第1話:俺の命が消えた瞬間
「紅葉でーと」の3日前の早朝に、突然悲劇が訪れた
胸が痛くて苦しくて
必死にもがいていたけれど
嫁もガキも気付かない
同じ家に住んでいるのに
奴らは全く気付かない
あっ そっかあ…
気付く訳ないかあ…
って言うよりも〜
気付く気サラサラないもんなあ
5ヶ月前…
俺の心臓は半分壊れ、幸い一命取り留めたけど、医師からは
「今度発作が起これば命の保証はない」って宣告されたんだ
退院指導のパンフレットでも、今後の生活の注意点として
「身体に負担をかけないこと」
「ストレスを溜めないこと」
って書いてあったし、嫁は看護師さんの説明聞いて頷いていた
それなのにさ…
嫁とガキは、酷暑の時期に退院直後の俺に
「旅行に連れて行け」とか
「犬が飼えるマンションに引越ししたい」とか無理難題要求するし、嫁はロクに家事もせず、ガキは学校サボりまくり、マトモな生活していない
それに加えて、いつ発作が起きるかわからない、次の発作で命を落とすかも知れない俺を、扉3枚隔てた部屋で一人で寝かせるんだもんなあ
気付く訳ないょなあ
そんな事を考えながら、俺は最後の力を振り絞り、ケータイを手に取った
その瞬間…
俺の全てが終わってしまった
ケータイを手にしたままで
その瞬間…
彼女もケータイを手にしてた
いつもは寝てる時間なのに
彼女もケータイを手にしてた