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ALUMISに願いを  作者: 鬼桜天夜
第1章 「鎖縛に花開くダイモンジ」
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仕事仲間 Part.2

静かな間が永劫とも呼べる時間流れた。いや、実際数秒しか過ぎていないのだけど。


「はい?楓慎さんが、レグリアス??まっさかぁ!ねぇ、楓慎さん」


「いや、彼は合っていますよ。僕はレグリアスです、特殊な事情付きですが」


「・・・本当(マジ)ですか?」

たっぷり時間を置いて聞き返す。それに対し彼は真剣に答えた。


「マジです」


「えっと、特殊な事情って・・・?」


()()()を見てもらった方が早いですかね、二人とも!お客様にお披露目です!」

掛け声が終わった刹那、楓慎さんが出入りしていた扉がとんでもない音を出して開いた。三人揃って後ろを振り向くと、そこには似たような顔付きの男女が居て、女の人だけ笑っている。

女性の方は、会社員の人にしては若々し過ぎる。という事は、彼女がアルミスなのだろう。髪型がサイドだけ長く、後ろは普通のショートカットになっているので、印象に強く残る。その逆と言っては失礼だが、男性は大人しい、冷たい雰囲気だ。


「社長!もしもしもしや!私達をお呼びかな!」


「シムル、近くで騒ぐな」

楓慎さんは彼らに近寄り、手で指した。


「紹介させてください、彼らは僕の電脳人間(アルミス)。イアン・シムル。兄妹の戦士、これが特殊な事情の正体です」

兄妹の戦士・・・?という事は、アルミスが二人セットなのか?


「わぁ!ライラちゃん!と、初めましての女の子が居る!!」

妹の方がぐんぐんと私達が座っているイスに迫っている。私は奥に居たので良かったが、ライラさんが居なかったら、きっと質問攻めになっていただろう。現実に、目の前でライラさんは「元気にしてた?私はしてた!」とか、「ライラちゃん静かーな人だから、他にもお友達出来てて、私も嬉しいよ!」とか、「いつか買い物一緒に行こーね!何なら明日行く?」という具合に、立ち上がって仲良く?喋っている。

桐生も続いて立ち上がり、楓慎さんに対面する形になった。私もそれに続き、楓慎さんとお兄さんの前に立つ。


「イアン」


「イアンだ、よろしく頼む」

沈んだ暗い青髪を揺らして、自己紹介をする彼。イアン、流れからして彼女の兄なのだろう。


「おいおい、他に何か無いの?好きな物でも、なんでもさ」

楓慎さんの合いの手が入る。


「・・・冷たい物をよく食べる」


「私は(あった)かいおでんが好き!!」

横から淡いピンクの物体がひょこっと現れ、不意打ちには弱かった為、驚いてしまった。


「・・・シムル、自己紹介」


「あっ忘れてた!はいはーい!シムルです!さっきも言ったけど、温かい食べ物が好きだよ!

貴方がお話に聞いてた菅原 紫ちゃんだよね!私シムル!よろしく!」

嵐を彷彿とさせるスピードで喋り、いつの間にか私の手が握られ、握手をしている。


「よ、よろしく、シムルさん」


「やめてよぉ、生まれた年も、見た目的にも、私の方が下のハズだよ?それに"さん"付けって、距離が遠い気がするんだよなぁって訳で、改めて!よろしく、紫ちゃん!」


「・・・ははっ、その通りかもね。よろしく、シムル」

今度は自分自身の意思で、彼女と握手を交わした。両手をこちらに出す仕草が愛らしかったのは、胸の内に秘めて置いた方が良いのだろうか。


アルミス(彼ら)が二人なのは、残念ながら解明されていない。数人だけだが、レグリアスとも会ったことがあるが、必ず対になるのは一人だった。極めて稀有な例だと、僕は考えているよ。本人に聞いても」


「私(俺)達は二人で一つだから(なので)!」


「・・・この通りさ。一点張りだから、僕も半ば諦めていると言ってもいい」


「開き直ってるの間違いでは」


「そうとも言う」


「楓慎さん意外とそういう所あるんですね」

私が呆れながら言うと、オッホン、とわざとらしく咳き込んだ。


「話が脱線しまくっているから、さっさと進めよう。僕はレグリアスになってから、ある程度戦いには心得がある。君達の足手まといにもならないはずさ。だから、君達の作戦に協力させてもらう。手始めに、桐生君のフェアな提案に則って、ある調査を進めていた。

その調査とは、()()()()()()()()()の表面化だ」




「つまり、清水綺嗣を見つけたー!って事だよね?」


「あぁ、隠れるのが上手くて俺も苦労した」

イアンが淡々と答え、シムルは元気はつらつに言う。この兄妹、温度差が凄い。


「殺人犯の動向なんて、一般人に分かるものなんですか?」


「そこは()()を辿った、という事にしておいて下さい」

そうだろうな、と彼の言いたい事をすんなりと理解した。闇ルート、というのが正解なのか知らないが、収賄だ、やれ汚職だとか、その手の事をやらないと、難しかったのだろう。しかし、一起業家がそこまで幅を利かせられるとは、私は感心の思いが大きかった。それと同時に、少しばかり、彼を警戒したのも事実だ。

だがそれを一々気にしていては、キリが無いというもの。そう考え、強引に納得した。


「判りました」


「その場所については、桐生君に位置情報を送っておくので、桐生君から菅原さんに伝えて下さい」


「了解です」


「僕は清水綺嗣の動きを随時確認します。三日後、大きな変化が見られない様でしたら、突入し清水綺嗣と交戦する。これで良いんですよね?桐生君」


「はい、ばっちりです。覚悟は出来てるか、菅原」

彼は私の方を向き、いつもと変わらない瞳でこちらを見据えた。


「うん、ビンタ一発はお見舞いしてやる心持ち」


「それだけか?」


「後は法的に絞めてもらう」


「生温いなぁ、俺は引っ捕らえれば何でも良いけど。楓慎さん、今日は時間を取らせてもらい、助かりました」


「これぐらい、いいってものですよ。これからはビジパ(仲間)何ですから」

やっぱり彼の笑みは、どこか桐生と似通っている。少し遠い親戚と言われても、私はなんら疑わない。


そしてその後はイアン・シムルの二人に送られ、帰路に着いた。シムルのタックルハグには面食らったが、愛情表現の一つなのだと、イアンは言った。因みに、イアンにも"さん"は必要ない、と断られた。理由は特にないらしい。なんか嫌だから、としか言わなかった。


「帰りはどうする?空のタクシー使う?」


「バカ言わないで、奢りって言っても断固拒否するよ」


「分かって聞いたに決まってるじゃん。お前の事は、一割は分かってるんだからな」


「誇らしげに言ったかと思えば、全然分かって無いじゃない。ん、あれ、そういえば、何か忘れてるかと思えば、栄司が来てない!」

すっかり失念していたが、彼が来ていなかった。私は立ち止まり、頭を抱える。


「楓慎さんには説明してあるけど、そういえば来ていなかったね」

うっかりしてたわー、と興味無さげに言う。顔合わせしておいて損は無いが、三人に礼を欠いてしまった。今度手土産を渡そう、心に決めて気になった事を訊いてみる。


「ところで意地悪者(メンタリスト)である桐生君、何で彼が来なかったのか分かる?」


「腹の中に見えたものは黙っといてやる、メンタリストの桐生様としての観点から言わせてもらうが、何かあったとしか考えられないな、サボる様な奴にも見えないし」


「私も、マスターの意に賛同します」

桐生と私は、一歩後ろに居る早乙女さんを一斉に見やる。

意外、ただそれだけだった。言っちゃぁ悪いが"他者に興味が無い"というスタンスを取っていると思っていたから、栄司の事など微風程度にしか考えていないと思っていたが、認識を改めるべきか。

私が面食らったという顔をそのままにしていると、隣から、桐生が言った。


「・・・紫」


「ん?」

横に立つ彼の顔を窺う。彼が名前を呼ぶ時は、大抵、大事な時と相場が決まっている。いつもより強められた眼光が、私を見ていた。


「気を付けろ」

添えられた街路樹が風に揺れられて、墜ちかけた日に見つめられて、彼を見据えて。その眼光を、瞼で防いだ。目を開けたら、何にも変わらない世界。


「・・・」

私は何も言わず、また歩き出した。





その後は特に何事も無く、私達は来た道を戻るように、それぞれの帰路に着いた。遠出という遠出では無い為、今日はスマホと財布をポケットに忍ばせただけだが、それが幸をそうしたようだ。

家まで残り約10分という所まで来てクタクタなのに、この妙な違和感。特殊な身の上で良かったと、久しぶりに思った。立ち止まらず、しかし歩幅を小さくし思考する。

妙、と言ったが、この感覚はいつでも、誰にでもあるものだ。第三者に見られている感覚、視線は口程に、それ以上にものを言う。要は、誰かが私を監視しているのだろう。普通なら幻覚だと疑われるだろうな、私だって、友達が見られてる気がするなんて言い出したら、最初は半信半疑に聞き流すはず。だが、私には確信があった。経験則もあるけれど、栄司が来なかった事が一番の要因だ。短い付き合いである事には変わりないけれど、口から吐いた泡を自分で拭けない奴じゃない。

それに、今の私はレグリアスだ。もう何があっても、正気の沙汰では居られないだろうからね。常識が鈍ってると言われても、納得してしまうだろう。

そもそも、何が目的なのだろうか。

私をつけてくる理由が、イマイチよく分からなかった。清水綺嗣ご本人の可能性もあるが、それにしては情報が伝わるのが早すぎる。それにまだ日が落ちてない。

毎回彼の手口は決まって、殺すのは深夜。そのポリシーを変えたのは、岡田のあの一件のみだ。そう簡単に変えるとは考えにくい。

考える程に泥沼に沈み込む気がして、ひとまず行動に移すことにした。直ぐに接近できる距離には居ないようだから、出来れば撒けたらいいな、位の考えで遠回りをしよう。これで撒けるようならただのチンピラorストーカー。もし上手く着いてきてるなら、かなり面倒な事になる。これからを考えると頭が痛くなるが、そんな事は言ってられないのは分かっているので、歩みを速める。

幸い、もしもの時に逃げられる最低限の持ち物しか持ってないし、ここは入り組んだ住宅街。大それた事は出来ないだろう。そう踏んでいい、だろう!

私は一抹の不安を抱えながらも、いつもの道を外れた。


そうしてプラス十分掛けて、アパート前まで来た訳だが。二階にある家まで階段を登る中、横目で下を見る。

人影は見当たらず、余計に不信感が募るだけだった。ドアの手前まで来ると、試しにドアノブを回す。すると私の思惑とは異なり、するっと手が動いた。考えられるのは二択。

栄司があのまま家に残っている、もう一つは、誰かが家に侵入している。栄司には大家さんからもらった合鍵を渡してあるから、もし家を出たなら戸締りはしているはず。ここまでの時間は約五時間以上、お昼もろくに食べれてない頭で考えても、家に居る可能性は低い。


「腹パンキメて倒れますように」

誰に言う訳でもなく、言いごちた。

中は荒らされた様子が無くてひとまず安心できた。電気は付いておらず、栄司の靴は置いたままだった。奥の窓は閉めてあり、カーテンもとじられていた。人の気配がしないのが気になる。もしかしたら、靴は置いたままで、外に出てるのかも知れないけど。


居間の所まで歩いていき敷居を跨ごうとした瞬間、地面を蹴る音が右から聞こえた。音に反応して顔を向けると、強めの力で布が口元に押し当てられる。暗がりで相手の顔が見えないので、誰か分からないが咄嗟に息を止めた。相手に押される形で後ろに倒れる寸前、宣言通り、腹パンを決めてやった。


「う゛ぅ゛ぅっっ!?」

回し蹴りをすれば床に穴が空くのは必然なので、身体を反転させ、相手の首を脚で寝技で抑え込んで馬乗りになる。少しばかり力を込めると、私の腕を緩めようと足を掴んだ。


「ちょっっ!!ギブギブギブ!!!」

私は驚きの余り足を離したら、ここぞとばかりに飛び退いた。力を弛めた理由は、相手の声に聞き覚えがあったからだ。聞き覚え、というより、最近ずっと聞いていた声。


「こんなとこで何してるの、栄司」

苛立ちと安堵、そして困惑の籠った頭で問いただす。一番はこんな事をする理由が知りたい、後で説教するのは黙っておいた方が喋りやすいだろうから、口を閉じておこう。


「こんなとこって、お前ん家じゃねぇの?」

苦笑いをして喉を押さえる彼に、若干の怒りを感じつつも言葉を続ける。


「言い訳は聞かない、経緯と状況報告を三秒以内に済ませて」

楽な座り方に座り直すと、否定の言葉が耳に入った。


「いや無理だろ!あー、いやいい。長くは無いから、手短に言うぞ」

私の目の前に胡座になり、咳払いをして話を始めた。


「桐生が来たあの時から、誰かの視線は感じてたんだよ。多分あいつらも気づいてたんだろうな、だから俺の事情を特に追及しなかったろ?」


「そうね、気に止めて無い様子だった」


「だから俺は家に残り、狙いが紫なのか確かめたかった。行かせたとしてもライラが居るんだ、死人は出ないだろうしな。

んで!時間が経っても気配が消えねぇんだよ、お前も感じてたんだろ?じゃなきゃあんな直ぐに動けない」

成程、鈍っていたのは私の方だったという事か。耳打ちしても怪しまれるかも知れなかった、それも理解出来る。


「それにしたって張り込みの隙とか無かったの?」


「断言する、無かった」

険しい顔を見る限り、言い訳や嘘は混じっていないようだ。とすると、まずい状況になってしまう。


後ろからインターホンの音が鳴った。

いつもより大きく聞こえたのは、勘違いなのだろうか、勘違いだと、認めたくはないけど。

宅配なんて頼んでないし、回覧板も有り得ない。栄司の方を見ると、彼はこくりと頷いて私の行動を待っている。ここで喋って会話を聞かれても面倒なので、態度が悪いが、手で追い払うジェスチャーで示す。意図を理解したのか、彼は1歩引いた。重い腰を持ち上げ、「今行きます!」と誰に言われる訳でもなく、返事をした。

玄関前まで来て後ろを振り返る。この直線上からは彼の姿は確認できない。嫌だなぁとつきかけた溜め息を押しとどめ、ドアノブを回す。


「はい、どちら様でしょうか?」

少々わざとらしかったのは気にしないで欲しい。ドアの前に立っている男性を見て、私は面食らって眉を動かしてしまった。

三十代くらいだろうか、ネクタイもきちんと結ばれていて緑がかった黒髪を少し下で結んでいる。社会人の模範的な印象を受けるが、この日本で長髪とは珍しい。だがそれ故に、不穏な空気を察した。夕方と言えなくて、かと言ってお昼は過ぎているこんな時間に、()()のサラリーマンがいるのはどう考えてもおかしい。営業にしたって、こんな金にもならなそうな浮世離れしたアパートの住人を訪ねるか?

そんな事を考えていると、男性は胸ポケットに手を忍ばせた。瞬時に身構えて、私の目線がその手の動きを注視し、その後の展開を待った。しかし私の考えに反して、彼は意外な行動を取った。


(わたくし)、こういう者です」

胸元から出され、お決まりの様に出されたのは警察手帳だった。名前は「香川 太一(かがわ たいち)」と記載されている。


「警察...何か事件でも起きましたか?」

私はさも驚いているという(てい)の態度を取る。ストーカーでも詐欺師でもなく、まさかの警察と来たか。制服じゃなくスーツという事は、私服警官に当てはまるのだろうが、なんの御用だろうか。


「いえ。数週間前、この付近でMAUの出現報告がありましてね。こうして巡回をしているのです」


「そうですか、えっと、ご苦労様です」


「MAUが出現した時、何かございましたか?」


「なにか、と言いますと?」


「MAUの特徴、当時の様子など。気になった事ならば何でも」


「...ごめんなさい。MAUが出たと言われている時間は、この場にいなかったので、よく分かりません」

もし、もしだ。尾けてきたのがこの警察官()()()なら、早めに切り上げないと不味い気がする。何が狙いなのかも読めないし、私個人が目的なら、恐らくアルミスについて。アルミスを知るなら、尚更危険だ。


「お役に立てずすいません、もう用はないですよね、失礼します」

ドアノブに手をかけ閉めようとするが、閉まる直前に左足をかけられた。今どきの悪徳営業でもこんなことはしないのに。私が睨みつけると、屁でもないようなのが腹立たしい。


「警察は令状も無しに家宅捜索するんですか?憲法35条をご存知で?」


「...」


「今すぐ警察局に電話しますよ」


「そう邪険にしないで貰いたい、空想の主君(レグリアス)、菅原 紫殿」

ドアが破壊されようが関係無しに思いっきり開け放ち、左足を軸にしてアイツの腹に回し蹴りを食らわす。感触は良く、クリーンヒットしたので後ろの策を倒して地面に落ちた。柵の修繕が面倒だが自業自得なので後回しにする。

横の階段を全て飛び越し着地する。大通りに移動してアパートの方に振り向くと、立ち上がる彼が見えた。右端に見える夕日がオレンジを帯び始めている。

ピンピンしてるということは、あの状況で受身を取っていた事を指す。

警察なら簡単に伸せるという認識は改めた方が良いのかな。




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