ギルドのバーにて。
モグ「なうおんせーるもぐ〜」※嘘です。
おいらの名はモグラのモグ。ハードボイルドでナイスガイな雄もぐ。
今日はギルドのバーでカクテル片手に感傷に浸っているところもぐ。
何故感傷に浸っているのかってもぐ? ふっもぐ。訊かない方が身の為だぜもぐ。
おいらのサイズは普通のモグラより大分大きいもぐ。猫ぐらいの大きさもぐ。丸椅子には足が短過ぎてぶらぶらするもぐ。
マスターがおいらの目を見ようとしないもぐ。ふっもぐ。強面に生まれてしまったが為の宿命もぐ。時折、女冒険者が目を潤ませて、「触っても良い?」と強請るものだから、「ふっもぐ。好きにするが良いもぐ」と身体に触れる事を許可したもぐ。この逞しい身体に触れたいとは当然の欲求もぐ。おいらは寛大な雄もぐ。興奮のあまりに間違えて「可愛い〜♡」と黄色い声をあげられても気にしないもぐ。モテる雄は大変なのだもぐ。
女冒険者の仲間と思われる男冒険者が表情を緩めておいらに触れようとしてきたもぐ。
「触れるなっもぐっ!」
おいらは知っているもぐ。男とは嫉妬深い生き物であるもぐ。自分の女に触れる雄が赦せる筈がないもぐ。おいらに危害を加える気だったのだろうが聡いおいらにはお見通しだもぐ。
おいらは、かつて「もぐら叩き〜」と言っておいらを排除しようとした人間から奪ったハンマーをアイテム欄から取り出したもぐ。因みに「もぐら叩き〜」と言ってた愚か者は返り討ちにしてやったもぐ。アイテム欄とは異次元の収納ボックスだもぐ。魔力を持つ者はこのアイテム欄を使えるもぐ。
自分よりもひとまわり以上大きなハンマーを両手に装備して、おいらは嫉妬深い男に振り落とすもぐ。
「もぐもぐハンマー!」
「ぐはっ!!?」
でかしたっもぐっ! クリーンヒットもぐ!
▼マックスにダメージを2000与え戦闘不能にしました。モグはEXPを2000獲得しました。
「ぐあっはっはっはっ〜。悪は滅びたなり」
どう見ても悪はこのもぐらである。女冒険者は男冒険者ことマックスに駆け寄った。
「きゃーマックスっ!? ひ、酷いわ! 顔はイマイチで力がある事だけが取り柄のうちのマックスをよくもっ!? もっもう、モグラなんてっ! モグラなんてぇええ! マックスよりも可愛くて力があって素敵ぃいいい!!」
モグは女冒険者に抱きしめられ頬擦りされた。
ふっもぐ。当然もぐ。女は種族関係なく強い男に惹かれるもぐ。悪く思うなよマックスもぐ。
完全なる被害者マックスは、惨劇を静かに見守っていたバーのマスターがポーションを飲まして回復した。彼は人が良かったので、モグに恨みは抱かなかった。「突然触ったから、驚いたのだろう」と本気で思い込んでいる。女冒険者とこれからも仲良く冒険を続けたそうだ。