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「ごめん、一緒に帰れなくなっちゃった」
メッセージに、そう残されていた。ま、予想はしてたけど。
昼食を食べたあと、天澄は1年生の女子に呼び出されてた。あれは、間違いなく告白。天澄は躊躇することなくその告白を受けるだろうし、なんならデートしに行くんだろうと思ってた。
「はぁ……」
良くわからないけど、ため息が出る。楽しみにしてたとか、そんなのない。また面倒ごとが増えそう、そう思って憂鬱になっただけ。
アイツが告白受けてデートして、そのあとフるかフラれるかすると、そのあと必ずと言って良いほどアタシにとばっちりがくる。
告白した子自身とか、その周辺のオトモダチとか、その辺のやつらから睨まれたり、持ち物にイタズラされたり。
しばらくすると止むから気にはしてない。ってかアイツがアタシに付きまとってるだけでアタシ全然カンケーないだろ。
それはともかく、アイツを待つ必要もなくなったし、さっさと帰ることにした。今日は夕飯の買い物しなきゃだし。……荷物持ちさせようかと思ってたんだけど、まあいいか。
買い物を済ませてスーパーから出ると、変な場面に出くわしてしまったみたいだった。アイツが、天澄が、女子とデートしてる。アイツはいつもにこにこしてるから良く分かんないけれど、女子は楽しそうだ。
少し遠いから多分向こうはアタシに気付いていないだろうと考え、その場から離れる。なんだか、胸の辺りがもやもやして、心臓が痛い。ただ、好きじゃないアイツに急に出会って気分が悪くなっただけ。変な場面に出くわしてびっくりしただけだから。
嫉妬したとか、悲しいとか、そんなのじゃないから。
あれから、その女の子とデートを何度か繰り返しているらしく、また一人で帰る日々が続く。今日、別の人に呼び出されていたから、しばらくしたらフラれるであろうことに予想がついた。
良くもまぁ、あっちこっちにふらふら行けるものだと感心しながら、アタシは一人の帰り道を歩く。
「付き合ってください!」
「良いよ」
呼び出された時点で告白だったコトは気が付いてた。特に気に入らない点はなかったからその告白をOKする。告白してくれた女子は、嬉しそうに頬を染めた。まきはボクにそんな顔を見せたことがないのを少し、思い出した。
さっきはまきと一緒に帰る約束をしたケド、デートの予定が入っちゃったから一緒に帰れないことをメッセージに入れた。少しくらいガッカリしてくれないかな、なんて思うケド気にしてないんだろうなぁ。
放課後、待ち合わせに指定された靴箱で待つと、顔を赤くした女の子が「待たせちゃってごめん」と、謝りながらボクの元に駆け付ける。
「大丈夫。さぁ、行こっか」
手を軽く握って、女の子が楽しめそうな場所へエスコートする。恥ずかしそうに頬を染めるその姿を見ながら、どこへ行こうか、楽しんでくれているだろうか、色々考える。
「……どうしたんですか?」
未だに、告白してくれた子と付き合ってみるケド、なんだか物足りなくて。今までもそんなに長くはなかったけど、最近はさらに長続きしなくなる。なんだか、付き合うのがつまらない。
「なんでもないよ?」
にこ、と微笑んでみれば、女の子はうっとりと惚けて、幸せそうに笑う。ただ、向こうにまきの姿が見えただけ。彼女はきっとボク達の姿が見えていただろうケド、いつも通りに、動揺することもなく過ごしてるみたいだった。
……ボクが誰と付き合っても無反応なのが、つまらない。
「その……、好きです!」
別の日、今度は同級生に呼ばれて、告白された。
「いいよ、付き合ってあげる」
嬉しそうなその顔を見ながら、まきが告白なんてするんだろうか、とふと考えた。頬を可愛らしく染めて、一生懸命に『誰か』に想いを伝えるんだ。……その対象がボクじゃないだろうコトに、少し苛立ちを覚えた。




