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話のずれが気持ちのずれ……なんてな。
「ね、コレ着てみてよ」
出かける先はショッピングモールみたいで、着いてまず向かったのは服を売ってるお店だった。
アタシはあまり可愛い服とか持ってないから、こういうところに来るのは初めてで、少し居心地が悪い。
「……これ、アタシに似合うの?」
差し出された服は、普段アタシが選ばないような、可愛い服だ。
「いいから、着てみて」
にっこりといつもみたいな笑顔だけど、なんだか押しが凄まじく、勢いに押されて強く言い返せなかった。
「……わかったよ」
渋々ながら頷くと天澄はその服を押し付けるように手渡し、アタシが着替えやすいように試着室から少し離れる。
「んっ、」
試着室のカーテンを閉めて服を脱ぐ。そして、渡された服を傷めないよう丁寧に、ゆっくり着る。普段服を買う時は大体ちょっと大きめの服とかだから、試着するのも久しぶりで、かなり緊張した。
「……」
鏡で見てみても、似合っているのかよく分からない。
「……終わったよ」
試着室のカーテンを開くと、天澄は嬉しそうに笑う。
「うん、やっぱり可愛い♡」
さすがボク、と自画自賛しながら、天澄はアタシを写真に撮る。勝手に撮るとか、肖像権の侵害じゃないの。後で消すように強く言わないと。
これで終わりかと思ったら、「次はコレね」と、新しい服を手渡され、それからアタシはしばらく着せ替え人形のように天澄の差し出す服を試着しまくる羽目になった。
「……やっぱり、アタシの格好へんだった?」
試着が終わった後、うっすら気になっていたことを天澄に訊く。今のアタシの格好は、シンプルなジャージじゃなくて、お店で買った、可愛い服だ。……気合を入れた格好とかそんなんじゃなかったから、別にいいけど。
「ううん。いい感じにキミの魅力を殺してくれてて、とっても良かったヨ☆」
それってどういう意味?結局似合ってないとか、変な格好だったって風に捉えるしかない返答じゃん。
「……チッ」
そう思うと、ちょっと…どころじゃなく、結構恥ずかしいんだけど。
「拗ねないで?キミはどんな格好でも可愛いんだからさ」
フォローされるとか。……もう少し、ちゃんとした格好で行けばよかった、なんて後悔しても遅いか。
「うさんくさ」
にこにこ笑いながら言われたって、説得力ないんだよ。
「本心なのにィ」
顔を覗き込もうとされたから、身体をよじって逃げる。こんな些細なやり取りを、天澄はとても楽しそうに笑ってた。
「うん、やっぱり可愛い♡」
やっぱりボクのセンス良いよネ!さすがボク!まきがすっごく可愛くなっちゃったし。
ショッピングモールに着いてまず向かったのは、もちろん服を売ってるお店☆
彼女のせっかくの持ち味をいい感じに相殺してる服は、別に似合ってないワケじゃなかったケド、やっぱり着飾った彼女も見てみたいし?
やっぱり元が良いから、どんなファッションも似合うね。色々服を着せてみたケド、どれも可愛くて凄く迷っちゃったよ。だから、いくつか彼女のための服を複数着買ってみた☆彼女が見てない間にネ。
可愛い系の服を着た時の
「……似合ってる…?」
って不安そうに見上げたその顔に、すっごくそそられたケド我慢しておいた。始まったばかりでデートの中止なんて死んでも嫌だし。
「……やっぱり、アタシの格好へんだった?」
試着も買い物も済ませてお店を出た時、彼女は不機嫌そうに、低い声でボクに訊いた。やっぱり気になっちゃうか。
「ううん。いい感じにキミの魅力を殺してくれてて、とっても良かったヨ☆」
シンプルなジャージだから、意味合い的にいえばクールな顔立ちが際立ってヤンキーみたいだったって感じなんだけどネ☆
「……チッ」
舌打ちしてそっぽ向いちゃった。
「拗ねないで?キミはどんな格好でも可愛いんだからさ」
本心を告げてみる。
「うさんくさ」
彼女はボクの言葉を信用してないみたいだ。でも、うっすら耳が赤いから……恥ずかしがってる?
「本心なのにィ」
顔を覗き込もうとしたら、避けられちゃった。でも、こんな些細なやり取りも、なんだかとても楽しいんだ。
それから、雑貨とか小物を売ってるお店や香り系のお店とか行ってみたケド、「服だけで十分!」って怒られちゃったから、買ってあげるのはまた今度にしようと思うんだ。
どういった小物や匂いとかが好きなのかも分かっちゃったしネ☆




