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魔神の継承者  作者: 黒歴史製造機
第1章
6/20

完敗

アインが魔力を解放する。


奴の魔力量は奇妙なくらい少ない。人間の魔法使いと大差ないくらいだ。これは6000年前から同様である。


「相変わらずの魔力量なのね。」


私はそんなことを適当に言いながら周囲を見る。


公園の広場の周りには住宅街や商店街が並んでいて隠れるのは容易い、しかし問題はスピード。魔神共通の天賦(スキル)『時間無視』。私が全速力で逃げたとしても時間を縛られない魔神からは絶対に逃げられない。


「アイン。貴方も勇者に殺されたのよね?だったら今は休戦して勇者の後継を抹殺するべきじゃないの?」


するとアインは笑い出す。


「ハッハッハッハッハッ!面白いことを言うなぁ!確かに俺は勇者に殺されたのかもしれん。だが、俺達魔神が何故何千年間も争い続けたのか、お前は忘れたのか?」


「なるほど。『強欲の思想』ね。」


魔神には天賦(スキル)の他にも共通で与えられたものがある。それは『強欲の思想』。自身と同等の力を持つ者を目の前にすると戦闘を起こしたくなり、勝利すればその者の力を丸ごと回収することができるというものだ。


「もうお喋りも飽きた頃だ。そろそろ始めるとしよう。」


神呼之鏡(ギラス)


アインの背後に巨大な鏡が出現する。


「クソッついに来たわね…。」


「ハッハッハッハッハッ見るがいい。これこそが我が神器。『神呼之鏡(ギラス)』である。」


鏡からぞろぞろと何かが出てくる。人型なものもいれば、獣のようなものもいる。


神呼之鏡(ギラス)の能力は世界を繋ぎ、他の世界の神々の鏡像を実体化させて召喚するというものであり、召喚された神々の鏡像は全てアインの支配下に置かれる。


「流石に多すぎない…?」


召喚した神々の数は14体全て全く知らない神だ。おそらく私が行ったことのない世界の神なのだろう。


「そうか?お前が覚醒していたら、八百万(やおよろず)の神でも召喚してやろう思っていたんだが。」


「全く…。冗談じゃないわ。」


14体の神とアイン。つまり同時に15対も相手にしないといけないと言うこと。流石に魔王レベルの私には重たい仕事である。


(14体の神を終焉之斧(ラグナロク)で一掃する。それしかなさそうね…。)


終焉之斧(ラグナロク)


セリスの左手に『終焉之斧(ラグナロク)』が出現する。


「行け!我が神々の軍隊よ!」


アインが軍刀を空に掲げ神々に指揮を送る。神々がこちらに向かってくる。


(今…!!!)


「ハァァァァァ!!!!」


私は今出せる全力の力で『終焉之斧(ラグナロク)』を振るう。


斧を振った風圧で国が吹き飛ぶ。


斬撃が神々に命中する直前。アインの姿が一瞬で消え、斬撃の手前に現れた。


そしてアインは右手で斬撃を抑え込み、握りつぶした。


バァァン!!


斬撃がアインの手のひらの中で破裂する。


(ありえない…!あの斬撃の威力は第八宇宙まで全て消し飛ばすくらいの威力なのに…!)


「ありえない。って顔してるな。ハハ。無様だぜ?セリス。」


何故こいつの魔力量が極端にも少ないのか今になって思い出した。


アインは魔力の大半を捨てた代わりに圧倒的物理能力を手に入れていた。


神々達がこちらに向かってくる。幸い魔法を使う神々はこの中には居ないようで全員近接戦で勝負をしようとしている。


(斬撃をわざわざ防いだってことはあの神々は今の段階の終焉之斧(ラグナロク)の斬撃を耐えられる耐久力もないようね。だとしたら…。)


腕に全魔力をかけ力を最大限まで増幅させる。


「ほう?腕に魔力を集中か…。ついに血迷ったか?この俺と神々の軍勢に近接戦で勝つつもりと?」


アインが呆れたような顔して言ってくる。


「残念ながら最初からそんなつもりは無いわ。」


私は終焉之斧(ラグナロク)を思い切り振りかざすと見せかけて、


投げた。


「貴様!?一体何を!?」


アインに向けて投げられた終焉之斧(ラグナロク)は宙で何度も回転し斬撃を全方位に放ち、神々を消し飛ばし、アインに命中し、アインの腕が吹き飛ぶ。


そして私は腕に残った魔力をゆっくりと足へと送る。

全速力でアインから逃げる。


(完敗ね。次は絶対殺すわ…。)


「これでよかったのか?クロムウェルよ。」


軍服についた砂埃をはらいながらアインはクロムウェル王国の国王、クロムウェル=ギルトレーンに問う。


「あぁ、完璧なくらいだ。国民は全員殺されてしまったがこれによって周辺国家も厳戒態勢を取るだろう。そうすれば彼奴もなかなか動きにくくなる。」


「しかしだ。クロムウェル。時間無視を使えばセリスを逃がさずに今すぐ殺すことだって出来たのだが。何故そうさせなかった?」


「そんなの今すぐ殺しては面白くないからに決まってるだろう?魔神共にはもっと殺し合って貰わければ」


「ハッハッハッハッハッ!!1番面白いのはお前だよクロムウェル。魔人戦争を楽しもうとする人間がいたとは。」




アインから全速力で逃げてきた私は王城の玉座の間に居た。


(集まった魂の数は26万個…。これだけあれば終焉の騎士団。団長の『ザリウス=アルカディア』を蘇生することが出来る!)


腕を切り、血液で魔法陣を描く。


「目覚めよ。我が終焉の騎士団。最強の騎士。ザリウスよ。」


魔法陣が激しく青い炎で燃える。


「成功ね。」


セリスが指を弾くと炎は消え、炎の中から全身漆黒のフルアーマーの男が現れた。


「久しぶりね。ザリウス。」


私の声を聞くとザリウスは即座に膝をついた。


「我が主。こうしてまたお仕えできること、大変嬉しく思います。」


兜から力強い声が響く。


「では早速お前に命令をするとしよう。ザリウス。お前にはアベル王国の調査に行ってもらうわ。」


「アベル王国?理由を聞いてもよろしいでしょうか?」


「どうやらアベル王国に勇者の後継者がいるらしい。そいつの情報を収集して欲しい。見つけられたら殺しても構わないわ。」


「了解です。我が主。このザリウス=アルカディア。完璧に任務をこなして見せます!では!」


ザリウスの姿が一瞬で消える。


「さて、これからどうしようかしらね。」


あの時、不可解なことがあった。アインが『時間無視』を使って私を追って来なかったことだ。


強欲の思想を抑制してまで私を追ってこなかった理由、何だかわからないが罠でも仕掛けられているような感じがしてならない。これからはあまり不用意に動き回らない方が良さそうだと私は思った。

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