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やけにアイツの手が熱い。
やっぱり、怪我とかからバイ菌が入ってしまったんだろうか。
「アンタの家どこ?」
このままの天澄を放っておくわけにはいかないし、家まで送ろうと思い至る。
「……え?」
いつもはアタシが聞けばすぐ返ってくるはずの返事も遅く、おまけに気のない返事が返される。
「だから、アンタの家」
聞いてなかったのかな、なんて思い、もう一度天澄に告げる。痛みとかで意識がもうろうとしてるんだったらどうしよう。普通の女子より筋肉付いてる自覚はあるけれど、さすがにこんな高身長で鍛えてそうな男子なんて運べる自信はない。
「……なんで」
信じられない、とでも言いたげに、天澄はアタシ私見る。たしかにアタシはいつも天澄に冷たいけれど、そんなにアタシは非情なやつに見えてたんだろうか。
「え、送り届けるんだよ」
そう返すと、天澄は俯いて黙り込んでしまった。なんだか、今日の天澄はアタシと一緒にいることをやけに渋るな。いつもはアタシが嫌がっても一緒にいたがるくせに。
「……ボク、子供じゃないよ」
俯いたまま、天澄はアタシを拒絶する。子供じゃなくても、アタシは、心配してるのに。
「アタシの気が済まない」
どうせ、コイツの怪我の原因なんて、色恋沙汰の報復とかそんなものなんだろうけれど。あとその身体付きを見れば、普通の男子高校生と比べたら平気だろうことも、分かってる。
「……分かったよ」
最後にため息と共にそう零すと、天澄は大人しくなった。やっとか、と思ったと同時にコイツ家に行くのか、と思うとなんだか、不思議な気持ちになった。
嬉しいような、そうでもないような。
でも、アイツはいつも恋人になった相手にそんなことをしてるかも、と思うと気持ちが落ち着いた。そう、アイツにとっては『誰かが家に来る』ことは特別じゃないんだ、きっと。
温く感じる彼女の手に、自身が異様なほどに熱を持っていることを自覚した。
「アンタの家どこ?」
素っ気ない彼女の言葉に、心配の色が見える。今は、彼女と離れていたい。
「……え?」
彼女の手のひらの小ささや柔らかさに、どうも熱が冷めそうにないことを悟っていた。だから、早くまきと離れたい。そう思っていたのに。
「だから、アンタの家」
早く教えて、と言いたげに彼女は促す。家に着くまで、キミと、手を繋いだまま、……なの?
「……なんで」
我ながら、気の抜けた、かなり間抜けな声が出た。思考が、上手く回らない。
「え、送り届けるんだよ」
何も思ってない、ただの親切な言葉がまきから溢れる。彼女は優しいから、こんなボクでも心配してくれてるんだ。
「ボク、子供じゃないよ」
青春真っ盛りの、男子高校生だよ?
「アタシの気が済まない」
キミの方が、ただじゃ済まないかもしれないのに。
「……分かったよ」
一度こうだと決めた彼女に抵抗しても無駄なのは、長い付き合いだから分かってた。
……『もしかしたら』なんていう打算も、少しはあった。