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魔神の継承者  作者: 黒歴史製造機
第1章
11/20

演技

円卓に3人の人物が座って話をしている。


「酷いシナリオだな。」


「あぁ、全くだ。このままだったらゲームとして成り立たないじゃないか。」


「まぁ、良いじゃないか。その気になればいくらでも修正はできるのだから。」




王国に光の矢が降り注いで来る。


「あれは…。ラピス・エルドラドの神器!!」


「オリビア!なるべく被害を出さないように俺たちで止めるぞ!!クロムウェル、俺に身体強化魔法をかけてくれ!」


「あぁ!分かった!『パワーアップ』」


「じゃあ、行くとするか。」


アイルの姿が消える。


天賦(スキル)を使わずにあの速度…。驚異的ですね…。)


さて、そろそろ私も行かないと。足に魔力を回し、宙に飛ぶ。


「幸いな事にこの矢にはそれほど速度はないようだな」


「そうですね。まだ被害は出てないみたいですね。」


速度は出ていないがあの矢は絶対命中の矢。つまりどうにかしなければこのままではアベル王国全体に被害が及んでしまう。


「じゃあ、さっそくやるか。」


アイルが拳を握る。


「うおおおおありゃああああ!!!!!!!!!!!」


アイルが空に向かって拳を上げる。


ものすごい衝撃が宙を走り、衝撃によって鏃が上を向き、進行方向が変わる。


「今だ!やれ!!!オリビア!!!」


「えぇ。リヴァイン・ギルス!!!」


不死鳥が放たれ、矢を片っ端から焼き尽くしていく。

「閃光斬!」


燃えた矢をオリビアが聖剣で切り尽くし、切断された矢が全て消滅した。


「はぁ、なんとか終わったみたいだな。」


ラピスの襲撃を難なく破った私達はその後勇者陣営の発足会としてパーティを開いた。


「少し席を外す。クロムウェル、来てくれ。」


「わかった。では少し失礼。」


アイルとクロムウェルが席を立ち、部屋から出ていく。


「あそこまでやる必要はあったのか?わざわざ神呼乃鏡(ギラス)を利用して、弓使いの神を召喚する必要性がわからないな。」


「わからないか?オリビアが先程のお前との戦闘で魔神アインについてのアレフの記憶を感じ取っていた可能性があったからだ。だとすれば俺たちの信頼度は低いだろう?」


「なるほど。信頼を勝ち取り勇者陣営に居座る為にわざわざ身を挺して国を守る演技をさせたということか。」


「それだけではないぞ?今回の事件で人間達の間で魔神ラピス・エルドラドへの警戒心が高まった。ラピスについては以前俺たちは遭遇しているから確実にこの時代に存在しているからな。」


そう、以前アイルとクロムウェルは魔神ラピスと遭遇していた。


戦闘が起きる前にラピスに逃げられた為、地形などの損害がなく、誰にも知られていないのだが。


「それにしても今回の勇者はハズレだな。そうは思わないか?クロムウェル。」


「まぁパッと見ればそう見えるな。だが、あいつはまだ勇者の天賦(スキル)しか見せていないだろう?つまりまだ本気は出していないということだ。あまり侮らない方が良い。」


「なるほど。なるべく利用できるだけ利用して。他の魔神にでも殺されて欲しいが。」


(現在この時代に存在していることが確認されている魔神。セリス、ヘル、ラピス、そして俺。残り12人…か。まぁ俺が唯一欲しいと思っている神器終焉乃斧(ラグナロク)が手に入れば他の魔神などどうでもいいのだが。)





「なるほど。だいたい分かったわ。」


私はザリウスに完全治癒魔法をかけた後に話を聞き状況を把握していた。ラピスの神器で殺された住人は蘇生できない。彼女の神器は魂すら貫き破壊する。つまり、


「国としてのアルカディアは消滅ね。」


国民のいなくなった国はもう国ではない。


「じゃあ、もうここはいらないわね。ザリウス、下がってなさい?」


私は終焉乃斧(ラグナロク)を顕現させ、斬撃を放つ。

先程まで国として存在したものは更地となった。


(絶対に許さない。ラピス・エルドラド…必ずお前は私が殺す。)


「セリス様。よろしいのですか?拠点は持っていた方が良いのでは?」


「いや、拠点は持たない方がいいと判断したわ。拠点を持っていたらまた今回みたいに襲撃を受けるかもしれないじゃない。」


それに守る物がない方がその分攻めやすい。


そう、これからは拠点を持たずどこか適当な国を転々と移動しながら魔神を皆殺しにする。


「そうね…。表向きの顔として『冒険者』なんてどうかしら?」


冒険者。それはこの世界では旅をしながら魔物を狩り、生計を立てている者達のことだ。


「了解です。では、まずはどこの国へと向かいますか?」


「そうね…。アベル王国と言いたいところのなんだけど。まずはアベル王国の更に東にある『ヴァイラス王国』に行こうかしら。」


『幻覚魔法』


ザリウスが幻覚魔法で別の姿に変わる。


「その姿は久々にみるわね。ザリウス。」


白髪の青年の姿。以前、アベル王国の調査に行った時もこの姿だった。


「セリス様がこの姿の私を見るのは6000年振りですね。」


「えぇ。懐かしいわ。じゃあそろそろ行こうか。」


黒いローブから冒険者らしい鎧へとセリスの服装が変わる。


『転移』


転移魔法を使いヴァイラス王国にテレポートする。


「おぉ…!白い…!」


思わずそんな言葉が出てしまう。


ヴァイラス王国。全ての建造物が白一色で統一されて建てられているという特徴のある国。


「まずは冒険者ギルドに行って冒険者として名を登録しようか。」


軽く街を観光しながら冒険者ギルドへと向かう。


しばらく歩くと冒険者ギルドらしき建物が見えてきた


「ここみたいね。」


重い両手開きの扉を開ける。


扉を開くと一斉に中にいる冒険者達がこっちを睨みつけてきた。怖い。


「やば、あの娘、めっちゃ美人じゃん…。」


「おいおい、見ない顔だが何処から来たんだ?」


「それに後ろにいる男、すげぇ男前じゃねえか。」


ザワザワと冒険者達が騒ぎ始める。


私達は騒ぐ冒険者たちを無視して受付へと向かう。


「冒険者名簿に登録をしたいのですが。」


受付の女の人が奥から出てくる。


「はい!登録ですね。まずはお名前を教えてください。」


名前…か。バカ正直にセリスと名乗ったら行けないということくらいはわかる。


「セリアです。こっちはザリア。」


自分で言っておいて安直過ぎないかと思ってしまい。少し恥ずかしくなる。


「セリア様とザリア様ですね。では、冒険者としての実力を図る為に過去に倒した魔物の名前とその戦利品をお見せ下さい。」


(魔物の名と戦利品…困ったなぁ。どうしようか。)


私は自分が持っている物を魔法で漁りながら考える。


(お、いいのがあった。)


「戦利品ですか。じゃあこれなんてどうです?デスドラゴンの頭蓋骨です。」


これは以前、『屍龍召喚(サモン・デスドラゴン)』の魔法の実験をしていた時に獲得した物だ。


「デスドラゴンの頭蓋骨!?それってあの伝説級モンスターのデスドラゴンの頭蓋骨なのか!?」


話を聞いていた冒険者達が更に騒ぎ始める。


「おいおい、じゃあ、つまりあの嬢ちゃん達は『ゾルザ』さんと同レベルの実力はあるってことか?」


ゾルザって誰やねんって心の中でツッコむ。恐らくこの国で有名な実力派な冒険者なのだろう。


ガチャ


冒険者ギルドの扉が勢いよく開き立派な鎧を着た男が入ってきた。


「貴方は…」


「ゾルザさん!!!」


なるほど。彼が噂のゾルザという男なのだろう。デスドラゴンを倒すほどの実力。

つまり彼一人でアベル王国の魔法使い程度の実力は最低あると言うことだ。


「外で盗み聞きしてしまったんだが。あんた達が俺と同レベル?ふっ。ありえねえな。顔も見た事ねえやつだし。」


どうやら外で全て聞いていたらしい。気持ち悪いな。

「残念ながら私達は貴方よりは強いわよ?ねぇ?ザリア。」


「あぁ。そうだな。」


するとゾルザが笑い出す。


「ハッハッハっ言うでは無いか!!なら私と戦ってみるか?着いてこい。いい場所がある。」


ゾルザと冒険者達に案内され到着した場所は闘技場だった。


「驚いたわ。まさかこの国にこんな闘技場があるとはね。」


闘技場。昔異世界でこの建造物に似たような建物を見た事がある。確か『コロッセオ』なんて名前だったと思う。


観客席には先程冒険者ギルドに居た冒険者のみならず噂を聞き駆けつけた冒険者とヴァイラス王国の1部の国民がギャラリーとして座っている。


「ゾルザさん頑張れ!」


「俺はゾルザさんに20ゴールドかけるぞ!!」


「俺はセリアちゃんに30ゴールドだ!」


「うるせえ!!俺は50だ!!」


なにやら賭けをするつもりのようだ。


「ルールは簡単。戦闘不能になった方が負け。」


「なるほど。簡単ね。ザリア下がってなさい?」


セリス、いやセリアに言われ、ザリアは観客席に入る。


「準備出来たか?早速始めるぞ!」


闘技場に開戦の鐘の音が響く。

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