15
前置きがようやく終わり。
長いね。
あとヒーローの変態度合いがこれから上がっていきます多分。
そして、そんな日々が続き、天澄はクリスマスイヴに、アタシに告白した。
「ボク、やっぱりキミのことが好きみたいだ」
って。「キミさえ良かったら、付き合って?」と、困ったように笑う。これは、ホントの告白、みたいだ。なんとなくだけど、そう思った。でも、
「キョーミない」
そう、入学式の時と同じように断った。……でも少し、嘘だ。アタシは、少しだけアイツのことが、天澄のことが、気になり始めていた。
「強いて言うなら……アタシは、あまり喋んないやつとか、身長が高すぎない方が、好きだし」
あえて天澄とは逆のタイプを挙げてみる。諦めてくれないかな。このままだと、お互いにあんまり良くないことにしかならない気がする。
「……こんなにロマンチックにしたのに?」
少し惚けた後、天澄はそう抜かしやがった。逃げられないような状況にして、囲い込もうとしてたのか。……こういう強引な手を使うようなやつには見えなかったんだけれど。
「その時点でアウトだろうよ」
その言葉に冷たく返す。予想外すぎて本音が出た、って感じか。呆然としたその様子に、心底ざまぁないね、と思った。
けれど、少し、心がちくりと痛む。こんなことをしてまで、アタシを落としてみたかったんだろうか。なんて。アタシはアンタの玩具なんかじゃない。だから、アンタの思うようにはならない。
「落として遊びたいんなら、他のやつを狙いな。アタシは、アンタのこと好きにはならないから」
そう答えて、天澄から顔を逸らした。ここまで言えば、さすがに諦めてくれるだろうと思っていたけれど。なぜか嫌な予感がした。更に面倒なことになりそうな、そんな予感が。
告白してきたのをフったから、この生活も終わるかな。
……と、考えていた時期もあった。入学式の時はあっさりと手を引いてたし。別に、寂しいとか思ってなんかない。目立たなくなるから清々した。
でも、結果は
「ねぇ、まき。一緒に帰ろっか」
「おはよう。キミに一番に会えて嬉しいよ」
と、今まで以上に、しつこく、言い寄ってくるようになったのだった。今までは態度だけだったのに、「好きだ」とか、「可愛いね」とか、色々言うようになった。『進化した』というよりは、『悪化した』。そんな状態だ。
なぜだ。
なんだか変なものに火を点けてしまったらしい。
そして、そのまま今に至る。
二回もフったのに更にアプローチしてくるこの男のメンタルの強度がヤバい。殺しても執念で生き返ってきそうな気がする。
……とにかく、これが、天澄がアタシに毎日のように告白してくるきっかけというか、原因みたいな、そんな感じ。
そういう日々が続いて、珍しいことに自分から彼女に告白した。「やっぱり、キミのことが好きみたいだ」って。この日に出かける約束を取り付けて、イルミネーションが綺麗な所やプレゼントのお店とか、色々な所を巡ってみた。
彼女はあまりこういうことと縁がなかったのか、かなり物珍しそうに周囲を見ていた。……彼女の初めてを貰えた、と考えると、なんとも言えない嬉しさが込み上げてくる。こういう時こそ、落ち着かなきゃ。衝動のままに手を出して、警察沙汰になるのはごめんだし。
また、「キョーミない」ってフラれちゃった。おまけに、言外に論外だって言われちゃった。『あまり喋んないやつ』とか、『身長が高すぎない方』が、好き、だって?振られた?このボクが?
「こんなにロマンチックにしたのに?」
思わず溢れた言葉に、
「その時点でアウトだろうよ」
そう、彼女が冷めた目で言葉を吐き捨てた。
衝撃過ぎて、しばらくの間痺れるような、ふわふわしたような感覚になる。まきのその冷たい、ボクをゴミみたいにしか思っていないような目線にゾクゾクする。だって、優しい彼女がボク以外にそんな表情なんて滅多にしないだろうし。ある意味、『ボクだけの特別』だ。キミの色んな表情を見てみたいな。
それから、もっと彼女に興味を持つようになった。




