「大変申し訳ありません、またのご来店をお待ちしております。」


「そうだった…時短営業って忘れてた…」

「ねー。あんまり外食しないからすっかり忘れてたねー…」

2人で肩を落としつつ車に乗り込む。


「あー、残念だけど帰るまでお腹がもちそうにないから、コンビニで何か軽く食べてから帰ろっか。」

「コンビニ!ポ○カあるかな!!」

「あれ?発売日来てたっけ?」

「来てたよー、先週末ー」

なにを隠そう我等はカードゲームに絶賛ハマり中であり、スキあらば在庫を確認している。

転○ヤー死すべし…

「さすがに無いんじゃないかなー。」

苦い記憶が脳裏をよぎり、歯切れの悪い返答を返すしかなかった。

「えー、あるよー」

彼女はパックの一期一会派、俺はシングルカード派仲は良くても合わせ過ぎる事はない。


そうこうしている内に近くのコンビニに車を止め、店内を見回り始める。

「ないねー」

「ないなぁ、まぁ発売日から2日たつしやっぱり無いよなぁ…」

「あ、このパスタ美味しそー」

「いいね!こっちは焼き鳥100円セールか…旨そうだな…」

お目当てのカードは無かったが食欲をそそるラインナップに、いくつか手を伸ばし車内に持ち込み食べることに。


美味しい!あさりたべる?焼き鳥うめー。このジュース旨いよ、一口どう?予定とは違ったがそれもまた楽しく、すぐに食べ終ってしまった。


「ふぅー、食った食った。飲み物でも追加で買ってくるよ、寒いしね。何が良い?」

「えー悪いよ………じゃあ、ミルクティー!!」

目線で遠慮を封殺し、オーダーを引き出す事に成功した俺は再び店内に戻って飲み物を買ってくることに。


店内を見渡すと、ちょうど品だしが始まっていたようで新しい品々が並んでいた様子だった。


補充されたまだ暖まっていない物を避けつつ、目当ての物を手に取りレジに進むと、そこには品だしで出されたばかりの新弾カードが購入制限がかけられ売られていた。


「あっ!これください!」

「お一人様10パックまでとなりますがよろしいですか?」

「はい、10パックお願いします!!」

またお越しくださいませを背に受けながらドアをくぐる。

彼女の喜ぶ顔が目に浮かんで、羽が生えたような足取りで戻った。


「はい、これミルクティー」

努めてにやけるのを抑えながら彼女に手渡す。

「ありがとー」

「実は…まだあります!」

「え?なになにー?」

「気になる?気になっちゃうかー(笑)」

少しとぼけた顔を見せる彼女に思わず意地悪したくなるが、早く見せたくて喜んで欲しいのが勝って。


「じゃーん!新弾です!」

「え!!さっきなかったのに!!」

「ちょうど商品が来たみたいで店頭に出てたんだよ。」

自分がしたわけでもないのに渾身のドヤ顔を披露する。

「ぷっ…なにその顔。そんなおもしい顔せんでー。」

「おもろい顔ちゃうわ!ドヤ顔やねん!誰の顔が大道芸のピエロや!」

「そんな事言ってないよー…ぷっ…また変な顔せんでよー。」

「変な顔なんてしてないわ!真面目な顔や!ほらスッとしとるやろ!!」


マジメな顔じゃないよー。真面目なんですー。変な顔ー。誰の顔が出荷前の豚やねん!そんな事言ってないよー。


「今日も良い日だったね。」

ひとしきり笑った後、彼女がポツリと漏らす。

「ホンマにね、最近幸せやんね。色々有るけどさ。」

「そうやねー、こんなに幸せやとなんか有りそうで怖いよねー」

ニヤケ顔全開で思わず釣られてこっちもにやけてしまう。


「そんな事無いよ、今まで大変やったしそのお返しだよ。」

「このまま居れたら良いね。」

「そうやな…さぁ、そろそろ帰って明日も頑張ろう!」

「そうだね!」

「明日も良い日にしよう!」

「おーー!」


明日も良い日になる、そんな予感も、もっと先も二人で乗り越えていこうとしていた気持ちも、当たり前だと信じて疑わなかった。




そして、俺たちは………



初めまして、最後まで読んでいただきありがとうございます。


執筆活動は初となるので鈍亀更新でご迷惑お掛けしますが観ていってくださると幸いです。


誤字脱字等のご指摘いただけますと、主に私が喜びます。


ドMではございません。


頑張って更新していくぞー!

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