第28話 運が良ければ神殿はかんたんに見つかる
「えっと……、この剣のことがわかるの?」
「貴様、我を馬鹿にしているのか? このグレイル様が、ハヤテの剣のことを覚えていないわけないだろう」
いや、馬鹿にはしてないぞ。
それより、今このドラゴン、「ハヤテの剣」って言ったよな?
「ハヤテ様をご存知なので?」
「そろそろ我慢の限界だぞ。我は、勇者と共に魔王を倒したのだ。仲間だったハヤテのことは、知っていて当然だ」
「ええええぇぇぇぇっっ!!」
全員揃って叫び声をあげる。
う、嘘だろ!? 勇者様と一緒に、魔王を倒しただって!?
「と、ということは、あなたが伝説の聖龍、グレイル様なんですか!?」
「だから、何度もそう言っているだろう!」
「ほ、本物なのか!? 弓楓の森の者なら、誰もが憧れている聖龍様なのか!?」
「私も昔、大図書館の本で読んだことがあるわ! まさか、聖龍様に会えるなんて!」
「人界では、そんなに我の評価が高いのか?」
「もちろんよ!」
「そ、そうなのか。なんだか照れるな……」
ルリや、リンカ、ミナの美しさに骨抜きになっているドラゴンは放っておいて(実際どうだったのかは知らない)、どうやらこのドラゴンは聖龍様で間違いないらしい。
「ドラゴンって、長生きなんだな」
「当たり前だ。我は、聖龍だからな。それより……」
それより?
「なぜ貴様みたいなやつがハヤテの剣を持っているのだ! 答えろ!」
そういえば、この会話の始まりはそこだったな。
さて、何と説明しようか……。
「簡単に言うと、たまたま見つけた」
「殺すぞ、若いの。ハヤテたちの神器は、その全てが遺跡や神殿に保管されている。たまたま見つかるわけがないだろう」
「でも、俺既に四つ見つけてますけど……」
「四つ?」
「はい。おい、みんな」
俺の声に反応して、ルリたちが武器を見せる。
その瞬間、グレイルのキャラが崩壊した。
「はあぁぁ!? お、おかしいって。何で神器が四種類も揃っちゃってんの!? え? 何? 本当にたまたま見つけちゃった感じ? 嘘!? ありえないんですけど!」
「俺も未だにビックリしてますよ」
「で、でも、確か遺跡には封印があったはず……」
「あ、封印なら、全部破っちゃいました」
「は?」
そりゃそういう反応になるよな。
勇者様たちと冒険をしていたなら、尚更だ。
「えーっとですね……、尻尾を枕にしてしまったことはお詫びします。ですけど、俺たち別に怪しい者じゃないんで。そこんとこ、よろしくお願いします」
「尻尾の件は許す。ただし、一つ条件があるぞ」
嫌な予感しかしないな。
でも、その条件をのまないと、尻尾のこと許してもらえないし。仕方ないか……。
「わかりました。それでお願いします」
「交渉成立。それじゃあ、伝説の神器を手に入れた経緯を詳しく教えてもらおうか」
やっぱり来たよ、面倒くさいやつ。
質問に答える決心をしつつ、隙あらば、さっきの口調について聞こうと心に決めた俺だった。
◇
俺がグレイルに諸々の説明をすること一時間。
ようやく納得したのか、やっと俺とグレイルの会話は終了した。
「運が良いだけで四つも神器を手に入れられるとは、まだ信じられんぞ」
「奇遇ですね。俺もです」
休憩してたはずなのに、余計に疲れた気がする。
まあ、この疲労を味わわないと、俺は灰になっていたわけだけども。
「で、ヒカルは、なぜか使えた勇者の剣技の真相を知るために、ここへ来たというわけだな」
「その通りです。最初は手がかりが得られるか不安でしたけど、あなたに会えたので、これで何とかなります」
「何とかなる、だと?」
「グレイルさんに聞けば、勇者様のことはわかるでしょうし」
「ヒカル、グレイル様に慣れるの早すぎだろ……」
「私たちは、まだ少し怖いんですよ……」
いやな、リンカやルリの気持ちもわかるんだ。
だけど、さっきのキャラ崩壊を見ると、なんか、その、うん、察してくれ。
「で、俺が今言った剣技に見覚えあります?」
「あるぞ。今ヒカルが言った剣技は、『煌神斬』だろう」
「煌神斬?」
「ああ。煌神斬は、光り輝く剣で相手を斬る技だ。この剣技を使うと、使用者の速さは格段に上がり、そこから繰り出される一撃は、どんな敵でも一刀で両断すると言われている」
ふむふむ。剣が光るんだな。
そして、使用者(今回の場合は俺)の動きが速くなり、どんなものでも斬れる、と。
それって……、
「ヒカル(さん)が使った剣技ですね/だな/ね」
三人の返事がピッタリ重なる。
だよな。俺も同じことを考えた。
つまり、俺が勇者様の剣技を使ったことに間違いない、ということか。
「それより、本当にヒカルは勇者の剣技を使ったのか? 信じられんぞ」
「俺が一番信じられないんですけどね」
「グレイル様、何か他に手がかりはないんですか?」
ルリの質問に、グレイルは少し考える素振りを見せた後、こう答えた。
「手がかりなら、なくはない。というより、この山にあるはずだ。具体的な場所はわからないがな」
「こ、この山に手がかりがあるのか!? い、一体どんな?」
「勇者の墓だ。勇者は、自分の寿命が短いと感じた時、この山に神殿と自分の墓をヒッソリと作ったらしい」
「そこまで知ってるなら、どこにあるかもわかるんじゃないのか?」
「それがわかっていたら、もう教えている」
ですよね〜。
何でか知らないけど、妙に俺たちのことを信じてくれているグレイルが嘘をついてるとも思えないし。
「あーあ、お手上げじゃねーか!」
俺は情けない声でそう叫ぶと、勢い良く寝転がった。
その状態で、思い切り地面に拳を叩きつける。
「手がかりカモーン!」
この時、俺は特に意味もなくこの言葉を発していた。
しかし、俺は忘れていたのだ。運の良い俺が、こんなことを言ったらどうなるのか。
答えは、数秒経った後、地面から現れた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………。
地面が真っ二つに割れていく。
危ない、落ちる!
反射的にそう判断し、後ろに跳ぶ。
俺は余裕を持って地割れを回避した。
俺より遠いところにいた、ルリたらは無事だ。
良かった、とりあえず一安心……、
「な、なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!?」
俺が、本日何度目がわからない叫び声をあげる。
俺が驚いた理由、それは、地割れした地面に、グレイルが言っていた神殿らしいものが見えたからだ。
も、もしかして、あれ、勇者様の神殿?
俺の運、やっぱりヤバイな。




