第34話 運が良ければ仲間に恵まれる
俺が精霊であるリーリブと話していると、寝ていたはずのルリたちが俺の背後に立っていた。
ルリたちにはリーリブが見えていないので、俺が誰もいないのに一人で話していると思ったらしい。
「誤解だぞ。俺は変なことはしてない! ただ精霊と喋ってただけだ!」
「精霊と喋ることのどこが変なことじゃないのよ……」
「ついに頭がおかしくなったか? 精霊なんているわけないだろ?」
こいつら、人の言うことをまったく信じてないな。
まあ、これは別にたいしたことじゃない。
こいつらが俺をバカにするのはいつものことだからな。だが……、
「私、ヒカルさんがそんなことをする人だとは思っていませんでした……」
ルリにこんなことを言われたら、俺のメンタルが崩壊してもおかしくない。
「ル、ルリ!? だから誤解だって! 誤解!」
「その慌てっぷり。ますます怪しいわね」
「だな」
「そこ、誤解を招くようなことを言うんじゃない!」
ヤ、ヤバイぞ。俺に突き刺さるルリの視線が、俺の精神を蝕んでいく……。
でも、リーリブと話していたことは事実だし……。
ああああぁぁっっ! 一体どうすればいいんだよ!?
この時、ラオラルドに来てから最大のトラブルに見舞われた俺を救ったのは、これまた寝ていたはずのグレイルだった。
「おお、リーリブじゃないか。久しいな」
「グレイルさん!? 久しぶりですね!」
え? 知り合い?
と、俺も最初は思ったが、よくよく考えてみればリーリブは今までも勇者の素質がある人を探し、サポートをしていた(あくまでも、リーリブの言った内容からの推測だが)らしい。
そして、おそらく先代の勇者様を見出したのはリーリブだろう。
つまり、先代勇者と共闘していたグレイルのことを知っていていても、なんら不思議はないのだ。
「え? 本当に精霊がいるの?」
「そうみたいですね……」
ここで、ようやくルリたちも精霊がいるかもしれないと思い始めてくれたらしい。
グレイルにはマジで感謝だぜ。
「精霊さん? 聞こえます?」
やっと精霊がいると確信してくれたのか、ミナがリーリブに話しかける。
「どうだリーリブ、聞こえてるか?」
「ええ、聞こえてますよ。私の声は聞こえてないでしょうけど」
「聞こえてるらしいぞ。ミナ」
「了解。って言っても、これじゃあ会話にはならないわね。だからヒカル、今何を話していたのか説明して」
チラ。俺はリーリブの方を見た。
話していたことの内容が内容だ。許可なく話すのはためらわれる。
リーリブは全然大丈夫と言う風に頷いてくれたので、俺はルリたち+グレイルに話の内容を伝えた。
「ヒカルさんが、勇者……」
「なんとなく、そうなる気はしてたがな」
「頼り甲斐があるようなないような」
当然、みんな驚いてる。あらかじめ俺が勇者である可能性を考えていたとしても、改めて言われるとやっぱり驚くよな。
……いや、驚いてるのルリだけじゃないか、これ?
というか、俺が勇者である可能性があるって、ルリが考えたんじゃなかったっけ? まあ、ルリと同じ考えを持っていて、尚且つ当事者たる俺も、さっきかなり驚いたからお互い様か。
「で、ヒカルが勇者ってことは、私たちが魔王を倒さないといけないわけ?」
「だな。魔王は復活している、と考えるべきだろう。具体的なことは何一つわかっていないけれど」
「ヒ、ヒカルさん! 私は、ずっとヒカルさんについて行きますから!」
え、しかも、もう魔王倒すとこまで話進んでる?
ルリの言葉は、リンカとミナとは話の方向が全然違う気がするが……。
それにしてもこの人たち、随分と好戦的ですな。
普通、魔王討伐とか聞いたら、その場から逃げ出したくなるもんだろ……。
「あのな。もうちょい落ち着けよ。そもそも、魔王が復活したとは言い切れない……」
「魔王は復活しましたよ?」
「おいコラ、リーリブ。さっきは、復活したであろうって言ってただろうが!」
「え? そんなこと言いましたっけ?」
「この精霊野郎め……」
まあ、俺は魔王を倒さなければいけないって思ってたからな。
ルリたちが協力してくれるなら、俺に文句はない。
「良いのか、お前ら。魔王を倒すのは、これまでの戦いとは訳が違うぞ」
「今更だぞ、ヒカル。私がここで引くわけないだろう」
「同じく。私も一緒に戦うわよ。抜け駆けは許さないから」
「私も戦います! この世界を守るために!」
「先程から口を開いてはいないが、我も同意見だ。ヒカル、共に魔王を倒すぞ」
ハハハハハ。やっぱり、こいつらはおもしれぇな!
これなら、魔王でも何でも倒せる気がするぜ!
「ヒカルさんは良い仲間に恵まれましたね。これなら、安心して魔王討伐を任せられそうです」
「ああ、大船に乗った気分で待っとけよ、リーリブ。俺たちが、さっさと魔王を倒して帰ってくるからよ」
「そのためには、ヒカルが二刀流をマスターしないとな!」
「ミナ、お前、中々やなこと言うな……」
「大船は沈んだな、こりゃ」
リンカのツッコミに全員が大声で笑う。
いたって普通の生活(宝くじで毎回億が当たる等ような生活を普通と言うのならだが)をしていた俺。
そんな俺が、今は世界を救う勇者になった。
俺は、このことを幸運だと思った。
なぜなら、こんなに素晴らしい仲間たちに出会えたのだから。
俺たち運魔弓槍の旅は、まだまだ始まったばかりだぜ!




