表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/39

30


図書館へ行くとやっぱり、というか、普通に、同級生なんて居なかった。こんな早くから勉強するやつは、もっと頭の良い学校とか、塾とか行くだろうし。


「キミ、好きな人居るんだってネ?」


少し奥まった所の四人掛けの席を選び、座る。万が一同級生とか同じ学校の生徒に見られるとか、そうなるとなんだか恥ずかしいし。


「……それ、どこから」


顔を上げると、天澄はうさんくさい笑みを浮かべていた。


「色々♡」


「……」


もしかして、あの時アタシの告白の様子を見てた?アンタの荷物教室に残ってたし……


「……アンタの、そういう所嫌い」


聞かなくても良いところを、フツーはあえて聞かないで黙っててくれそうなことを、わざわざ聞きにくるとか。


「ねぇ、どんな人が好きなの」


「教えるわけないでしょ」


アタシの斜め前に座りながら、天澄は聞く。恥ずかしくて、言えるわけがない。


「『あまり喋らないやつが好き』とか、『身長は高すぎない方が好み』だとか言ってたケド、ボクに対する当て擦り?」


「そ、それは……」


アンタに諦めて欲しかった時に言ったやつだし、特に誰なんて、考えてなかった。


「……もしかして、……黒木(くろき) (けい)?」


少し低い声で天澄は名前を出す。確かに幼馴染だし、結構仲は良いけど、ただの面倒見が良い同級生くらいにしか思ってないし!だから、


「っ、アンタにはカンケーない、でしょ!」


と、否定の言葉を叫んでしまった。


「ここ、図書館だよ」


しー、と立てた人差し指を口元に充て静かにするように諭す。


「冗談なのに、ムキになっちゃって」


なんて笑いながら、天澄はカバンから明日のテスト教科の教科書を机に並べる。


「……アンタ、そういうのホント良くないよ」


あまりにも酷い、冗談だ。



図書館には、やっぱり、同級生なんて一人も居なかった。三年生や一年生が、ちょっと居たケド。受験に向けて頑張ってる、って感じカナ?


「キミ、好きな人居るんだってネ?」


まきは少し奥まった所の四人掛けの席を選んだ。万が一知り合いに見られるのを考えてのコトだと思うケド、ボクと二人っきりで人の目が届きにくいココ選ぶの、悪手だと思うよ?


「……それ、どこから」


顔を上げるまきに、微笑んでみせる。


「色々♡」


「……」


もしかして、と、彼女は何か思い至ることがあったのかボクを見る目線が鋭くなり、


「アンタの、そういう所嫌い」


と、顔をしかめた。『嫌い』と言われるうちが花、なんていうよネ?


「ねぇ、どんな人が好きなの」


「教えるわけないでしょ」


斜め前に座りながら、まきに聞く。答えるワケないってのは、予想済みだった。照れ屋さんだもんね☆


「『あまり喋らないやつが好き』とか、『身長は高すぎない方が好み』だとか言ってたケド、ボクに対する当て擦り?」


「そ、それは……」


そう茶化しながら聞くと、まきはその相手のことを考えているのか、頬を少し染めて口ごもる。面白くない。


「……もしかして、……黒木(くろき) (けい)?」


ソイツは、まきの幼馴染の男子。簡単に言えば、顔が整ってて面倒見が良い同級生。そして、キミが挙げた好みに当てはまってる。ボクほど高身長じゃないし、普通の男子と同じか、それよりは無口だもんね。


「っ、アンタにはカンケーない、でしょ!」


と、かっと頬を赤く染め、まきは否定の言葉を叫ぶ。


「ここ、図書館だよ」


しー、と諭すと、まきは口元を押さえて、ふいと恥ずかしそうに顔を逸らす。そういう仕草、可愛いと思っちゃうんだよね。


「冗談なのに、ムキになっちゃって」


そう笑ってみせるケド、心境は全く面白くない。ぐつぐつに煮えたぎる嫉妬心を表に出ないよう、必死に笑顔で抑え込む。


「アンタ、そういうのホント良くないよ」


不機嫌そうにまきはボクから視線を外てカバンの中からノートを出す。アタリ、かな。あーあ、なんで法律とかあるのかなァ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ