地獄への門
私達は転移魔法を使いペルソナルド草原に移動した。
「流石自然の力って感じね。侮れないわ。」
以前私が神器で吹き飛ばしたはずのペルソナルド草原には以前と同じように広大な草原が拡がっていた。
残った植物の根が水や魔力を吸い、繁殖したのだろう。
その美しく広がる草原に異様な物がある。アンデット、ゾンビの大群だ。
「あの時と全く同じね。さっさと親玉に出てきてもらおうかしらね。イリーゼ!ここで貴方の技量を試させてもらうわ。」
ゾルザに化けたイリーゼが魔剣を抜く。
「了解です。セリス様、期待に応えてみせましょう!」
『炎氷爆炎斬』
草原を覆い尽くすほどの量のゾンビが一瞬で消滅する。
「流石だわ。イリーゼ。」
「見事だ!終焉の騎士団の名に恥じぬ働き、賛美する。」
2人でイリーゼの働きを褒め称えていると突如草原が裂けた。
「…!?」
「一体何が…!?」
「ついに来たわね。」
地面が裂けて姿を現したそれは巨大な扉だった。
扉が大きな音を立て、開く。
「ご招待って訳ね、ヘル。なら遠慮なく行かせてもらうわ!」
3人で地獄への扉に飛び込む。
「熱い!」
あまりの暑さでそんな事を言う。辺りを見渡すとその理由がわかった。今私達がいる円形の巨大な島の周囲は巨大なマグマ溜まりで囲まれていた。
そして、目前にある玉座にはここへ招待してきた人物が座っていた。
「久しいですねぇ。セリス。」
「そうでもないと思うけど?」
「前回は貴方が勝ったかもしれませんが、今回はそうは行きませんよ。何せここは私の国であり私のテリトリーですから。」
ヘルがデスドラゴンを大量に召喚する。
「さぁ。この前の続きを始めようか。」
《死神之鎌》
《終焉之斧》
「イリーゼ!ザリウス!お前達はこいつが召喚するアンデットを処理して頂戴!私はヘルを叩く!」
ヘルが死神之鎌を構えて私に向かって突っ込んでくる。それにすかさず私も終焉之斧で対抗する。
神器同士がぶつかり合い。激しい衝撃波が走る。
その時私は微かに違和感を覚えた。
(前より少し攻撃が重く感じるわね…。)
恐らく先程ヘルがテリトリーだとかなんとか言っていた事と関係があるのだろう。私にデバフがかかっているか相手にバフがかかっているような感覚だ。
『破壊之神』
『破壊之神』
神々の魔法がぶつかり合い相殺される。魔法の威力はどうやら同等のようだ。
「ハハハッ!!流石ですね。セリス!!ではこれはどうでしょう?」
ヘルが地面を蹴り後ろへ下がり、死神乃斧を振る。
『三途の川を渡らせし者』
(川…?)
ヘルと私の間に川が出現し、そこから上位アンデッドがゾロゾロと出てくる。しかし、それも瞬時に終焉之斧によって消え失せる。
アンデッドは全て処理した為、残りは川の向こうにいるヘルのみ。私は川を飛び越えヘルに向かって突っ込む。
その時、私の生存機能は全て停止した。
「セリス様!!」
仲間達が私を呼ぶ声が聞こえるが、少しずつ声が遠のいてゆく。
「全く哀れなものだ。そうは思いませんか?」
ヘルが倒れたセリスを見てザリウス達に問う。
先程からヘルに攻撃を仕掛けているが、全くと言っていいほど歯が立たない。
「まぁいいでしょう。貴方達はそうやって地に這いつくばって見ていればいい。」
ヘルがセリスの身体に手を伸ばし、神臓を取り除こうとする。魔神が他の魔神の力を継承するには神臓を取り込む必要があるらしい。
「さらばだ。終焉の魔神よ。」
その時ヘルの首が飛んだ。
「なぜ、、だ?」
ヘルが死神之鎌で刈り取った魂を使い、瞬時に蘇生される。
「残念ね。死は生命にとって一つの終焉。つまり終焉を司る私、セリスアルカディアには通用しないわ。さて、第二ラウンドと行こうかしらね。」
セリスから大量の魔力が溢れ出る。
「これを使うのは7000年ぶりね。」
セリスが7000年間封印してきたその力が今目覚める。
『終焉の魔眼』