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第95話 何で朝から……


お待たせしました!

よろしくお願いします!(´ω`)



 


「お兄ちゃん、ここ分からないんだけど?」

「どれ……」

「青さん、早く写させてください?」

「変なこと言ってないで、さっさとやって碧の部屋に戻れな?」


 マノンに机を貸し、碧は俺のベッドの上で横になりながら宿題を進めていた。碧は特に、消しカスやお菓子の食べこぼしが無いか注意して見ていた。

 床に座ってベッドに背中を預けた状態で、碧から渡された分からないという問題を確認する。なるほど、碧も数学……じゃなくて、算数か。


「碧、文章問題とかお兄ちゃん嫌いだから無理だ」

「えぇ~、たかし君がどうなっても良いの? お兄ちゃんが解かなかったら、ずっと広い公園を歩きっぱなしなんだよ?」

「碧、お前の信じる……たかしを信じろ!」

「はっ……!! そうだよね! 碧は信じるよ!」


 そうだ。たかしは兄に追い付くまで歩く。それが例え、何時間かかろうとも……それが答えだ。


「この兄妹……碧ちゃん、変なこと言ってたら青さんになってしまいますよ? 私が見てあげます!」

「わーい! 助かる助かるぅ~」

「おい、マノン? 碧を甘やかして貰っては困るぞ?」

「そういう方針なら、仕方ないのでヒントだけにしておきますよー。どれどれ貸してみてくださいな……ふむふむ。なるほど~……へへっ、今の小学生ってパナいっすねぇ」


 やっぱりな。そうなるとは思った。

 別に難しい訳じゃないし、解こうと思えば力技で解けるのだがスマートじゃない。小学生の問題をスマートに解けないくらいなら、最初から解かない方がマシである。


「碧……自力で解かないと、俺達みたいになるぞ」

「いや、むしろ頑張らないといけないのはお兄ちゃん達じゃん……」


 可哀想な人を見る目を、兄とその友人に向ける妹がそこにはいた。

 俺も漫画を読むのを止めて勉強しますか……なんかヤバいし。テストも近いのにこの(てい)たらくは流石にヤバい。ヤバいとしか言えないのが、もうヤバい。


「マノンよりマシだけど、ちゃんと勉強するか……」

「青さんよりマシですけど、勉強しますかねぇ……」


「「はい?」」


 お互い顔を見つめる。

 ――コイツ、何言ってんだ? という顔で。

 心の中では同じように考えていたのだろうな、俺もマノンも。こいつよりは馬鹿じゃない! って。


 ……この後、めちゃくちゃ勉強をした。


 ◇◇◇



 ピピピ、ピピピ、ピピッ――。


 けたたましいアラーム音を止め、ゆっくりと体を起こす。

 五月三十日火曜日の朝七時二十分。昨夜、宿題を終わらせたマノンと碧を部屋から追い出し、日付が変わるまで勉強していた。その割にはスッキリと目覚められた様に思える。

 布団から出てそのまま、もう揃っているであろうリビングに俺も向かった。


「おはよー……って、席が埋まってると違和感があるな?」

「あっ、青さん! すいません……もう食べ終わるので」

「いや、先に顔洗って着替えてくるから大丈夫だ」

「ごめんねマノンちゃん、お兄ちゃんが普通に起きてくるとは……予想がハズレた!」


 まぁ、たしかに。普通なら後十分(じゅっぷん)は布団から出ないで、ゴロゴロとしている。

 だから普段なら、碧のその予想は正しかっただろう。妹の予想を越えてこその兄。

 碧が悪いんじゃない。ただ予想を越えてしまう兄が凄いのだ…………と考えた時点で、スッキリ目覚めたがまだ本調子では無いことを悟って顔を洗いに向かった。


 冷たい水でぼんやりとした思考までもをスッキリさせて、一度部屋に戻って制服に着替えた。そして、再度リビングに戻る頃にはマノンの座っていた席が空いていた。


「青、今日はマノンちゃんが朝食とか弁当とか作ってくれたのよ? 感謝しておきなさいね?」

「マジか、早起きだったろ?」

「まぁ……スマホのアラームで碧ちゃんも起こしてしまったのだけ、申し訳ないですけどね」

「そうか、まぁ……ありがとう。無理はするなよ?」

「はいっ! では、私は先に出るので準備して行きますね」

「碧も!」


 マノンと一緒に家を出るつもりなのか、碧も学校へ行く準備に向かった。

 お父さんもそろそろ仕事へ行くはず……で、いつもと変わらないはずなのに、俺だけ時間の感覚が遅く感じるのは何故だろうか? これが一人増えた弊害ってやつなのだろうか。ペースが乱されるな。


「……美味い」

「良かったわねぇ~、ふふふ」

「なにその怪しげな笑いは……」

「何かしらねぇ? 思春期の子供達を見ていると、つい笑っちゃうのよ。アナタも分かるでしょ?」

「たしかになぁ……俺達も年取ったって事だな。じゃあ、そろそろ行ってくる」


 お父さんが玄関へ向かうタイミングで、マノンと碧も準備を整えて戻って来た。


「じゃあ、青さん! 先に行ってますよ」

「学校じゃ、くれぐれも注意しろよ? ちょうど良い距離感で」

「私にお任せあれですよ!」

「あらあら、芸能人カップルみたいで大変ねぇ。はい、お弁当」

「あ、ありがとうございます」

「お母さん、行ってきまーすっ!」


 お母さんが三人にお弁当を渡して、それぞれの行く場所へと歩いて行った。駅までは同じだろうから、そこまでは皆で行くだろう。

 まだ一人で家でご飯を食べていると、皆に取り残された感が凄い。

 だがこれからは、朝は時間をズラして登校し、昼は一緒に食べない、帰りだって別ルートから帰らなければならないのだ。そこまで注意深い人は居ないと思うが、何気ない会話ひとつでバレてしまう事だってあるかもしれない。

 注意に注意、更に注意するくらいで良いはずだ。


「青も遅刻しない様には行きなさいね?」

「分かってる」

「それにしても……今度ののさんが来るとして、後何人の女の子が来てくれるのかしらね?」

「いや、知らないけど……碧が男の子連れて来るのが早いかもよ?」

「それはそれで良いのよ? 碧が選んだ子なら受け入れるもの」


 お母さんが受け入れても、俺とお父さんという壁が立ちはだかるだろう。碧をちゃんと大切にできるのか、しっかりと見極めさせてもらうつもりだ。……自分で言っといてアレだが、まだ先の話であって欲しいな。


「あんたもよ、青? 最後に誰を選んで連れて来るのかは分からないけどね」

「いや、俺に選ぶ権利なんて……」

「あんた、ほんっっとに女心というのが分かってないわね……。女子ってのは、数いる中で意中の相手に自分だけを選んで欲しいものなのよ」

「いや、それだと意中の相手からって話じゃん?」

「そうよ? だから女の子は頑張って、日頃からアピールしてるんでしょうよ。青もサインを見逃してると、チャンスを逃すわよ?」


 なぜ、母親が代弁している正確か分からない女子の気持ちを朝から聞かされているのかは、置いておこう。

 きっと、お母さんは連れて来た女の子と一緒に炊事や洗濯をしたいだけなのだろうから……でも一応、アドバイスは頭に入れておく。お母さんからのアドバイスで無駄だったことなんて、ほぼほぼ無いし。


「ほら、お母さんは知らないと思うけど、今の女子って巧妙だから。相手に『あれ? 俺のこと好きなんじゃね?』って思わせる技術がそうとう上手いから」

「それは……男側が悪いわね!」

「何でっ!? 見抜けないから!?」


 これから先も見抜ける自信は無い。どこでその力を身に付けるのかも分からないし、身に付いた頃にはそうとう騙された後の気もする。

 お母さんは少し間を空けて、教えてくれた。お母さんなりの答えを。


「好きな人がそもそも居ないか、心のどこかで諦めているからよ。自分の好きな人は、自分を好きにならないだろう……って。だから、心がフラついて騙されるの」

「……でも、両思いなんて難しいでしょ? 実際」

「そうね。だから、安易で簡単なアピールしてくる子に騙されがちなのよ。でも……知ってる? 心にたった一人を決めている男はフラつかないわよ?」

「まるでそんな男を知ってるみたいな……はっ!」

「あの人は私一途ですもの~」

「やられたっ!! なんで、朝から親のノロケ話を聞かされないといけないんだっつーの!」


 アドバイスに見せかけた、ただの自慢話だった。だが、実体験であるが故に、信憑性が高いのもまた事実だ。

 ちゃんとしたアドバイスを聞いたはずなのに、ノロケの印象が強くなり過ぎて頭に入ってこない。


「青、カッコつけない方が、カッコいいって話よ」

「男なら当たって砕けろって話ですね……」

「ううん。『思えば思わるる』って話。特に青は、女の子がチャンスをくれている内が華よ?」

「思えば……思わるる、か。結局は男がしっかりしろって話だよね?」


 その最後の言葉に返事は特に無く、お母さんはニコニコしながらキッチンに移動して皿洗いを始めた。

 ノロケられ、助言を与えられ、でもそれはただ息子や娘の恋人が来て欲しいという、ただそれだけの事という……うちのお母さんは、中々に自分の欲望に忠実だった。


 そうこうしている内に、ちょうど良い時間になっていた。俺も、先に家を出た三人と同じように弁当をお母さんから受け取ってから、学校に向かった。

 通学途中も、朝から聞かされた話を思い出して考えてしまっている。

 焚き付けられてる感も否めないが……心のフラつきを言われた時には少しドキッとした。責められてるとは違うけど、指摘された様なそんな感覚に陥った。


「フラついて……いるんだろうなぁ、今の俺は。心にたった一人、か」


 口に出してみても何かが変わる訳じゃないし、考えが纏まる訳でもない。それでも、自分の言葉として自分に言い聞かせておく必要があると思った。

 いつの間にか歩くペースが少しだけ速くなっていたらしく、思ったより早く学校に着いた。


 自分の心に蓋をするのは容易だが、その内を見るのにはちょっぴり勇気が必要なのだと、何となくそう思った。

 今日は誰かと話す時間でさえ、自分と向き合うことが多くなりそうな予感がする。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


1話目見直したら、最新話となんかいろいろ違い過ぎて……まぁ、きっと成長だろうと思うことにしておく(/。\)





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