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滅びゆく運命に抗う者よ

作者: セロリア
掲載日:2020/11/19

ボロアパート。


兄弟が居た。


中学生の兄。


小学生低学年の弟。


兄は、全てを弟に捧げた。


恋愛も、物欲も、全て。


そうして、弟が成人したと同時に、就職も決まり、弟には、結婚する前に子供が出来た。


弟は相手の家族の反対を押しきり、結婚した。


今では夫婦幸せそうだ。


ふと気づいた。








俺は?









俺の幸せはどこだ?








弟の幸せが俺の幸せ・・。


嘘だ。


じゃあ、この沸き上がる感情は何だ!?


誰が!


誰のお蔭で!


ちくしょう!


ちくしょう!


ちくしょう!


ちくしょう!


ちくしょう!


ちくしょう!


ちくしょう!


ちくしょうおおお・・・・ちく・・しょ。


もう弟が居ない部屋で、泣いた。








中卒では、安いアルバイトがオチ。


アルバイトをかけもち、何とか暮らす毎日。


弟が一緒に暮らそうと言って来た。


笑って。


笑って。


こまかした。


何の拷問かと、怒鳴りたかった。


笑って、誤魔化した。


捧げた。


全て善意に。


こうあるべきという善意に。


全てを。


人の一生とは。


こんなに早いモノかと。


夜電車に揺られながら思う毎日。


心が荒れると、部屋が荒れるという題名の本を読んだ事が図書館であったっけ。


まさにその通り。


ゴミ部屋だ。


気づいたら、ゴミ部屋になっていた。


あー。


駄目だ。


負けそうになる。


何かが、俺に応援している声が聞こえる。


負けるな。


負けるなと。


それは外から聞こえる。


負けるな。


負けるなと。


内側から聞こえる。


もう楽になりたいと。


死なせてくれと。


内側と、外側で、葛藤が始まる。


シャワー浴びないと、明日電車に乗れない。


もう良いだろ。


臭いって、降ろされる。


だから、もう良いだろ、今は寝ようぜ。


明日の昼飯、早く作らないと。


もう寝ようぜ、明日死のうぜ。


う・・・・うう・・。


そら、寝ちまえ、楽になろうぜ。


ま、け、る、か、あ!


ガクガクの腕で体を押し上げる。


負けるな。


おう。


負けるな。


おう。


負けるな!


おう!


たまに。


数ヶ月に一回のペースで、必ず死にたいという波が来る。


俺は、負けそうになる。


いつも、毎回そうだ。


負けそうになる。


でも、何かが、俺に言う。


負けるな。


負けるな。


負けるなと。


その声に、何度救われた事か。










41年後。


73歳。


今年は2032年。


日本はロシアと中国から占領された。


北はロシア。


南は中国。


右に出来始めた新しい島々はアメリカ。


中国、ロシアのミサイル50000発が日本を焦土と化した。


俺は避難民として、岡山県の後楽園地下施設に避難出来た。


沢山の人の熱で、真夏より暑い。


弟は死んだ。


今までの苦労を返せと泣き叫ぶ俺が居た。


神様にだ。


何故俺何だと。


生きるなら、ひ孫が産まれたばかりのあいつだろと。


何故俺が。


何故俺が生きて、あの家族が全員死ぬんだと。


神様を叫んだ。


絶叫した。


それでも。


負けるな。


負けるな。


負けるなと。


声が聞こえる。


訳が分からない状況に、気が触れそうになる。


負けるなという声が、その度に理性を押し戻す。


ロシアと中国軍が、富士山麓に出来たトヨタニューシティを占拠した後、友好の証として、中国、ロシア軍共同富士登山が開始されたとラジオで流れる。


ラジオは日本語が上手い中国人だ。


15時間後。


富士山踏破というラジオ。


ラジオ〈日本は、我々に完全敗北しました、今、入りました、登頂に、中国、ロシアの国旗が掲げられました、日本人の心が今、膝を着いた瞬間です〉


地下に居る日本人男性達の膝が折れていく。


どんどん泣いていく。


正に。


絶望。


神は。


日本人を見捨てた。


誰もがそう暗に思ったと、思った。


誰しもが、今、日本人全員が、絶望したと。


思っただろうと。


思った、瞬間。


《ビビビビビビビビ》


地響きが鳴り始め、次。


《ーーーパパパパパパパパアアア!!ビシシ!ギャゴオオオオオオオ!!!!》


ガラスが大量に割れた音、空振、続いて大音響が響いた。


地下であるここまで響いたのだ。


上は、とてつもない事態になっただろう。


一体何が!?


皆ラジオに聞き耳を立てる。


ラジオ〈ザアアアアアア〉


一向に回復しないラジオ。


核が落ちたのかも。


誰かが呟く。


今日本に核を落とす馬鹿な国は居ないと誰かが反論する。


段々騒ぎ出す皆。


ラジオ〈たった今!富士山が噴火!富士山が富士山が!富士山が噴火あ!噴火しましたあ!糸魚川中央から日本は割れる模様!繰り返す!糸魚川から日本は割れる模様!日本は沈む!繰り返す!日本は沈む!脱出せよ!繰り返す!祖国へ脱出せよ!これは命令である!繰り返すそれぞれ祖国に逃げ延びよ!〉


日本が沈む?


誰かが呟く。


そんな事あるもんかと誰かが反論する。


男性1「日月神事だよ」


誰かが呟く。


日月神事?何だ?それ?


皆が、聞き耳を立てる。


男性1「日本の予言書だよ、こうなるって書いてあった」


罵倒が始まった。


喧嘩だ。


10分後。


喧嘩も疲れ、収まった。


男性5「じゃ、これからどうなんだよ?言ってみろや!?」


男性1「火の雨が降る」


火の雨?


男性5「何の雨だ?鉄か?ミサイルか?」


男性1「そしたら筒が降るって言うだろ?だから、噴石か、もしくは・・」


男性5「何だよ?」


男性1「こっちが多分本命で、隕石だと言われてる、巨大なやつも多分ある、洗濯って掛かれてるから、津波も発生するし、地面がひっくり返るって書いてあるから、地面にも落ちる」


男性5「んなもんどうだって良いんだよ!どうやって助かんだよ!?それ教えろや!?ああ!?」


皆聞き耳を立てる。


男性1「助かる者は、何処に居ようが助かるって書いてある、死ぬ者は、何処に居ようとも死ぬって」


男性5「ち!やっぱりガセかよ?聞いて損したぜ」


ガセ?


そうなのか?


そうなのか?そうなんだろうか。


本当に?


では、この男性1は、何も根拠無しにその予言書を話したのだろうか?


いや、確かにこの男性は言った。


今までの出来事は、全て日月神事に書かれていた、と。


ならば、本当に。


本当に、これから、火の雨が降り、地面がひっくり返るのか?


そうなれば、本当に戦争処じゃない、人類そのものが、絶滅する可能性がある。


あの。


男性1「ん?どうしました?」


人類は、その、滅亡するのですか?


男性1「・・」


すいません、それだけ、気になって。


男性1「滅亡っていうか・・その、強制進化するらしいです、地球のなんか・・波?波動?みたいなモノが変わって、獣になるか、神人になるか、だそうです」


強制進化、ですか?


それは、痛いのですか?


男性1「知らないっすよ、んなの、神降ろしした、本人ですら、訳解らんって言ってるくらいなんすから」


は?そ、それは、何と言いますか。


男性1「でしょう?だから、解りません、でも、何となく、本当に何となくですけど、もう直ぐ解る気がしませんか?」


・・。


上は、どうなっているんだろう。


ラジオも、もう砂嵐、何も言わない。


地響きだけが、強弱をつき、響く、響く、響く。


子供らはとっくに暑さで死んだ。


死んだ子供をバラバラにして、焼いて泣きながら皆で食べた。


腐らせると病気が流行るからだ。


脳ミソ、内臓は、観葉植物、ペットコーナーにあげた。


生きる為に、皆、必死だった。


自分の尿を飲んだ。


性病の人は、自分の尿が飲めないと泣いていた。


性病の人は、死んだら食べられない。


バラバラにされ、一つ一つ、炭になるまで焼かれた。


ウイルス、細菌程、怖いと感じるモノはなかった。


そして、ラジオが途切れてから、6日後。


隕石、それも、特大のが落ちたと解る地震が来た。


柱に何本も亀裂が入っていく。


白い粉が天井から落ちて来る。


天板が外れまくる。


点かない照明管が次々破裂していく。







地震?が止んだ。


どうなったんだろう?


上が気になる。


しかし。


扉は変形し、開かない。


仕方なく、また戻る。


観葉植物の土から取れる野菜も、黄色だ。


土に栄養が無いのだ。


皆塩を欲し、互いの汗を舐めていた。


意識が朦朧とする。


だめだ。


もう、皆限界だ。


外に出なくては。


外へ。


這って行く。


扉の取っ手に手を掛けた。


鉄の重たい防火扉が、無理矢理変形しながら、開いた。


あれ?2日前はびくともしなかったのに?


不思議な事もあるもんだと、ふらふら戻り、皆に声を掛け回る。


開いたよ、外に行こう、海の塩水を飲もう、そして、川の水を飲もうと、声を掛けた。


皆とふらふらしながら、外に出た。


全てが、火星だった。


ビルは折れ、建物から、瓦礫の山に変わっていた。


空が、燃えている。


空気は、息苦くて、臭い。


オレンジ色。


全ての景色が、オレンジ色だ。


青い空も、緑の木々も。


何もかもー。





一目で。


ああ。


終わったんだと。


終わったんだと。


理解させられた。


文明は。


やり直しだと。


皆が、絶望に浸る中。


俺にはまだ、聞こえていた。


負けるな。


負けるな。


負けるな。


負けるな。


何度も。


何度も。


聞こえ続ける声に。


無意識に励まされていたのかも知れない。


俺は、皆の方を振り返り、口を滑らせたんだ。


皆さん、次の文明は、落第しないように頑張りましょう。


皆、少しだけ、笑ってくれた。







結論から言うと。


日本は、8つに割れた。


北海道は3つ。


東北は2つ。


富士山から2つ。


九州は殆ど沈んだ。


四国は西は沈んだ。


日本、太平洋側に2つ陸が出来ていた。


日本には、外人は居なかった。


皆祖国に帰宅したらしい。


避難のつもりだったんだろう。


だが。


違った。


火の雨は、世界規模、地球規模だったのだ。


日本だけ生き延びた、とは、言わないが、それでも、特大サイズが落ちたのは、中国、ロシアの二ヶ所だった。


壊滅という言葉がしっくり来る惨状らしい。


世界は。


ゆっくりと、だが、着実に、復興に向け動き出した。


ただ。


お金という概念は、もう不要だとし、撤廃された。


無償で働き、無料で食べる。


無償で助け、無料で助けられる。


それが、世界中で、当たり前とするように、日本が先導し、決めた。


その世界には、王の椅子だけが、日本の淡路島に大きな椅子の像が祭られているだけ。


椅子だけだ。


その椅子には、名前が掘られている。


ただ4文字、神の椅子と。


神人という、超能力に目覚めた人々により、治安は統治され、安定、安寧がもたらされ、畑、田んぼを、自然災害から容易く守れるようになった。


食べ物、飲み物、空気が無料な世界。


悪い人は、悪い事をする理由が無くなり、どれだけぐうたらしても、誰も悪く言わず、ただ、無料で与えてくれる。


最初は良かった。


楽しかった。


だが、6日もすれば、退屈だ。


何かする事はあるか?と自分から、動き出した。


皆が動き、皆が食べる。


正に楽園だった。


全ては神のモノであり、自分のモノは一切無いのだと言う教え。


欲張り、自分のだと声を荒げても、それは、結局土に帰り、自分の魂が下がっただけだ。


つまり、欲張りは、長い目で見たら損だという教え。


欲しいと思えばこそ、与えなさい。


ただし、人の意見は尊重し、聞きなさい。


両想いは、尊重しなさい。


その教えを説いて周り、権力者になろうと躍起になる地方を否めたのが、俺だ。


何故か73歳から老けない。


超能力も、掌から水が出てくるくらいの力しかない。


でもその水は、人に、植物に、活力を与える事が出来るらしい。


プラス思考に変える事が出来るらしい。


世界を周り、無償、無料の教えを広める事が、俺の使命なんだろう。


今も聞こえてる。


巡りを辞めようかと数ヶ月に一回は襲ってくる。


でもその度に、声に押し戻される。


負けるな。


負けるな。


負けるなと。


朝、昼、夜。


殺されかけた。


うざがられた。


嘘つき呼ばわりされた。


辞めようか。


何度も思った。







声が聞こえる。


負けるな。


・・おう。


負けるな。


おう。


負けるな!


おう!



《END》


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