2日目 悪夢は蜜の味なんて思わない!
まさか、一日差で投稿できるとは思いませんでした。
では!
今日の足取りはとても軽い。
なんせ・・・・
「今日はあれが飲める!」
あのシュワシュワした夢で、あの子と会えるんだ!
またいっぱい遊んでやる!
勢いよくドアを開ける。
カランカラン!
空しいほど響き渡ってしまった鐘の音。
前の日よりも極端に人が少ない。
「・・・・」
寡黙なバーテンダーが私を見るが、目が合った瞬間に、目をそらされた。
「あの・・・・」
「今、朝日は今いない・・・・ 彼女の夢を飲みに来たのなら、今日は帰ったほうがいい・・・・」
寂しいとグラスを拭くバーテンダーの背中が語ったように感じた。
きっと、彼はこの話を何度も繰り返し、帰られたんだろう。 客に。
「・・・・ 私、貴方のも飲んでみたいんです」
キュッキュッ・・・・
「朝日さんから聞きましたよ とても仲のいい夫婦ですね! じゃぁ、貴方も意地悪な方ではないのでしょう! あと、どんなものなのか見たいのです」
拭いていたワイングラスをおもむろに置いた。
そして私に近寄って手を取り、ほほ笑んだ。
「それならば、話は別です。 どうぞ席へ」
ハイライトのない瞳が、柔らかに私を見つめる。
右眼の痛々しい刀の傷跡が髪の間から見えた。
「枕は持っているんですね では、ここでお待ちください」
見た目と違い、優しく導かれた席は、彼の真ん前のカウンター席。
「・・・・ ここは常連さんの席なのでは? 私なんかが・・・・」
「・・・・ ここは常連なんて言える人なんて居ないので 悪夢なんて好んで飲みに来た人は貴方だけです」
棚からボトルを取り出しながら言われた。
悪い人じゃないのに・・・・
「実際、貴方が私の接客した最初の客です 私の夢は、品の良くない客を追い出す様のものなので、接客用には合わないのです」
そういいながら取り出したボトルの中には、薄水色の液体が詰まっていて、底にある桔梗色の透明な石が瓶に当たるたび、カラカラと音を立てる。
拭かれたばかりのワイングラスの中に注がれると、石が鳥の子色に淡く光りだす。
「・・・・ 綺麗・・・・」
「そう言ってもらえると幸いです」
ワイングラスを受け取ろうとすると、バーテンダーは少し手を引いた。
「本当に、大丈夫ですか? 私ので」
彼は、再度確認した。
微かに液体に波紋が広がる。
私は彼の差し出しかけたグラスを、しっかり受け取った。
「えぇ あの会社に比べれば悪夢なんかましですよ」
そう言って彼が次の言葉を言い出す前にほんのり甘いそれをすべて飲み込んだ。
目を開けると、水の中。
見渡す限りの瑠璃色の水。
身動きが取れないが、不思議と息苦しくない。
そのまま、上を見ると、月白色の光が差し込んでいる。
突然海底から黒い手が私を絡めとり引きずり込もうとする。
息苦しくなってきた。
もがいて抜け出そうとするが、抜け出せず、光も届かないところまできた。
意識も朦朧としたとき、誰かのすすり泣きが聞こえた。
あれは・・・・
「私だ」
幼いわたしの後ろを追った。
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一気飲みしてしまった彼女を見て、慌てた。
あれは、あまり大量に摂取してはいけないものなのだ。
肩を揺さぶっても起きる様子はない。
我にできること・・・・
毛布を彼女にかぶせた。
彼女から喉笛が聞こえてきた。
苦しそうに枕を握りしめる彼女の背中を優しくさすった。
彼女は、言いようのないほど優しいのだろう。
我の夢を好んで飲むのはこの世に誰もいないと思っていた。
でも彼女は、それを自ら呷った。
「ありがとう・・・・」
耳元で囁いたが聞こえてなどいないだろう。
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私が起きた時には、毛布をかぶされていた。
あのバーテンダーは、相変わらずグラスを拭いている。
「あの・・・・」
バーテンダーが振り向いた。
ほほ笑みながら、
「起きましたか」
と言って、
「あれは、お酒に近いものです 一気飲みは厳禁ですよ」
と、怒られた。
「あの・・・・」
「なんですか?」
毛布を畳んでいるバーテンダーに
「お名前を聞いてなかったのですが・・・・」
と言うと、しばらくの沈黙の後、棚から何かを取り出し始めた。
聞いちゃいけなかったかな?
としょんぼりしていると、バーテンダーは私の首にうでを回した。
「えっ!?」
しばらくすると、
「我は影滝といいます まだ、この時代には慣れていませんがよろしくお願いします」
胸のあたりを探ると巾着型のお守りがフワッと爽やかな香りを返し来た。
「お題は結構です なんでか? それは、特別サービスですよ」
いたずら小僧の様な笑みを浮かべて影滝さんは、元の一に戻った。
雰囲気に耐えられず、私はそのまま一礼して、店を出てしまった。
ビックリした! ビックリした! でも・・・・
「あの、「ありがとう」は誰がいったんだろう?」
朝日「私、いなくなってた」
ごめん
朝日(´・ω・`)
だからごめんって