第4話:喪主と言う名のヒロイン役
俺の遺体が実家に着いて
布団の上に置かれた途端
嫁の茶番劇が始まった
喪主と言う名のヒロイン役をゲットした嫁は
ここぞとばかりに
泣いている
「朝起きたら死んでいた」と恥ずかし気もなく
同じセリフを
何度も何度も言っていた
開いた口が塞がらない
嫁は俺に何してくれた?
嫁が俺に求めていたのは
俺が稼いだ金だけだろ
嫁の理想の生活は
楽して贅沢できる生活だろ
嫁は結果だけしか見ない奴
嫁は過程は見ない奴
人の心の痛みとか
人の心の苦しみとか
理解しようとしないから
友達みんな離れて行くんだ
俺の心身を蝕むんだ
その結果俺は心臓を壊し
こんな姿になったんだ
それにしても…
嫁は派手に泣いている
ヒロイン役を満喫してる
もしかして…
あの時離婚を拒否ったのは
今日のヒロイン役のため?
なるほどなあ
結果重視の嫁らしいわ
嫁らしい事何一つしてなくても
テキトーに泣いてりゃ
それでオッケー
みんなが嫁に同情するさ
俺…しくじったなあ
俺…ヘタこいたなあ
人生の最後に失敗したよ
人生最大の失敗したよ
取り返しのつかない大失敗
嫁に花を持たせてるのに
彼女を一人で泣かせたこと
あのとき離婚しとけばよかった
ガキの猿芝居に騙されて
離婚をためらったのが
悔やまれる
あのとき離婚していれば
彼女を泣かさずにすんだのに…
一人で泣かさずにすんだのに…
あのとき離婚していれば
嫁の出番はなかったんだ
一人で泣いてる彼女を思うと、嫁の泣き声が耳障りだ
悔やんでも悔やみきれないよ…
人生最大の失敗だ
遠く離れた東の町で
彼女を一人で泣かせたこと