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長さが一緒じゃなかったり、場所が違ったりしますが、視点違うんで仕方ないと思います。(投げやり)
入学式の日、少し風が強かったのを覚えてる。
入学式とクラスでのレクリエーションが終わって、解散した後のこと。中学が一緒だった友達と一緒に帰ろうと、桜の木の下で待ってたんだ。
ふと視線を感じて、少し目線を下げた時、少し低くなっている校庭に、誰かが居た。それは、同じクラスで且つ入学式で入学生代表を務めていた男子だった。
その時は、すごい顔が整ってる人が居る、と思っていただけだった。
だけど、なぜだか目が合った途端、その人はゆっくりと目を細めて微笑んだ。そう思ったら、こっちに歩いてきたのだ。
その少し前まで中学生だったとは思えない色気とか、なんでこっちに来るんだとか色々に戸惑っていると目の前まで来て、
「一目惚れなんだ。付き合ってくれる?」
と、言った。こういうモテそうな男は、簡単に女子を手に入れてからかって遊んでいるのだろうと思い、相手にしないことにした。だから、
「キョーミない」
そう、はっきり言ってやった。すると、少し目を見開いたあと、
「そっか、残念」
それだけ言って、「突然ごめんね」とだけ謝ると、そのまま去って行ったのだった。というか、謝るくらいならしないでほしい。
……でも、この後はしばらく告白なんてしてこなかったし、一緒に帰るなんてこともしていなかった。
じゃあ、二学期の文化祭の頃か。
一目惚れだったのは、ホント。始まりは、今は4月だから、大体一年前の今頃の、入学式の話。出会った瞬間に目を、奪われた。春の澄んだ空気と淡い色の桜に、思わずセンチメンタルな気持ちになりそうなそんな春の日のこと。
友達らしき人物と談笑する姿を見た。ただそれだけだった。猫みたいな灰色の目に、暗い色の外にはねる癖のある髪。それが酷く可愛らしいものに見えて、強い衝動が身体中を駆け巡る。『ああ、彼女が欲しい、彼女を自分のものにしたい』と。
『彼女が、好きだ』と。
でも、ボクが本気になることはない。その衝動はいつもの事だから。何か、強く興味を惹かれるものを、手に入れたくて堪らなくなる。それだけの衝動。手に入ってしまえば、後はその熱があっさりと引いて行き、どうでも良くなるんだ。
彼女と目が合い、嬉しさが込み上げてきた。吸い寄せられるように、彼女の元へ歩き出す。
「一目惚れなんだ。付き合ってくれる?」
そう、衝動のままに声を掛けてしまった。すると案の定、彼女は変なものをみる目でボクを見る。ふふふ、最悪な第一印象になっちゃったカナ?
「キョーミない」
と、彼女はつまらなそうに、目を逸らした。初めて、フラれたような気がする。
「そっか、残念」
ま、フラれちゃったみたいだし、どうでもいいか。「突然ごめんね」と、謝って、彼女の元を離れる。ボク、告白するつもり無かったんだけどなァ?
しばらくして、ボクは彼女の事を頭の隅に追いやった。フラれた相手のことを考えたってしょうがないって。
それから、色々な女子に告白されて、フってフラれて。告白してきた相手に男子も居たケド、気にしないで付き合った。すると、いつのまにか色々なウワサが立ってしまったみたいだった。別に、ヤケになったわけじゃない。空いた穴を塞ぎたかっただけ。
気が向いた時にだけ、学校に来ていた。あとは出なきゃいけない授業だけ出て、他はてきとうに。最初は色々言われたケド、実力を示したら何も言われなくなった。